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青年期 275
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…昼食が終わるとまた三人で魔法協会の支部へと移動するので俺は夕飯のデザートを考えながら部屋の中で腕立てとかの筋トレを始める。
ーーーーー
「…あー、お腹空きましたー」
「夕飯は何だろうね?」
「お。おかえり、夕飯の時は時間ぴったしぐらいなんだ」
「昼前に早く切り上げ過ぎてしまったので…少々忙しくなりまして」
辺りが暗くなって来た夕飯時にお姉さんと女性が少女を連れて戻ってくるので、俺が時計を見て意外に思いながら聞くとお姉さんは若干恥ずかしそうに理由を話した。
「へー、大変だったね。はい」
「わ!ビーフシチュー!」
「というよりブラックシチューかな?魔物の肉をバイソンのやつ以外も入れてるし」
俺が適当に労いの言葉をかけてビーフシチューを出すとお姉さんが喜びながら料理名を言い、俺は闇鍋の意味も込めて若干訂正する。
「へー、じゃあ普通のミートシチューみたいなものですね」
「…まあそんな感じ」
俺は『ブラックシチュー』って言ったはずなのにお姉さんは世間一般に広がる料理名と同じだと解釈するように返し、二度の訂正も面倒なのでそのまま流した。
「…!美味しい…!濃厚なシチューの味に肉は噛むまでも無くトロけるような物から、ホロホロと崩れる物、柔らかいながらもしっかりと噛めて歯ごたえを感じる物など肉質の異なる物を使う事で味だけではなく食感の方も素晴らしく、正に『極上の逸品』と呼ぶに相応しいシチューです!」
「…あ、そう…そりゃ良かった。はい、コレは付け合わせとしてのパン」
少女は料理を食べた後にめちゃくちゃ熱の入った食レポ的感想を言ってくるので、俺は適当に流すように返してマヨネーズやニンニクで少し味付けをしたガーリックトーストの乗った皿を置く。
「美味しい!」
「コレは…ガーリックを使ってるのかい?」
お姉さんがパンをシチューに付けて食べると喜ぶと女性は一口食べた後に確かめるように尋ねてくる。
「ん。一応付け合わせ用に焼いたトーストだからね」
「へぇ…確かにただ焼くだけよりも格段に美味しくなってる…」
「…では私も…」
俺の肯定に女性は意外そうに呟いて味わうように食べ、少女もトーストを指で摘んでシチューに付けて食べようとした。
「っ…!美味しい!!パンに付ける事によってより一層シチューの美味しさが増しました!」
「やっぱりビーフシチューにはパンだよなぁ…美味い美味い」
喜びながら食べ進める少女の感想に賛同するように返して俺もパンにシチューを付けて食べる。
「シチューだけでも極上の味なのに更にそのままでも美味しく食べられるパンを加えたらそりゃより美味しくなりますよ」
「全くだ。このトーストは味変でそのまま食べても美味いからね」
お姉さんが味の足し算みたいな事を言い出すと女性はパンをそのまま食べながら同意した。
「…さて、デザートにしようか」
「…コレは…?」
少女の皿が空になったのを確認し、俺がババロアの入った小皿を出すと少女は不思議そうに尋ねる。
「『ババロア』っていうプリン…というよりゼリーに近いデザート」
「坊ちゃんの作るバヴァロワって美味しいんですよね~。店で食べるよりも柔らかくてふわふわしてて口の中で直ぐに溶けますし」
「そりゃそこらの飲食店ならそこまで手間がかけられないんだから仕方ない。俺のと比べるなら一流のパティシ…料理人が作るものと比べないと」
俺の説明にお姉さんが嬉しそうに言いながらスプーンでババロアを食べ始め、俺はツッコミを入れるように比較対象が違う事を指摘した。
「…美味しい!まるでムースのような食感…!」
