子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題！

青年期 255

「…みなさんもどう？食べる？」

「…ではいただこう」

「…せっかくだ、貰っておくか」

「…ありがたく」


分身の俺は懐柔するかのごとく空間魔法の施されたポーチから食パンを一本取り出して見せながら確認すると…


男達の警戒した様子ながらも受け取るらしい返事に分身の俺は包丁を取り出し、切り分けて一人一人に渡して行く。


「っ…！？」

「美味い！」

「パンなのか！？コレは…！」

「…ソレで終わり？」


食パンを食べると男達が女の子と似たような反応を見せ、女の子は残念そうに最後に残ったパンの端を指差しながら聞いた。


「ふっふっふ…まだあるんだなー、コレが」

「やった！ちょうだい！なんならソレ一本丸ごとちょうだい」

「欲張りだな…ほらよ」


分身の俺が得意気に笑いながらもう一本の食パンを取り出すと女の子が喜んで欲の皮が突っ張った要求をし…分身の俺は食パンをそのまま切らずに一本丸々渡す。


「やったー！！…うまっ！」


すると女の子は食パンを掲げるように持ち上げて喜んだ後に何故か食パンの真ん中にかじりつく。


「…もう無いのか？」

「…アズマ中将…羨ましい…！」

「まだあるよ。食べる？」

「「「「もちろんだ！！」」」」


男の物足りなそうな問いに分身の俺が三本目の食パンを取り出して聞くと男達全員の返事が被った。


「ええ…まだあるの…？」

「俺は作る時は一気に大量に作って、次の時のために作り置きしとく派だから…5本作ってた」

「マジ…？じゃあ食べ放題じゃん！」


女の子が何故かヒいたように呟き、食パンを大量に持ってる理由を話すと女の子は食パンを食べながら羨ましそうに言う。


「ちなみに今日の夕飯のデザートは小倉トーストだった。だから最初に切ったパンが余ってたわけよ」

「『小倉トースト』！いいなぁ！私も食べたい！」

「でもココ、フライパンとかトースターとか無くね？アンコとバターとホイップクリームは持ってるけど…」

「じゃあもう生で良くない？『生小倉パン』でいいじゃん」

「いや、ネーミング…」


分身の俺はさっき食べた夕飯のデザートの一つを教えると女の子が要求するように言い…


分身の俺が周りを見ながら難しい事を告げると、女の子は何とも言えない名前を提案してくるので分身の俺は呆れながら呟いた。


「じゃあ小倉生パンとか？」

「…トーストじゃないんだから普通にアンパンで良くね？…まあいいか」


女の子はあまり違いのないような名前を挙げ…分身の俺は良くあるシンプルな名称を提示するも、面倒になって適当に投げながらアンコやホイップクリームの入ったボウルを取り出す。


「…あれ？バターは？」

「アレはトーストに塗るとか溶かして食うものだろ？生の食パンに固形バターを乗せて食うか？普通」

「…確かに」


女の子がかじった部分にアンコとホイップクリームを乗せて尋ねるので分身の俺は出さない理由を告げると女の子は納得する。


「…うまっ！このアンコめちゃくちゃ上品な甘さでホイップクリームの砂糖的な甘さとめちゃめちゃ合う！」

「雑な食レポだな…ソレもまた魔物素材だからそりゃ美味いだろ」

「えっ！？コレも！？」


女の子の感想に分身の俺はダメ出しするように呟き、アンコが美味い理由を教えると女の子が驚いた。


「なんで魔物素材って肉とかもそうだけど普通のヤツに比べて最高級の品質なんだろうな？」

「魔力の関係じゃない？違いはソレしかないし」

「うーん…まあ考えたところで答えが出るわけじゃないからどうでもいいか」


分身の俺がもう何度目になるか分からないふとした疑問を聞くと女の子は適当な感じで答え、分身の俺は少し考えて放り投げるように頭を切り替える。


「…待って。今『肉とかも』って言った？」

「それがどうかしたか？」

「もしかして魔物の肉も持ってるとか…？」

「持ってるぞ。生肉を薄切りにしてスライスチーズと一緒にパンに乗せるとサンドイッチみたいで美味いんだ、コレが」

「ちょうだい！私にもソレちょうだい！」


女の子の確認に分身の俺が認めるように言うとまたしても確認するように聞き、肯定しながら食べ方を教えると女の子が手を差し出して催促してきた。


「まあ構わんが…他にアンコとか食べる人いる？居ないんなら片付けるけど」

「…じゃあ」

「俺も」

「ならこっちにもくれ」

「だったら俺も…！」


魔物の肉とチーズを出す前に男達に確認を取ると一人がアンコに手を出すと他の男達も手を出し始める。


「「…美味い…！」」

「この黒いクリームみたいのはなんだ？」


…流石に数人の男達がパンに塗り出すとアンコもホイップクリームも直ぐに無くなり、分身の俺が空間魔法の施されたポーチにしまうと男の一人が確認するように尋ねてきた。


「『小豆』っていう豆を煮て潰したもの」

「豆を…？」

「アズキか…聞いた事ない名前だが…」

「普通にアンコって言った方が良くない？」

「ソレで伝わるか？」

「…無理かも」


分身の俺の返答に男達が不思議そうな反応をするので、女の子が簡潔な名称を告げるよう提案するも分身の俺が聞き返すと女の子は微妙な顔で呟く。