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青年期 267

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 ありえないほどの偶然が重なることがある。
 その確率は計算上ではおよそ30兆分の1以下とされ、隕石が地球に落下して人類が滅亡するよりも低い確率とされているのである。
 そんな不思議な偶然の一致を二つほど紹介しよう。
 バミューダのある路上で、ある日バイクとタクシーが衝突事故を起こした。
 バイクの方は兄弟で2人乗りをしており、タクシーにはお客が1人乗っていたので、この事故に巻きこまれた者は合計で4人。しかし幸いなことに4人は怪我こそすれ、死者は出ずに済んだ。

 そしてその事故から1年の月日が経過した。
 それぞれ傷も癒(い)え、別々の日々を送っていた。あの時のバイクの兄弟はまた同じように2人乗りで走りを楽しんでいた。タクシーの運転手ももちろん相変わらず仕事を続けていた。

 ある日、その運転手がタクシーを走らせていると、道の先の方で手が挙がった。
 タクシーに乗ろうとしているお客である。すぐに車を寄せてお客を拾おうとしたが、運の悪いことに、自分より先にもう一台タクシーが走っており、そっちの方がお客を乗せて走り去ってしまった。

 「ちっ」と舌打ちして、再び車を走らせる。しばらく走っていると、また路上で手が挙がった。今度は自分の前にタクシーはいない。路肩に車を寄せると、今度こそお客が乗ってきた。

 「どちらまで行きましょうか?」と聞いたが返事がない。
 不審に思った運転手は「あのー、どちらまででしょうか?」と、今度は振り向いて聞いてみた。
 後ろの座席には驚いたような顔をした1人の男が座っていた。

 「あっ!お客さんは・・!」
 1年前の事故の時のお客だった。全く偶然にもあの時のお客を拾ってしまったのだ。

 双方ににがい思い出がよぎる。なんとなく嫌な感じがしながらも、ようやく行き先を告げられてタクシーは発進した。業務的な会話を一言二言したが、後は沈黙になってしまった。

 「あの場所に行くとなると、どうしてもあの道を通っていくことになるな・・。」
 運転手も心の中で厭だなと思ったが、あえて言葉には出さなかった。喜ばしくない再会をして、嫌な思い出のある道を再び通らなければならない。

 あの日あの時と同じ風景が車の外を流れていく。まもなく事故現場にさしかかった。と、その途端、後ろのお客が「あっ!」と声をあげた。

 向こうの方から、あの時のバイクにあの時の兄弟が乗って、まっすぐこっちへ突っ込んでくるのだ。

 「そんなバカな!」
 4人が4人ともそう思ったかも知れない。だがあっと思う間もなく、バイクとタクシーは再び衝突してしまった。まるで吸いよせられるかのように。

 そして同じ状況、同じ人間による全く同じ事故が再び起こってしまった。ただ一つ違ったことは、今回の事故でバイクの兄弟の方は不幸にも死亡してしまったことであった。



 A君が小5のとき、通学路の交差点を渡っていたとき、右折車が横断中のA君めがけて突っ込んできた。 

 まるで催眠術にかかったように体が動かず、突っ込んでくる車を呆然と見ていたら、(あらぬ方向を見ているドライバーの顔まではっきり見えた) 後ろから突き飛ばされ、危機一髪A君は難を逃れた。 

 が、A君を突き飛ばしてくれた大学生は、車に跳ね飛ばされたらしい。 

 泣きながらA君は近所の家に駆け込んで、救急車と警察を呼んでもらい、その後警察の事故処理係に、出来る限り状況説明をした。 

 後日、家に警察から電話があり、大学生の入院先を教えられ、A君は母親と見舞いに行って御礼を言った。 
 
 幸い大学生は元気そうですぐに退院できそうだった。

 中学1年のとき、父親の仕事の都合で同県内の市外(というか、山の中)へと引っ越したA君は、そこで先生となっていた、件の大学生と再会した。 

 お互いに驚き再会を喜びつつ、3年間面倒を見てもらって、(なんせ田舎の分校なので、先生はずっと同じなのだ)A君は中学を卒業し、高校進学と供に市内に戻った。 

 地元の教育大学に進学したA君は、教育実習先の小学校へ向かう途中の交差点で、自分の前を渡っている小学生の女の子に、右折車が今まさに突っ込もうとしているのをみた。 

 次に、ドライバーが携帯電話で喋りながら運転しているのが見えた。 
 
 スローモーションみたいに流れる情景に、ウソだろ・・・と思いつつ、とっさに女の子を突き飛ばしたら、案の定自分が跳ね飛ばされた。 

 コンクリートの地面に横たわって、泣いてる女の子を見ながら、もしかしたらあのとき先生もこんな景色を見たのかな・・・とか考えつつA君は意識を失った。 

 翌日入院先に、A君が助けた女の子の親が見舞いにやって来た。 

 すると驚いたことに彼女の親は中学時代の恩師であり、俺の命の恩人そのヒトだった。 

 「これで借りは返せましたね」とA君が言うと、「バカ・・・最初から、借りも貸しも無いよ」と先生は言った。 

 ベットの周りのカーテンを閉めて、A君と先生は無言で抱き合って泣いたという。 
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