子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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青年期 268

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「…紅茶です」


俺がカップを用意して空間魔法の施されたポーチから飲み物の入った容器を取り出して三人分用意すると…


「…ふう…アンドリュー、ラーナ。今聞いた事は絶対に他言するで無いぞ。もし漏れてしまえば国が危機に晒される可能性の高い最重要秘匿案件だ」


おっさんは飲み物を一口飲んだ後に青年と女の子を見て強い口調で口止めを図る。


「分かりました」

「…と言う事は…本当に居るのか!?ライツの王族が、この国に!」

「…何を聞いていた?表向きはまだこの国で確認されていない事になっておる」


女の子が直ぐに真剣な顔で了承するも青年は確認するように聞き、おっさんが呆れたようにため息を吐いて否定した。


「…そういう事か。分かった、下手に混乱を招くと俺達騎士団も忙しくなりそうで、それは困る」

「まあ、バレた所で本人達が本名さえ名乗っていなければいくらでもシラを切り通せますし…俺が認めなければ居ないも同然ですから」

「…不正を堂々と…俺達を巻き込むんじゃない」


ようやく理解したような青年に俺がもしもの時の対策を話すと嫌そうな顔で呟き、我が身可愛さの発言をする。


「ははは。…そんな事よりもそろそろ昼食の時間ですね。今回はパンにしようかと思いますが…」

「ほう、パン。市販の物とどのような差があるのか興味が湧く」


俺が笑って話を変えて食材について確認を取るように言うとおっさんは意外そうな顔で返す。


「実はそのパンはまだ自分の弟と妹しか扱った事が無く、店にもこれから出すかもしれない…いわば秘密の品となっております」

「秘密の品…」

「秘密の品…?」


俺のもったいつけるようなレアリティや付加価値を上げる感じでの説明に女の子が興味を持ったように呟き、青年は胡散臭そうに呟く。 


「ほう、それは楽しみだ。いずれ店に出る可能性もあるのか?」

「ヴェリュー領の支店に妹が入っている時であれば提供出来ると思いますが…メニューとして載せているかどうかは不明なので、おそらく一番最初に注文しないと時間的に厳しいかもしれません」

「なるほど。結局はいつもと同じく運次第という事か」

「残念ながらそうなります」


おっさんが確認するように疑問を尋ね、俺が予想を話すと納得しながらも若干落胆したように言うので俺は肯定する。


「…リーゼちゃんやエーデルさんが店に居るのは奇跡のような体験だと良くお聞きしますが…学内では『料理をしている』などというのは一切、噂でさえも聞いた事がありません。本当にお料理が出来るのですか?」

「自分からは『出来る』としか言えないですね。まあいずれ体験出来る日が来ればはっきりすると思いますよ」


女の子の微妙な顔をしながらの確認に俺は肯定しながらも適当な感じで楽観的に返す。


「ふっ…それもそうだな。ラーナ、その時を楽しみに待て」

「はい、お父様。楽しみがまた一つ増えました」

「…とりあえず、試食として…コレがそのパンです」


おっさんが笑って話を終わらせるように言うと女の子は大人しく言う事を聞くように返し…


俺は味見として魔物素材の小麦で作った食パンを切ったやつを一枚ずつ渡した。


「…美味い!コレはパンなのか!?いや、味は確かにパンだと言えるが…!」

「このような柔らかい食感のパンは初めて食べました…!『パン』というよりも『フラン』に近い味わい…」


おっさんが一口食べて驚きながら感想を言うと女の子も驚いたようにお菓子に例えた感想を言う。


「…!?…こんな物、どこで手に入れた?」

「自家製です」

「「自家製!?」」


青年は疑う様子で一口食べた後に仕入れ先を尋ね、俺の答えを聞いて女の子共々驚愕する。


「…コレはやはりアレか?魔物素材だな?通常の小麦では考えられん」

「流石ですね。この前ニャルガッズに行った時に発見しました」

「…ニャルガッズ…魔物素材ならば販売している奴はいたのか?」

「いえ。あと別の国かもしれませんが…同じ魔物素材を使ったパンを食べた事があるハンターの話では、その国でも『数年に一度の幻のパン』と呼ばれていたらしいです」


おっさんの確認するような問いに俺が褒めながら肯定すると疑問を聞いてくるので、俺は否定しながらマスタークラスの男から聞いた体験談を教えた。


「…数年に一度か…」

「結構珍しい魔物みたいですからねぇ…俺でも初めて見るぐらいでしたし」

「それほど希少な素材であるのであれば店にも出せないのでは?」

「一応その時に結構な量集めてあるので大丈夫だと思います」


おっさんが考えるように呟くので魔物の希少性を告げると女の子が疑問を聞き、俺は嘘を吐いて誤魔化すように答える。


「そんなものを今回俺達に振る舞うのか?」

「まあ。あくまで食材なんで大事に持っていてもいずれ腐るだけですし」


青年の確認に俺は変化魔法で変身すればいくらでも増やせるしなぁ…と思いながら適当な感じで理由を話した。


「ははは!これが辺境伯たるゼルハイト卿の器の大きさと懐の広さだ。お前も見習って存分に勉強させてもらうが良い」


するとおっさんは急に声を上げて笑うと青年に後継者としての教育をするかのような事を言い出す。
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