上 下
302 / 480

青年期 238

しおりを挟む
…数時間後の朝。


「…敵の中継基地を二つ破壊したから敵は兵站線の再構築を優先するはず」

「物資が無ければ戦いを続けられないからね」

「次はこの中継基地を狙うために今日は兵站の切れたこの町を取り返しに行こうかな」

「出撃の準備はいつでも整ってるよ」


分身の俺が地図を広げながら帝国側の動きを予想すると分身の女性も賛同し、分身の俺は他の中継基地を破壊する上で邪魔になる町を奪取する予定を告げると分身の女性がやる気満々で笑う。


「いや、出撃は夜にする。闇と霧に紛れた方が先手を取りやすいし」

「じゃああたし達は防衛だね?」

「ん。任せたよ」


分身の俺は別働隊で行動する事とその理由を告げると分身の女性が確認してくるので肯定して一旦寝直す事に。


その夕方。


辺りが薄暗くなってきた時間帯に分身の俺は変化魔法でドラゴンに変身し、標的の町や中継基地の近くを飛び回りながらマーメイドの技で霧を発生させる。


「…よし!行くぞ!」

「出撃する!」

「出撃だ!」


…日が落ちて辺りが暗くなってきた頃に少し早いが分身の俺は別働隊を指揮して目的の町へと向かった。




ーーーー




「…ちょっと俺が様子を見て来る」

「分かりました」

「お気をつけて」


…町の中の敵兵達をセイレーンの技で眠らせるため、分身の俺は別働隊の兵士達を町から少し離れた場所で待機させて一人で町の城壁へと近づき…


馬から降りた後に変化魔法を使い、両手をハーピーの羽に部分変化させて飛び上がって城壁を越える。


「…ほう、 変身したり部分変化で背中に翼を生やすよりも魔力の消費が軽い…下級の魔物だけあってゴブリンやスライム並みにコスパが良いな」


分身の俺は霧に包まれた町を飛び回って様子を確認しながら意外に思って呟き、変化魔法の並行変化でセイレーンの喉に変え…


「…なんだ…?歌…?」
「なにか聞こえる…?」
「どこから…?」
「…歌が…?」


セイレーンの技である『スリープソング』を使って町中の生物を強制的に睡眠状態へと陥らせた。


「…オッケー、大丈夫だった。行こうか」

「出撃する」

「町の奪還に行くぞ」

「遅れるな」

「見失って迷子になるなよ」


…変化魔法を解除した後に門の裏側に掛けれられていた丸太を外して普通に正面から町を出て味方の兵達と合流し、合図と指示を出して再び町へと向かう。


「…門が開いている…?」

「…霧の影響でどこで敵兵と遭遇するか分からん。警戒を怠るな」

「…守備兵が倒れて…」

「…寝ているようだが…」

「…倒れている敵兵は一旦その場で拘束しろ」


町の中に入ると指揮官達は現状に疑問を抱きながらもちゃんと兵に指示を出して町の制圧に動き始める。


「建物の中の確認も怠るな」

「どこに敵兵が隠れ、潜んでいるか分からないからな」


…5000人の兵士達が眠っている敵兵や帝国側の人達を拘束していく様子を見ながら分身の俺も万が一の事を考えてまだ起きてる奴が居ないかを探す。



「…報告します。敵兵達の拘束が完了したようです」

「お、早い…じゃあ3000名は町の守備を任せる。陣営への報告もよろしく」

「分かりました」

「残りの2000名は俺について来て。一時間ほど休憩した後に敵の中継基地から物資を奪いに行くから」

「では早速編成いたします」


日付が変わるまでまだまだ余裕がかなりあるぐらいの時間帯に指揮官達がやって来て報告をしてくるので、分身の俺が指示を出すと指揮官達が了承して動き出した。


そして一時間後。


「よーし、行くぞー!」

「出撃する!」

「出撃だ!」


休憩時間が終わり、分身の俺は2000名の別働隊を率いて中継基地を狙うために町を出る。


「…ここらでいいかな。じゃあ俺が様子を見に行くから一旦待機で」

「分かりました」

「お気をつけて」


…今度も中継基地の近くで兵達を待機させて分身の俺が一人で基地内の敵兵達を眠らせに行く。


「…オッケー。行こうか」

「行くぞ」

「周りの警戒を怠るな」


セイレーンの『スリープソング』で敵兵達を眠らせた後に味方の兵の下へと戻り、物資の強奪と敵兵達の拘束をするために指示を出して中継基地へと再度向かう。


「…やはり敵兵は寝ているか…」

「この霧のせいなのか…?」

「しかし周りの警戒は怠るなよ。まだ起きている敵兵が居るかもしれないからな」


指揮官達は中継基地の中に入ると寝ている敵兵達を見て不思議そうに呟くが、味方の兵達に用心を促して作業を開始する。


「…お。ココの倉庫にはめちゃくちゃ食料があるじゃん、ラッキー」


どうやらこの中継基地は食料庫として使われる予定だったのか剣や防具、銃に弾といった武器が一切見当たらずに食べ物が大量に保存されていた。


「…ん?でも町には最低限の物資しか無かったような…」


木箱に入った食料を荷車に乗せている作業中に分身の俺はふとさっきの町を取り返した事を思い出して呟く。


「…なるほど、そういう事か…」


…少し考えた結果、町が俺らに取り返された時の保険かもしれない…という予想に思い至ったので分身の俺は独り言を呟きながら納得する。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

最強の職業は付与魔術師かもしれない

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。 召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。 しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる―― ※今月は毎日10時に投稿します。

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...