子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

文字の大きさ
上 下
261 / 480

青年期 197

しおりを挟む
「…へー、ライツって素晴らしい国だなぁ…敗戦の将が何のお咎めも無く、兵達を死なせた責任すらも取らなくて良いなんて羨ましい…ウチの国もぜひ見習って欲しいものだね」


そしたら他の国に侵攻侵略し放題なのに…と、分身の俺は女を庇うような敵兵達のやり取りを見て皮肉を込めて褒める。


「なんだと!?」

「貴様…!何度我々を侮辱すれば気が済むというのだ!」

「もはやこれ以上生かしてはおけん!奴の首を奪いに行くぞ!」

「「「おおー!!」」」


分身の俺の煽りに指揮官っぽい奴らが怒りを露わにして兵達に命令を出して分身の俺へと襲いかかって来た。


「待て!やめろ!この私の命令が聞けんのか!!」

「はっはっは!鬼さんこちら!手の鳴る方へ!」


女が軍勢の動きを制止するように叫ぶが兵達は一切無視して分身の俺に突撃をかまして来るので…


分身の俺は余裕を見せて笑いながら鬼ごっこでもするように煽り、国境付近まで誘導するように逃げる。


「ほらほら、あと少しあと少し」

「くっ…!逃すな!」

「あともう少しで捉えられる!」

「速度を上げろ!」

「ははは、馬に無茶させるなんて酷い騎手だこと」


敵の騎馬隊っぽい数千人の部隊を、攻撃が届かないギリギリの距離を保ったままで逃げながら分身の俺は敵に逃げられないよう煽り続けた。


…そんなこんな逃げる事、約二時間後。


「…なっ!」

「うわっ!」

「くそっ!」


…流石に馬に無理をさせ続けていたせいで体力や脚に限界がきたらしく、バタバタと馬が倒れて兵達が落馬し始める。


「あーあ、可哀想…防衛戦なら馬を奪っても良かったんだけど…反攻や侵攻とか攻めに転じてると奪った後に連れてく手間がなぁ…んじゃ、バイバイ」

「あっ!」

「くそっ!待て!」

「逃げる気か!」


分身の俺は倒れた馬に申し訳ない気持ちになりつつも自己弁護するように言い訳を呟いて気持ちを切り替え、さっきの軍勢の下へと戻る事に。



ーーー



「…ん?」


分身の俺が約30分ほどかけて戻っていると…


猟兵隊の部隊達に後ろから追撃を食らっているであろう…と予想していた敵の軍勢が、予想に反してなんか大人しくなっていた。


「あ。戻って来た」

「団長が騎馬隊を引き受けていた間に残った奴らは全員投降したぞ」

「え、マジで?さっきはめちゃくちゃやる気に満ち溢れてて死兵同然だったのに…」


分身の俺に気づいた隊長が近づいて来て現状を報告し、分身に俺は驚きで意外に思いながら確認して呟く。


「…私が説得した。我々は降伏する」


だから兵の命だけは…と、団員達に連れられて姫がやって来る。


「ああ、そう。じゃあ全員に武装解除…防具を外して武器も捨てさせてくれる?」

「…分かった。聞け!兵達よ!」

「我々が追いついた頃には既に武器は捨てられていたぞ」

「へぇ。流石に冷静になると死ぬのが怖くなったか…まあそんなもんか」


分身の俺の指示に姫が部下の兵士達に命令を告げ、隊長の一人が既に兵達の戦意は喪失していた事を教えてくれた。


「んじゃ武器防具は回収して俺らが貰おう。後方部隊に連絡お願い」

「分かった」

「後は…ライツの兵を大部隊ごとに率いていた指揮官をコッチに連れて来て。これから兵達には国境まで歩いて移動してもらうから」

「…分かった」


分身の俺は隊長に指示を出した後に姫にも指示を出して何か聞かれる前に先に理由を話す。


「…いやー、人質がいっぱいでこりゃライツとの交渉が楽しみになってくるね」

「…この軍勢だ。少なくとも将官クラスが5名はいるとみていいだろう」

「『姫』って呼ばれたし、周りからの扱いを見るに多分王女だよね?前線司令か指揮官の補佐だったのかな?」

「なんにせよ、王女が前線に出るとは…優位に進めていたが故の油断か…」


分身の俺のゲスい発言にも隊長達は慣れたように賛同しながら一国の姫がわざわざこんな前線に居た理由を予想する。


「まあ最大の誤算は俺ら猟兵隊の強さを見誤った事だね。結構あちこちで動いてて名が売れてるハズなのに舐めてかかるから」

「ははは、ソレは団長の計画の内でしょ」

「団長が上手く事を進めたのを相手の落ち度にするのは酷だと思うが…」

「全くだ。団長が一歩先んじただけで相手の誤算にするのは流石に酷いな」


分身の俺がしれっと誤魔化して勘違いさせるような事を言うと隊長達は笑ってライツの指揮官をフォローするかのように返す。


「…でも流石に四万余りの大軍勢を率いてるのに1500人ほどの部隊に負ける…ってのもちょっと信じられないし考えられないよね。話とかで聞いたとしたら」

「「「「確かに…」」」」

「団長に会う前の僕らが逆の立場だったら多分団長の目論見通り、めちゃくちゃ油断してたと思う。猟兵隊を見て『あの人数で何ができる?』って鼻で笑ってたかも」

「うむ…」

「…そうだな…」

「…そうなっていたかもしれん」


隊長の一人の敵を庇うような発言に他の隊長達が納得するように呟くと別の隊長も敵のフォローに入り、隊長達は少し考えて同意するかのように肯定した。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

異世界転移したよ!

八田若忠
ファンタジー
日々鉄工所で働く中年男が地球の神様が企てた事故であっけなく死亡する。 主人公の死の真相は「軟弱者が嫌いだから」と神様が明かすが、地球の神様はパンチパーマで恐ろしい顔つきだったので、あっさりと了承する主人公。 「軟弱者」と罵られた原因である魔法を自由に行使する事が出来る世界にリストラされた主人公が、ここぞとばかりに魔法を使いまくるかと思えば、そこそこ平和でお人好しばかりが住むエンガルの町に流れ着いたばかりに、温泉を掘る程度でしか活躍出来ないばかりか、腕力に物を言わせる事に長けたドワーフの三姉妹が押しかけ女房になってしまったので、益々活躍の場が無くなりさあ大変。 基本三人の奥さんが荒事を片付けている間、後ろから主人公が応援する御近所大冒険物語。 この度アルファポリス様主催の第8回ファンタジー小説大賞にて特別賞を頂き、アルファポリス様から書籍化しました。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

アーティファクトコレクター -異世界と転生とお宝と-

一星
ファンタジー
至って普通のサラリーマン、松平善は車に跳ねられ死んでしまう。気が付くとそこはダンジョンの中。しかも体は子供になっている!? スキル? ステータス? なんだそれ。ゲームの様な仕組みがある異世界で生き返ったは良いが、こんな状況むごいよ神様。 ダンジョン攻略をしたり、ゴブリンたちを支配したり、戦争に参加したり、鳩を愛でたりする物語です。 基本ゆったり進行で話が進みます。 四章後半ごろから主人公無双が多くなり、その後は人間では最強になります。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...