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青年期 212

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…そんなこんな第二階層に上がってダンジョンを進んでいると…


「…あっ!もしや…!」

「ん?あっ!」

「…あっ!」


誰かに声をかけられたので振り向くと、元家庭教師の師匠である男が嬉しそうな顔で駆け寄って来る。


「やはりリデック君か!久しぶりだな!」

「お久しぶりです。師匠」

「お久しぶりです」

「いやはや大きくなったもんだ…!いったい何年振りになる?そこのお嬢さんは見た目が昔と全く変わって無いように思えるが…」


男の挨拶に分身の俺とお姉さんが挨拶し返すと分身の俺を見ながら嬉しそうに懐かしみながら言い…


分身のお姉さんを見ると不思議そうな顔で呟く。


「…おそらく十年振りですね。老師とは学生時代の数年前に再会しています」

「十年…もうそんなに経つか…時が過ぎるのは早い事だ」


分身の俺が思い出しながら離れていた年月を予想すると、もう一人の家庭教師のおじさんの事を話すと男は目を瞑って呟いた後に笑う。


「…そういえば…お一人ですか?」

「ああ。修行の成果を確認しようと思ってな」


分身のお姉さんの周りを見ながらの確認に男が肯定して理由を話す。


「修行の成果、ですか?」

「現段階でどれだけ極みに近づけているか…対人だけではなく魔物にも通用する技術に仕上がっているかどうかの確認だ」

「へー!対魔物を想定した体術なんて凄いですね、まるで坊ちゃんみたいです」


分身の俺が疑問に思いながら聞くと男は理由を話すように答え、分身のお姉さんが驚きながら意外そうな感じで返した。


「ふふ…その通り。リデック君を見て思いついた技術だ」

「では師匠。勉強させていただきます」

「…期待に添えるかどうかは分からんがな」


男の肯定に分身の俺が期待しながら言うと男は困ったように笑って頬を掻きながら急に弱気な感じになる。


「ギャ!」

「お、早速」


…男と一緒に歩いていると直ぐにグレムリンが茂みから現れた。


「では…」

「ギー!…ギャッ!?」


男が手を開いて合気道家のように構えると魔物が棍棒を振りかぶって男に振り下ろし…


男は振り下ろされた棍棒を右手でいなすように軌道をズラすと、魔物の身体が急に反転して頭から地面に落ちる。


「「おおー」」

「ギッ…!ギャー!ギャッ!」


分身の俺とお姉さんが同時に感心しながら呟くと魔物が素早く立ち上がり、今度はバットをフルスイングするように横振りで攻撃するが…


男は回し受けのように左手で棍棒を上にいなすとやはり魔物の身体が反転して地面に頭から落ちた。


「うおー、すげー…まるで柔術の極地だな…」

「…ふんっ!」


ハイレベルの合気道みたいな技術だな…と思いながら呟くと男は倒れてる魔物の頭を踏み砕いて倒す。


「流石です」

「凄いですね」

「いやー…照れるな」


分身の俺とお姉さんが拍手で出迎えながら褒めると男は照れたような反応をする。


「武の極地…といった感じでした。あれだけの動きでも良く分かります」

「そうか?」

「重心や力の流れの操作…ですよね?その技術の肝は」

「…何故分かった?」


分身の俺の褒め言葉に男が謙遜するように返すので、確認するように聞くと男は驚愕したような表情になって聞き返す。


「似たような武術を知っています。知ってるだけですけど」

「…そうか。やはり似たような技術は存在するか…」

「ですが、師匠のようにこのような実戦で使える人は居ないと思います。いや、そもそも演舞でもこんなハイレベルな技術を実践出来るのか…?」


分身の俺が前世の記憶による知識を話すと男はちょっと落ち込んだような感じで呟き、分身の俺はフォローするように断言した後に疑問を呟いた。


「とにかく凄い技術だ、って事ですよね?」

「うん。そこは間違いない」


分身のお姉さんの話を纏めるような確認に分身の俺は再度断言する。


「ふっ…なんとか面目は保てたようで一安心だ」

「しかし掴まずに触れるだけで投げるなんて凄いですね」

「ああ、その境地に至ったのはつい最近…一年ほど前になるか」


男が安堵したように笑い、分身の俺が歩き始めながら褒めるように言うと男もついて来るように歩き出して思い出すように答えた。


「うふふ…」

「ん?女の子の笑い声?」

「…ハーピーだ」


…男と話しながら歩いているとどこからか少女のような笑い声が聞こえてきて、分身の俺が声のする方を向くと男が魔物の名前を告げる。


「…アレか。流石は特殊ダンジョン、初めて見る魔物が多くて助かるわー」

「俺がやろう」

「おっ。勉強させてもらいます」


木の上の枝に立ってる鳥人のような少女を見て分身の俺が喜ぶと男が相手をしてくれるらしく…分身の俺は下がって観戦する事に。


「空を飛べる魔物相手に柔術って効きますかね?」

「俺が習った技術じゃ難しいだろうね。使える技が少ないし」


分身のお姉さんの疑問に分身の俺は含みを持たせながら否定的な意見を話す。


「うふふ…シャー!」

「ふっ…」

「ギャ…!」


…木の上から離れ、上から足の爪で蹴るように襲いかかって来た魔物を男は右手でいなすように受け流し…地面へと叩きつけた。


「え…!?今なにが!?」

「受け流す時にハーピーの蹴りの力を利用したカウンターで脚を折った。その勢いを利用して地面に叩きつけたから、側から見たら師匠が蹴りを軽く払ったら魔物がただ重力に負けて地面に叩きつけられた…ようにしか見えないと思う」

「…なるほど…?」


驚く分身のお姉さんに分身の俺が解説するも分身のお姉さんはあまりよく分かってない様子で呟く。
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