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青年期 262

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「…大変美味でございました。ゼルハイト様はお料理の方もとても上手なのですね」

「まあ。これでも頑張ったし」

「…上手って表現のレベルじゃないと思うけど…」


紙皿が空になった後に少女が口を拭きながら賞賛し、分身の俺が適当な感じで返すと女の子は納得いかないような顔で呟く。


「…まさかアズマ中将と同じような美味な料理を作れる者が他にも居たとは…世界は広いものだ」

「…確かに。殺すには惜しい腕だな…どうだ?帝国に来ないか?」

「帝国が防衛以外での戦争を一切行わない、という条件なら考えておきます」

「ふん、こちらが下手に出れば調子に乗りおって…」


おじさんの驚くような呟きに青年が賛同しながら勧誘してくるので分身の俺が条件を提示すると青年は拒否るように返す。


「…凄いね」

「なにが?」

「皇帝陛下や私達が居る前で挑発するような発言なんてする?普通」

「挑発じゃなくてマジな返答だったんだが…」

「…嘘でしょ」


微妙な顔で呟く女の子に分身の俺が不思議に思って聞くと女の子は微妙な顔のまま若干呆れたように言い、本音だった事を返すと信じられないといった様子で呟かれた。


「…さて。お腹も満たされたところで、話し合いを再開しましょうか」


…朝食が終わり、分身の俺と女の子がテーブルの上の紙皿や食器を片付けてると少女がニコッと笑って交渉を再開させる。


そんなこんな青年と少女が交渉を続ける事、三時間後。


「…そろそろ昼食の時間だな。続きは昼食後でもよかろう」

「…そうですね」


話し合いも最終段階に入り、あともう少しで終わる…って感じの時に青年が時間を見て一時中断させるように言うと女の子も了承した。


「さて…アズマ中将、昼食の用意を」

「分かりました。…手伝って」

「護衛だから無理」

「では僕が代わりましょう」


おじさんの命令するような指示に女の子は了承すると何故か分身の俺に手伝いを頼んでくるが、少女の身の安全を考えて断ると男が再び提案してくる。


「お。じゃあお願いします。…なに作んの?」

「何作ろうかな…?ハンバーグとか?」


男に任せて女の子と一緒に調理場に向かいながら確認すると女の子は考えながら呟き、メジャーな料理を提案した。


「いいね」

「でも春巻きもいいなぁ…パスタにしようかな…」


分身の俺が賛同すると何故か女の子は次々とジャンルの違う料理名を呟き始める。


「昼食だからパスタで良いんじゃね?ラザニアとか」

「ラザニア…」


分身の俺は時間帯を考えておしゃれ感を優先しながら返し、他の麺料理を挙げると女の子が難しそうな顔で呟く。


「…麺の広義で言えば『マカロニ』もだな。そうなるとグラタンとかも有りか」

「待って、作るの私なんだからそんな面倒なヤツ提案しないでよ。そもそも作り方も曖昧でちゃんと覚えてないし」


更にふと思いついた料理を提案するも女の子には難色を示されて否定的に返された。


「じゃあもうハンバーグでいいじゃん」

「…そだね」


分身の俺が面倒になって投げやりに言うと女の子も考えるのが面倒になったのか賛同する。


「でもそれなら俺の手伝いとか要らなくない?」

「ソース作ってよ。ハンバーグにかけるデミグラスソース」

「オッケー」


分身の俺の確認に女の子が指示するように言うので分身の俺は了承してソースを作る事に。


…それから約40分後。


「…お待たせいたしました。こちら昼食の『ハンバーグ』になります」

「おっと、その前に…前菜としてカルパッチョでも出しとこうか」


女の子がハンバーグや付け合わせの野菜の乗った皿をテーブルの上に置くので、分身の俺は半端に残った魔物の肉を使い切るために作った料理も一緒にテーブルの上に置く。


「前菜とは気が利くではないか」

「ありがとうございます」

「…ソレ出されると私の料理が霞むからやめて欲しいんだけど…」

「ソレとコレとは別だから大丈夫だって」


青年の上機嫌での褒めるような言葉に分身の俺が適当にお礼を言うと、女の子はムスッとした感じでクレームみたいな事を呟くが分身の俺は楽観的に返す。


「これは…!魔物の肉を生肉として薄切りにしているのか!」

「…焼いた時も溶けるような食感でしたが、生でもこれとは…!」

「グリーズベアーの肉は生でも食べられるのか…!」

「いやいや、グリーズベアーの肉に限らずほとんどの魔物の肉は生でもめちゃくちゃ美味い。ダチョウの肉も生で食べると赤身の歯応えがマグロ…魚の刺身っぽいし」


前菜を一口食べた青年が驚くと少女も味に驚き、男は少し違う驚き方をしてるので分身の俺は他の食材を例えに挙げながら軽く説明した。


「…ダチョウの肉って漫画とかではあんまり美味しくないって言われてたような…よく生で食べようと思ったね」


女の子は微妙な顔で現代の知識を呟き、チャレンジャーを見るような目を向けながら聞いてくる。


「まあ何事も経験だからな。先ずは生で食べて、次に焼いて食べて味や食感の特徴を捉えてからどんな料理に向いてるかを探る」

「うわ、漫画の料理人っぽい。本格的過ぎるけど…寄生虫とか病気とか怖くない?ほら、衛生面とかアレだし…不安というか心配というか…」


分身の俺の適当で楽観的な返答に女の子が意外そうに言い、微妙な顔のまま健康を心配するように呟いた。


「魔素の関係上、 寄生虫とか病気とか衛生面とか…そういった問題は全く無い。なんかあれば先…ヒーラーに治してもらえばいっか、って思ってたが結局ただの杞憂だった」

「へー。でも病気も治せるほどのヒーラーってそうそう何人も居ないレベルでしょ?病魔におかされながら探すのって大変そう…」

「俺にはハンターのツテがあるし」

「…そういや10歳の頃からマスタークラスだっけ?羨ましいなぁ…」


分身の俺が説明すると女の子はまたしても意外そうに呟いた後に疑問を聞いて呟くので、元家庭教師の先生であるお姉さんの事を隠して誤魔化すように言うと女の子が羨みながら呟いた。
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