子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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青年期 217

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…その夕食後。


「…いやしかし、あのリデック君が今や広大な領地を治める辺境伯にまでなっていようとは…十年という歳月は本当に…」


夕食中の分身の俺らとの雑談やらの会話で話した情報を整理するように男が呟く。


「…あんたの師匠、って事はかなりやるんだろう?どうだい?あたしと手合わせしてくれないか?」


…分身の女性は分身の俺を見ながら確認した後に好奇心を抑えられないかのように好戦的に笑って男に挑むように申し入れる。


「俺は構わないが」

「…やめといた方が良いよ。昔の師匠になら勝てたかもしれないけど、今の師匠には俺でも楽には勝てないんだから」

「多分ヘレネーとは相性が良くないですもんね」

「へぇ?それは楽しみだ。ぜひ頼むよ」


男が受け入れ、分身の俺とお姉さんが止めるように言うも分身の女性は逆効果のように笑って立ち上がった。


「いいだろう」

「ま、良い機会か」

「ですね」


男も立ち上がって外に出るので分身の俺とお姉さんも見物兼立会人として一緒についていく。


「…そう言えば坊ちゃん、ヘレネーと戦った事ありましたっけ?」

「拠点内での稽古とかの模擬戦での手合わせなら何度かあるよ」

「あー…じゃあ武器を使った戦い方で、本来の坊ちゃんの戦い方は知らないんですね」

「知ってはいると思うよ、知識的には。実戦的にはどうか分からないけど」


分身のお姉さんの疑問に分身の俺が答えると微妙に勘違いしたような事を呟き、分身の俺は地味に訂正するように返す。


「…ここらでいいか。ソッチは素手でいいのかい?」

「…?どういう事だ?」

「実はまだ対人戦で柔術を使うほどの事態に追い込まれた事が無いので、多分俺が柔術を使えるのを知らないかもしれません」

「…なるほど」


…陣営から少し離れた場所で分身の女性が剣を片手に確認し、男が不思議そうに分身の俺を見ながら確認するので軽く説明すると納得したように返す。


「俺はリデック君に柔術を教えた。柔術とは素手での技術によるもの…なので素手で十分だ」

「なんだって…!?」

「どんな大怪我でも先生が治すからお互いに遠慮しなくていいよ。死にそうや殺しそうになったら俺が勝手に介入して止めるから」


男の説明するような発言に分身の女性は分身の俺を見ながら驚き、分身の俺は立ち合いの最中や後の事を心配させないように告げる。


「そりゃありがたい」

「全くだ」

「旦那の師匠だからって遠慮はしないよ」

「ふっ…あのリデック君の嫁がどれほどの力量を持つか…楽しみだ」

「…じゃあ…始め!」


…分身の女性と男が立ち合いの前に舌戦を始め、分身の俺は準備はオッケーだな…と思って開始の合図を出した。


「はあっ!」


分身の女性が先手を取って素早く距離を詰めて袈裟斬りにするように斬りかかるが、男は見切るように半歩だけ動いて体をズラすようにスッと避ける。


「ほう、良い動きじゃないか」

「そちらもな」


分身の女性のバックステップで少し距離を取りながらの褒め言葉に男は余裕を見せて返す。


「本当に遠慮は要らないようだ…はっ!」


分身の女性が確認するように呟き、飛び込むように距離を詰めて剣を突く。


「…ぐっ!?」


が、男に剣をいなされ…腕に触れたと思えば分身の女性が急に反転して背中から地面に叩きつけられた。


「…アレ、どうなってるんですかね?力の操作って言われても…」

「人体の作りや動きを完全に把握してないと無理だよね。感覚であそこの域まで辿り着くのは流石というべきか」


分身のお姉さんの問いに分身の俺は軽く教えるように返して男を褒める。


「人体の動き…?」

「合気道に近い技術だと思うけど…例えば腕を掴んでひねり上げると痛みとか抵抗したら折れるかも…って考えでみんな同じ動きをするじゃん?」

「…なるほど」

「どこをどういう風にどんな感じで動かせばどうなる…ってのを瞬時に把握して行動してるんだろうけど、俺らにはソレが分からないから真似のしようがないんだよなぁ…」


分身のお姉さんが不思議そうに聞くので例えを出して軽く説明すると少し納得したように呟き、分身の俺はふわっとした感覚的な事を言った後に首を傾げながら呟いた。


「くっ…!うわっ!ぐっ…!」


…分身の女性は男に斬りかかるも投げ飛ばされ、直ぐに体勢を整えて攻撃に移るが地面に叩きつけられる。


「…まだ向かって来るか。良い根性だ」

「チッ…!なんだいコイツは…!あぐっ!」


何度も立ち上がって何度も攻めかかって来る分身の女性に男が評価するように褒めると分身の女性はめちゃくちゃ苦戦しながら呟く。


「…!こうなったら…!」


分身の女性は一旦距離を取ると剣を構えたまま動かず、明らかにカウンター狙いの様子を見せた。


「お」

「ほう…」

「アンタの戦い方は分かった。これならどう出る?」


分身の俺が意外に思いながら呟くと男も意外そうに呟き、分身の女性は勘違いしながらニヤリと笑う。


「…あーあ、終わったな。ソレは悪手でしょ」

「アレは、流石に…」

「ふっ…」


分身の俺とお姉さんは分身の女性の負けを予想し、男が笑ってスタスタ歩きながら近づく。


「…そこだ!っ!?」


男が普通に腕を掴もうとした瞬間に分身の女性が狙いを澄ましたように剣を振るが…


案の定いなされてその場で反転すると頭から地面に落ち、直ぐに側頭部を蹴られて気絶する。
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