330 / 480
青年期 266
しおりを挟む
「…まあとにかく。偽名を名乗ってる間に俺が敬語を使ってると変に思われるから、話し方は変えるよ?」
「構いません」
「あと、場所も移動した方が良いと思うけど…どうする?」
「私達は貴方の判断に従いますわ」
分身の俺の確認に姫が肯定し、安全を考えて提案すると姫は分身の俺に任せるような事を言う。
「んじゃ町の方に移動した方が良いかもな。ココだとライツに近いからアッチがその気になれば簡単に拉致れそうだし」
「…では移動の準備をいたします」
「…とりあえず…代行の居るトコに連れてこうか。アッチなら安全でしょ」
「そうですね。領都ならばライツも手は出せないでしょう」
分身の俺がそう伝えると姫は直ぐに準備を始め、移動先を適当に決めるとおばあちゃんも賛同してくれた。
「…金は持ってる?」
「…少しであれば…」
「じゃあ代行に工面するよう言っといて。俺に渡す分を削っても足りなければ請求して」
「分かりました」
分身の俺の確認に姫は少し困ったように呟き、分身の俺がおばあちゃんに指示を出すと頭を軽く下げて了承する。
「…そこまでしてくれるんですか…?」
「この恩はいずれライツに戻って余裕が出来た時にでも返してくれればいいからさ。期待せずに待ってるよ」
「分かりました。いずれ、必ずお返しします」
警戒した様子を見せながらも不思議そうに聞く姫に分身の俺がわざと恩着せがましく言うと姫は少し柔らかい表情になって頷いた。
「じゃあ俺は帰るから後は任せても大丈夫?」
「はい。後は私にお任せ下さい」
「移動中にかかった費用とか残業代や特別手当は代行に請求して。…紙と書く物持ってる?」
「わざわざ辺境伯様が一筆書かずとも、代行ならば口頭報告だけで十分かと存じます」
「…それもそうか。じゃ、お願いね」
「はい」
分身の俺の確認におばあちゃんは自信満々に肯定し、分身の俺が金銭面の話をして手紙を書こうとするもおばあちゃんに止められてしまい…
代行補佐が領内で不正なんて出来るわけないか。と思って後はおばあちゃんに任せ、分身の俺は人気の無い場所に移動して分身を解除する事に。
…その一週間後。
政府から『領内でライツの王女を目撃しなかったか?』という内容の手紙が届いたが…
俺は『男性であれば領民からライツの偉い人を見た、という情報が数件届いていた』との曖昧な返事を出す。
そして念の為にクライン領の代行に注意や警戒を促すための手紙を送る。
「…団長、ちょっといいか?」
「…どうかした?」
昼過ぎにドアがノックされ、隊長の一人がドアを開けて確認してくるので俺は報告書から目を話して用件を尋ねた。
「なんか知り合いからライツの王女に似たやつを領都で見た、って手紙が来たんだが…」
「ただのそっくりさんじゃないの?例え本人だとしても偽名を名乗ってたら本当に本人かどうか確認のしようが無いと思うし」
「…おいおい、そういう…勘弁してくれよ…」
隊長の微妙な顔をしながらの報告に俺がとぼけるように返すとソレで察したのか、隊長はため息を吐いて顔に手を当てながら呟く。
「…大丈夫なのか?かなりの爆弾だぞ?」
「本当にそう思う?昔の立場ならいざ知らず、今ならこの程度ただの爆竹でしょ」
「ばくちく?」
隊長は心配したような顔で確認するので俺が余裕の態度で返すもまだ通じなかったらしく、不思議そうな顔で聞き返してくる。
「威力の無い音と見た目だけのこけおどし、ってコト」
「…だといいんだがな」
「大丈夫だって。ライツが協定違反をやらかしてくれたら合法的に領土を奪い取るチャンスじゃん」
「…団長、まさかソレを狙って?」
俺が説明すると不安そうに返すので笑ってそう告げると隊長は驚いたように尋ねた。
「はっはー、『災い転じて福と為す』『転んでもタダじゃ起きない』ってね」
「よく分からんが…よく考えてみたら団長が知らないはずも無かったか。何か考えがあるのなら心配するだけ損だな」
俺は笑いながら肯定するようにことわざを言うも隊長は理解し切れないように呟き…
冷静になって納得したのか安心した様子を見せて部屋から出ていく。
「…何かあったんですか?」
隊長と入れ違いで部屋の中に入って来たお姉さんがドアを閉めながら不思議そうに尋ねてくる。
「ああ、ほら、あのライツの王女の件でちょっとね」
「ああ…なるほど。またライツと戦争にならないか心配になったんでしょうね…ライツ側に近い所の町を預かってる人は攻め込まれる危険がありますし」
俺の返答にお姉さんは納得しながら隊長の様子を思い返すように言う。
「まあそれだけじゃなく、俺が国から責められてまた領地没収を食らわないか…って心配もあると思うよ」
「うーん…前までならともかく、今の坊ちゃんは権力も兵力もありますから…国としても反乱を起こされるリスクを考えれば難しいと思いますが…」
「だよね」
俺が隊長の不安の種の一つを予想するように返すもお姉さんは微妙な顔をしながら否定的に呟くので、俺は同意して返した。
「構いません」
「あと、場所も移動した方が良いと思うけど…どうする?」
「私達は貴方の判断に従いますわ」
分身の俺の確認に姫が肯定し、安全を考えて提案すると姫は分身の俺に任せるような事を言う。
「んじゃ町の方に移動した方が良いかもな。ココだとライツに近いからアッチがその気になれば簡単に拉致れそうだし」
「…では移動の準備をいたします」
「…とりあえず…代行の居るトコに連れてこうか。アッチなら安全でしょ」
「そうですね。領都ならばライツも手は出せないでしょう」
分身の俺がそう伝えると姫は直ぐに準備を始め、移動先を適当に決めるとおばあちゃんも賛同してくれた。