「柑橘のサッパリした感じも良いね」
「ビーフシチューみたいな重い料理の後はサッパリした味の方が普通に食べるよりも美味しく感じるからね」
少女が驚きながら例えを挙げると女性は嬉しそうに味について感想を告げ、俺はソレを狙って提供した事を教える。
「…んじゃ、最後はコレ」
「…ゼリー、ですか?」
「そうそう。何の変哲も無いただのゼリーだよ」
俺は最後のデザートを出した後に不思議そうに確認してきた少女の問いに肯定して返す。
「でもお店のよりも美味しいですよ。坊ちゃんが作ってるんですから」
「なるほど。…確かに美味しいですね」
お姉さんが何故かドヤ顔で自慢するように言うと少女はゼリーを一口食べた後に納得した。
「…ふー、ご馳走様。美味しかったよ」
「ご馳走様です。いつもの通り美味しかったです」
「…ゼルハイト様、このようなご馳走を振る舞っていただき心より感謝申し上げます」
「まあ食いに来いって言ったのは俺だからね、ちゃんとそれなりのモノを用意しとかないと」
女性はゼリーを食べ終わると合掌するように手を合わせて食後の挨拶を言い、お姉さんも同じ事をすると…
少女がゼリーを食べ終えた後に口元を拭いて頭を軽く下げてお礼を言うので俺は適当な感じで返す。
「…あの料理で『それなり』…」
「まあ坊ちゃんからしたらデザート以外はそこまで手の込んでない料理ばかりでしたし」
少女の微妙そうな顔での呟きにお姉さんは若干困ったように笑ってフォローするような事を言う。
「まあとりあえず夕飯は終わったしそろそろ帰る時間じゃない?」
「あ…すみません、あと二時間ほど時間をいただけないでしょうか?」
俺がそう確認すると少女は支部で何かやり残した事があるのか、謝って時間を伸ばすような提案をしてくる。
「オッケー。じゃあ帰る時になったら呼びに来て」
「分かりました。ありがとうございます」
俺の了承しての返事に少女はお礼を言って直ぐに立ち上がって部屋から出て行った。
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「…あー、お腹空きましたー」
「夕飯は何だろうね?」
「お。おかえり、夕飯の時は時間ぴったしぐらいなんだ」
「昼前に早く切り上げ過ぎてしまったので…少々忙しくなりまして」
辺りが暗くなって来た夕飯時にお姉さんと女性が少女を連れて戻ってくるので、俺が時計を見て意外に思いながら聞くとお姉さんは若干恥ずかしそうに理由を話した。
「へー、大変だったね。はい」
「わ!ビーフシチュー!」
「というよりブラックシチューかな?魔物の肉をバイソンのやつ以外も入れてるし」
俺が適当に労いの言葉をかけてビーフシチューを出すとお姉さんが喜びながら料理名を言い、俺は闇鍋の意味も込めて若干訂正する。
「へー、じゃあ普通のミートシチューみたいなものですね」
「…まあそんな感じ」
俺は『ブラックシチュー』って言ったはずなのにお姉さんは世間一般に広がる料理名と同じだと解釈するように返し、二度の訂正も面倒なのでそのまま流した。
「…!美味しい…!濃厚なシチューの味に肉は噛むまでも無くトロけるような物から、ホロホロと崩れる物、柔らかいながらもしっかりと噛めて歯ごたえを感じる物など肉質の異なる物を使う事で味だけではなく食感の方も素晴らしく、正に『極上の逸品』と呼ぶに相応しいシチューです!」
「…あ、そう…そりゃ良かった。はい、コレは付け合わせとしてのパン」
少女は料理を食べた後にめちゃくちゃ熱の入った食レポ的感想を言ってくるので、俺は適当に流すように返してマヨネーズやニンニクで少し味付けをしたガーリックトーストの乗った皿を置く。
「美味しい!」
「コレは…ガーリックを使ってるのかい?」
