子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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青年期 220

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…救護テントに行ったはいいが、怪我人が外まで溢れている状況で空いてる場所などあるはずもなく…


しょうがなく男の人に割り当てられてるテントの中で治療を行う事に。


「楽にしてて」

「分かりました」

「…タオルかけるよ」

「はい」


テントの中で座る男の人に分身の俺が地面を指差して寝転ぶようポーズを取りながら指示を出すと男の人は素直に仰向けに寝転び…


目隠しの意味合いも込めて男の人の顔に畳んだタオルを乗せる。


「じゃあ、始めるよ」

「…お願いします」


分身の俺が合図をすると男の人は緊張した様子で返事をして分身の俺は男の人の腕に巻かれてる包帯を取った。


そして変化魔法の極技その2で男の人をスライム化させる。


「右腕は痛くない?」

「…痛みはありますが、まだなんとか我慢できる程度です」

「そう?じゃあイメージしてみようか。右腕があった時の…無くす前の事を思い出してみて」


分身の俺の問いに男の人が状況を話し、分身の俺は右腕を形成させるために本人に元の状態を思い出させるように言う。


「…右腕が…あった時の…?」

「そう、生まれた時からの付き合いでしょ。普通なら目を瞑っていても簡単に思い出せるはずだけど」

「…そう、ですね…」


不思議そうに聞く男の人に分身の俺がイメージさせるように言うと男の人は呟き、右肘から先が元に戻るように形成されていく。


「…指は動く?」

「…はい。不思議と動く感覚がします」


分身の俺の確認に男の人は肯定して答え、右手がグーのように拳になったりパーのように開いたりした。


「…よし、オッケー。終了」


分身の俺はスライム化を解いて変化魔法を解除した後に無詠唱で回復魔法を使って治療の終わりを告げる。


「…ありがとうございま……えっ!?」


男の人が『右手』でタオルを取りながらお礼を言い、その途中で右手を凝視しながら驚いた。


「み、みぎ、右手が…!さっきまで……こ、これは…!?いったい…!」


…男の人は元に戻った右手を動かしながら驚愕しすぎて混乱するような反応を見せる。


「一応右手を形成する際に脂肪や筋肉を使ってるから栄養はちゃんと取ること。せっかく治療したのに栄養失調で倒れたり最悪餓死されると全部無駄になるから気をつけてね」

「あ…はい!ありがとうございます!!」


分身の俺が注意事項を話して警告すると男の人が頭を下げてお礼を言い、用は済んだので分身の女性の所へと行く事にした。


その後、分身の女性と合流したが他に分身の俺の治療が必要な重傷者は居なかったらしいので…


自分達のテントに戻って夕飯を食べる事にした。


「…美味い。昨日の料理もそうだったが、料理の腕も相当なものになっているな…」

「ありがとうございます。必死に勉強しましたので」


蛇肉のミートボールを食べて男が意外そうに呟き、分身の俺はお礼を言う。


「子供の頃から料理は上手かったのかい?」

「…分からない。一日のほとんどを鍛錬や修行に費やしていたから料理を食べる機会など無かった」

「あの時はお店で買った物ばっかり食べてましたからね」


分身の女性の質問に男が微妙な顔をしながら思い出を語るように話すと分身のお姉さんも当時の事を話し始める。


「まあそもそも料理の勉強を始めたのは学生の頃だし。弟や妹に教えを乞われなかったら勉強はしてないと思う」

「へー。そうだったんだ…どうりで…」


分身の俺がそう話すと分身の女性は納得したように言うと思い出すように呟く。



…翌日。



おそらく国境付近に布陣しているであろう敵国を国内から追い出すために分身の俺と女性は指揮下の兵達と共に戦場へと向かう。



「…さて…」

「まだやるのかい?いくらやっても無駄だと思うけど」


…国境付近の戦場に到着し、分身の俺がいつも通り一騎打ちを申し入れに行こうとすると分身の女性は呆れたように言った。


「ふっふっふ…実は無駄じゃないんだなー、コレが」

「…本当かい?」

「ま、長い目で見た時の布石だよ」


分身の俺の得意気に笑いながらの返答に女性が胡散臭そうな目を向けてくるが、分身の俺は気にせず適当に流して敵の軍勢に単騎で近づく。


「やーやー!我こそは猟兵隊の団長なり!一騎打ちを受けるか、撤退または降伏するかを選ぶがよい!そのまま開戦しても壊滅するだけであるぞ!賢明な判断を下す事を求む!」


分身の俺は名乗りを上げながら敵兵達の士気の低下を狙って脅しをかける。


「…今この国から完全撤退するのならば国境を越えるまでこちらからは手を出さず、手を出させない事を約束しよう!無論国境を越えた後に再度侵攻しようとした場合には迎撃の措置を取らせてもらうが!」


敵陣がざわつく中、5分経っても返事が無いので分身の俺は勝手に自己判断で逃げてる最中の安全を約束して万が一の時の対策を告げた。


「…撤退中の安全を保証するのであれば我々は撤退しよう」

「あ、ほんと」

「ただし、口約束だけでは信用できん。口だけではなんとでも言えるからな」


敵の軍勢の中からこの前分身の俺に一騎打ちで負けた男が条件付きで撤退する事を選択したが、分身の俺の言葉を疑うように返す。


「だから我々が撤退している間、国境を越えるまでそちらに一緒に来てもらおうか。ソレが出来ないのであれば…」

「オッケー、分かった。じゃあ行こうか」

「な…!」


男は分身の俺を人質に取るような提案をしてきて、まだ喋ってる最中だったが分身の俺が即答して無防備に近づきながら催促すると男が驚く。
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