子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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青年期 205

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…そのまま男について行くと謁見の間とかではなく、応接室に通された。


「ようこそニャルガッズへ。ラスタより遠路はるばるよく来てくれた。心より感謝し、歓迎しよう」

「あ、はい」


部屋の中に入ると40から50代ぐらいのおじさんがソファから立ち上がって挨拶し、笑顔で握手を求めて来るので分身の俺は反応に困りつつ握手をする。


「私はこの戦争の指揮を執っているグルーツー伯爵だ」

「えーと…クライン辺境伯です」


おじさんの自己紹介に分身の俺は今なんて名乗る爵位だっけ…?と少し考えて返した。


「…少々礼を欠いて失礼かもしれないが… クライン辺境伯が連れて来た兵の数を教えてもらえないだろうか?」

「ココにいる三人です」

「…は?さん…にん…?」


おじさんが非礼を詫びるような断りを入れて分身の俺らの戦力を尋ねてくるので、分身の俺が分身のお姉さんや女性を指すように答えるとおじさんは呆然としたように呟く。


「本当は自分一人でも十分だと思うのですが…万が一の不測の事態に備えて二人について来てもらいました」


分身の俺は嫁二人の見識を広げるための勉強や良い機会だからついでに観光しよう、という本当の目的を隠すように適当にそれっぽい誤魔化しの理由を告げる。


「…貴殿は本当に一人で十分だという自信があるのか?」

「はい。ニャルガッズの兵は精鋭で精強揃いとのことなので指揮官である自分一人いれば十分…この二人もいればこの戦争では確実に勝利出来るものだと考えております」


おじさんの困ったような確認に分身の俺はハッタリを効かせるように適当な事を自信満々で言い張って断言した。


「そ、そうか…では期待しているぞ。よろしく頼む」

「…申し訳ありませんが、そのためにはこちらから要求すべき点がありまして…」

「…なんだ?」


おじさんが気圧されたように受け入れてくれ、分身の俺が申し訳ない顔をしながらお願いするように言うとおじさんは若干警戒した様子を見せる。


「自分達が戦場で指揮を執る際にこの国の兵が命令や指示に反発するような事態が起きてしまうと勝てる戦いも負けてしまいます」

「…分かった。兵達には貴殿らの指揮に従うよう通達を出そう」

「できればこの戦争が終わるまでの間は自分達の命令や指示に絶対遵守するようにしてくれるとありがたいです。状況次第では無茶で無謀な作戦を敢行する事も必要になるでしょうし」


戦争に勝った後は自分達の命令を聞く必要はありませんからね。と、分身の俺は条件を通すために『限定的』である事を足して勝つための要求をした。


「…了承した、後から貴殿ら三人には指揮官の証である章を渡そう。ソレを付けている者の命には服従するはずだ」

「感謝申し上げます。その期待に応え、必ずやニャルガッズを勝利に導いてみせましょう」

「そうしてくれるとありがたい」


…おじさんが要求をアッサリと呑んでくれたので、分身の俺が軽く頭を下げてお礼と共に約束するように言うとおじさんは期待するような言葉を返す。


「では自分達は準備が整うまでの間、宿を探しに行かないといけないので…コレで失礼します」

「宿ならばこの城に泊まると良い。陛下も直ぐに許可を出すだろう」


分身の俺は用が済んだと判断して退室しようとするとおじさんが意外な提案をしてくる。


「大変ありがたい申し出ですが…街中で情報を集めようと思いまして…」

「…では、コレを」


分身の俺が断って理由を話すとおじさんは胸ポケットからバッジを取り出して渡して来た。


「…バッジ?」

「貴殿らの宿や食費等の支払いはこちらで持とう。なので経費として国へと請求してもらいたい」

「おお…ありがとうございます」

「いや、当たり前の事だ。礼を言われるほとでは…」


おじさんの説明に分身の俺が感謝しながらお礼の言葉を言うとおじさんは若干反応に困ったように返し、ドアがノックされる。


「将軍!ご報告が!」

「…入れ」

「はっ!失礼します!」

「では自分達はこれで…」


どうやら兵士が書類を手に部屋に入って来るので分身の俺らは今度こそ退室する事に。


「…さて。適当な宿屋を探した後に情報を集めるついでに観光しようか」

「はい」

「そうだね」


…部屋から出た後に分身の俺が予定を立てて話すと分身のお姉さんと女性も同意し、分身の俺らは街へと向かう。


「…やっぱり王都は賑わってますね。とても戦時中とは思えない…」

「そりゃココから結構離れた国の端でドンパチしてるからね。今はまだ影響があまり出てないんじゃない?」

「…でも上から見た感じ結構な兵力を動員してたから今回負けたら危ないんじゃ?」


街中の活気づいた様子に分身のお姉さんが意外そうに呟き、分身の俺が適当な予想を言うと分身の女性は少し考えて思い出すように予想を返す。


「多分ヤバいと思う。同盟国に援軍の要請を出すぐらいだし、状況を把握してる上の人達は気が気じゃないかも」

「…でも国民にソレを知られるわけにはいきませんからね…察したり悟られたりすると不安や危機感で暴動とかに発展しかねませんし」

「敵国と戦ってる最中に自国民同士でそんな馬鹿らしい事が…って思うけど、規模は違うけど似たような状況に遭遇した事が何回かあるからなぁ…」


分身の俺の肯定に分身のお姉さんは上の考えを察しながら返し、分身の女性が否定しようとするも体験談を話して微妙な表情になった。
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