お姉さんがパンをシチューに付けて食べると喜ぶと女性は一口食べた後に確かめるように尋ねてくる。
「ん。一応付け合わせ用に焼いたトーストだからね」
「へぇ…確かにただ焼くだけよりも格段に美味しくなってる…」
「…では私も…」
俺の肯定に女性は意外そうに呟いて味わうように食べ、少女もトーストを指で摘んでシチューに付けて食べようとした。
「っ…!美味しい!!パンに付ける事によってより一層シチューの美味しさが増しました!」
「やっぱりビーフシチューにはパンだよなぁ…美味い美味い」
喜びながら食べ進める少女の感想に賛同するように返して俺もパンにシチューを付けて食べる。
「シチューだけでも極上の味なのに更にそのままでも美味しく食べられるパンを加えたらそりゃより美味しくなりますよ」
「全くだ。このトーストは味変でそのまま食べても美味いからね」
お姉さんが味の足し算みたいな事を言い出すと女性はパンをそのまま食べながら同意した。
「…さて、デザートにしようか」
「…コレは…?」
少女の皿が空になったのを確認し、俺がババロアの入った小皿を出すと少女は不思議そうに尋ねる。
「『ババロア』っていうプリン…というよりゼリーに近いデザート」
「坊ちゃんの作るバヴァロワって美味しいんですよね~。店で食べるよりも柔らかくてふわふわしてて口の中で直ぐに溶けますし」
「そりゃそこらの飲食店ならそこまで手間がかけられないんだから仕方ない。俺のと比べるなら一流のパティシ…料理人が作るものと比べないと」
俺の説明にお姉さんが嬉しそうに言いながらスプーンでババロアを食べ始め、俺はツッコミを入れるように比較対象が違う事を指摘した。
「…美味しい!まるでムースのような食感…!」
「柑橘のサッパリした感じも良いね」
「ビーフシチューみたいな重い料理の後はサッパリした味の方が普通に食べるよりも美味しく感じるからね」
少女が驚きながら例えを挙げると女性は嬉しそうに味について感想を告げ、俺はソレを狙って提供した事を教える。
「…んじゃ、最後はコレ」
「…ゼリー、ですか?」
「そうそう。何の変哲も無いただのゼリーだよ」
俺は最後のデザートを出した後に不思議そうに確認してきた少女の問いに肯定して返す。
「でもお店のよりも美味しいですよ。坊ちゃんが作ってるんですから」
「なるほど。…確かに美味しいですね」
お姉さんが何故かドヤ顔で自慢するように言うと少女はゼリーを一口食べた後に納得した。
「…ふー、ご馳走様。美味しかったよ」
「ご馳走様です。いつもの通り美味しかったです」
「…ゼルハイト様、このようなご馳走を振る舞っていただき心より感謝申し上げます」
「まあ食いに来いって言ったのは俺だからね、ちゃんとそれなりのモノを用意しとかないと」
女性はゼリーを食べ終わると合掌するように手を合わせて食後の挨拶を言い、お姉さんも同じ事をすると…
少女がゼリーを食べ終えた後に口元を拭いて頭を軽く下げてお礼を言うので俺は適当な感じで返す。
「…あの料理で『それなり』…」
「まあ坊ちゃんからしたらデザート以外はそこまで手の込んでない料理ばかりでしたし」
少女の微妙そうな顔での呟きにお姉さんは若干困ったように笑ってフォローするような事を言う。
「まあとりあえず夕飯は終わったしそろそろ帰る時間じゃない?」
「あ…すみません、あと二時間ほど時間をいただけないでしょうか?」
俺がそう確認すると少女は支部で何かやり残した事があるのか、謝って時間を伸ばすような提案をしてくる。
「オッケー。じゃあ帰る時になったら呼びに来て」
「分かりました。ありがとうございます」
俺の了承しての返事に少女はお礼を言って直ぐに立ち上がって部屋から出て行った。
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