上 下
276 / 480

青年期 212

しおりを挟む
…そんなこんな第二階層に上がってダンジョンを進んでいると…


「…あっ!もしや…!」

「ん?あっ!」

「…あっ!」


誰かに声をかけられたので振り向くと、元家庭教師の師匠である男が嬉しそうな顔で駆け寄って来る。


「やはりリデック君か!久しぶりだな!」

「お久しぶりです。師匠」

「お久しぶりです」

「いやはや大きくなったもんだ…!いったい何年振りになる?そこのお嬢さんは見た目が昔と全く変わって無いように思えるが…」


男の挨拶に分身の俺とお姉さんが挨拶し返すと分身の俺を見ながら嬉しそうに懐かしみながら言い…


分身のお姉さんを見ると不思議そうな顔で呟く。


「…おそらく十年振りですね。老師とは学生時代の数年前に再会しています」

「十年…もうそんなに経つか…時が過ぎるのは早い事だ」


分身の俺が思い出しながら離れていた年月を予想すると、もう一人の家庭教師のおじさんの事を話すと男は目を瞑って呟いた後に笑う。


「…そういえば…お一人ですか?」

「ああ。修行の成果を確認しようと思ってな」


分身のお姉さんの周りを見ながらの確認に男が肯定して理由を話す。


「修行の成果、ですか?」

「現段階でどれだけ極みに近づけているか…対人だけではなく魔物にも通用する技術に仕上がっているかどうかの確認だ」

「へー!対魔物を想定した体術なんて凄いですね、まるで坊ちゃんみたいです」


分身の俺が疑問に思いながら聞くと男は理由を話すように答え、分身のお姉さんが驚きながら意外そうな感じで返した。


「ふふ…その通り。リデック君を見て思いついた技術だ」

「では師匠。勉強させていただきます」

「…期待に添えるかどうかは分からんがな」


男の肯定に分身の俺が期待しながら言うと男は困ったように笑って頬を掻きながら急に弱気な感じになる。


「ギャ!」

「お、早速」


…男と一緒に歩いていると直ぐにグレムリンが茂みから現れた。


「では…」

「ギー!…ギャッ!?」


男が手を開いて合気道家のように構えると魔物が棍棒を振りかぶって男に振り下ろし…


男は振り下ろされた棍棒を右手でいなすように軌道をズラすと、魔物の身体が急に反転して頭から地面に落ちる。


「「おおー」」

「ギッ…!ギャー!ギャッ!」


分身の俺とお姉さんが同時に感心しながら呟くと魔物が素早く立ち上がり、今度はバットをフルスイングするように横振りで攻撃するが…


男は回し受けのように左手で棍棒を上にいなすとやはり魔物の身体が反転して地面に頭から落ちた。


「うおー、すげー…まるで柔術の極地だな…」

「…ふんっ!」


ハイレベルの合気道みたいな技術だな…と思いながら呟くと男は倒れてる魔物の頭を踏み砕いて倒す。


「流石です」

「凄いですね」

「いやー…照れるな」


分身の俺とお姉さんが拍手で出迎えながら褒めると男は照れたような反応をする。


「武の極地…といった感じでした。あれだけの動きでも良く分かります」

「そうか?」

「重心や力の流れの操作…ですよね?その技術の肝は」

「…何故分かった?」


分身の俺の褒め言葉に男が謙遜するように返すので、確認するように聞くと男は驚愕したような表情になって聞き返す。


「似たような武術を知っています。知ってるだけですけど」

「…そうか。やはり似たような技術は存在するか…」

「ですが、師匠のようにこのような実戦で使える人は居ないと思います。いや、そもそも演舞でもこんなハイレベルな技術を実践出来るのか…?」


分身の俺が前世の記憶による知識を話すと男はちょっと落ち込んだような感じで呟き、分身の俺はフォローするように断言した後に疑問を呟いた。


「とにかく凄い技術だ、って事ですよね?」

「うん。そこは間違いない」


分身のお姉さんの話を纏めるような確認に分身の俺は再度断言する。


「ふっ…なんとか面目は保てたようで一安心だ」

「しかし掴まずに触れるだけで投げるなんて凄いですね」

「ああ、その境地に至ったのはつい最近…一年ほど前になるか」


男が安堵したように笑い、分身の俺が歩き始めながら褒めるように言うと男もついて来るように歩き出して思い出すように答えた。


「うふふ…」

「ん?女の子の笑い声?」

「…ハーピーだ」


…男と話しながら歩いているとどこからか少女のような笑い声が聞こえてきて、分身の俺が声のする方を向くと男が魔物の名前を告げる。


「…アレか。流石は特殊ダンジョン、初めて見る魔物が多くて助かるわー」

「俺がやろう」

「おっ。勉強させてもらいます」


木の上の枝に立ってる鳥人のような少女を見て分身の俺が喜ぶと男が相手をしてくれるらしく…分身の俺は下がって観戦する事に。


「空を飛べる魔物相手に柔術って効きますかね?」

「俺が習った技術じゃ難しいだろうね。使える技が少ないし」


分身のお姉さんの疑問に分身の俺は含みを持たせながら否定的な意見を話す。


「うふふ…シャー!」

「ふっ…」

「ギャ…!」


…木の上から離れ、上から足の爪で蹴るように襲いかかって来た魔物を男は右手でいなすように受け流し…地面へと叩きつけた。


「え…!?今なにが!?」

「受け流す時にハーピーの蹴りの力を利用したカウンターで脚を折った。その勢いを利用して地面に叩きつけたから、側から見たら師匠が蹴りを軽く払ったら魔物がただ重力に負けて地面に叩きつけられた…ようにしか見えないと思う」

「…なるほど…?」


驚く分身のお姉さんに分身の俺が解説するも分身のお姉さんはあまりよく分かってない様子で呟く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜

ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。 年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。 そんな彼女の癒しは3匹のペット達。 シベリアンハスキーのコロ。 カナリアのカナ。 キバラガメのキィ。 犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。 ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。 挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。 アイラもペット達も焼け死んでしまう。 それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。 何故かペット達がチートな力を持って…。 アイラは只の幼女になって…。 そんな彼女達のほのぼの異世界生活。 テイマー物 第3弾。 カクヨムでも公開中。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~

乃神レンガ
ファンタジー
 謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。  二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。  更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。  それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。  異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。  しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。  国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。  果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。  現在毎日更新中。  ※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

処理中です...