「…金は持ってる?」
「…少しであれば…」
「じゃあ代行に工面するよう言っといて。俺に渡す分を削っても足りなければ請求して」
「分かりました」
分身の俺の確認に姫は少し困ったように呟き、分身の俺がおばあちゃんに指示を出すと頭を軽く下げて了承する。
「…そこまでしてくれるんですか…?」
「この恩はいずれライツに戻って余裕が出来た時にでも返してくれればいいからさ。期待せずに待ってるよ」
「分かりました。いずれ、必ずお返しします」
警戒した様子を見せながらも不思議そうに聞く姫に分身の俺がわざと恩着せがましく言うと姫は少し柔らかい表情になって頷いた。
「じゃあ俺は帰るから後は任せても大丈夫?」
「はい。後は私にお任せ下さい」
「移動中にかかった費用とか残業代や特別手当は代行に請求して。…紙と書く物持ってる?」
「わざわざ辺境伯様が一筆書かずとも、代行ならば口頭報告だけで十分かと存じます」
「…それもそうか。じゃ、お願いね」
「はい」
分身の俺の確認におばあちゃんは自信満々に肯定し、分身の俺が金銭面の話をして手紙を書こうとするもおばあちゃんに止められてしまい…
代行補佐が領内で不正なんて出来るわけないか。と思って後はおばあちゃんに任せ、分身の俺は人気の無い場所に移動して分身を解除する事に。
…その一週間後。
政府から『領内でライツの王女を目撃しなかったか?』という内容の手紙が届いたが…
俺は『男性であれば領民からライツの偉い人を見た、という情報が数件届いていた』との曖昧な返事を出す。
そして念の為にクライン領の代行に注意や警戒を促すための手紙を送る。
「…団長、ちょっといいか?」
「…どうかした?」
昼過ぎにドアがノックされ、隊長の一人がドアを開けて確認してくるので俺は報告書から目を話して用件を尋ねた。
「なんか知り合いからライツの王女に似たやつを領都で見た、って手紙が来たんだが…」
「ただのそっくりさんじゃないの?例え本人だとしても偽名を名乗ってたら本当に本人かどうか確認のしようが無いと思うし」
「…おいおい、そういう…勘弁してくれよ…」
隊長の微妙な顔をしながらの報告に俺がとぼけるように返すとソレで察したのか、隊長はため息を吐いて顔に手を当てながら呟く。
「…大丈夫なのか?かなりの爆弾だぞ?」
「本当にそう思う?昔の立場ならいざ知らず、今ならこの程度ただの爆竹でしょ」
「ばくちく?」
隊長は心配したような顔で確認するので俺が余裕の態度で返すもまだ通じなかったらしく、不思議そうな顔で聞き返してくる。
「威力の無い音と見た目だけのこけおどし、ってコト」
「…だといいんだがな」
「大丈夫だって。ライツが協定違反をやらかしてくれたら合法的に領土を奪い取るチャンスじゃん」
「…団長、まさかソレを狙って?」
俺が説明すると不安そうに返すので笑ってそう告げると隊長は驚いたように尋ねた。
「はっはー、『災い転じて福と為す』『転んでもタダじゃ起きない』ってね」
「よく分からんが…よく考えてみたら団長が知らないはずも無かったか。何か考えがあるのなら心配するだけ損だな」
俺は笑いながら肯定するようにことわざを言うも隊長は理解し切れないように呟き…
冷静になって納得したのか安心した様子を見せて部屋から出ていく。
「…何かあったんですか?」
隊長と入れ違いで部屋の中に入って来たお姉さんがドアを閉めながら不思議そうに尋ねてくる。
「ああ、ほら、あのライツの王女の件でちょっとね」
「ああ…なるほど。またライツと戦争にならないか心配になったんでしょうね…ライツ側に近い所の町を預かってる人は攻め込まれる危険がありますし」
俺の返答にお姉さんは納得しながら隊長の様子を思い返すように言う。
「まあそれだけじゃなく、俺が国から責められてまた領地没収を食らわないか…って心配もあると思うよ」
「うーん…前までならともかく、今の坊ちゃんは権力も兵力もありますから…国としても反乱を起こされるリスクを考えれば難しいと思いますが…」
「だよね」
俺が隊長の不安の種の一つを予想するように返すもお姉さんは微妙な顔をしながら否定的に呟くので、俺は同意して返した。
24
お気に入りに追加
866
あなたにおすすめの小説
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~
乃神レンガ
ファンタジー
謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。
二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。
更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。
それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。
異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。
しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。
国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。
果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。
現在毎日更新中。
※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる