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青年期 183
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そして一週間後。
『ウィロー伯爵が貴族達にガウ領の売買を持ちかけている』という噂が聞こえきた。
が、やはり領地内の様子や収益がアレなせいでみんなに断られているらしい。
…一応表向きでは領地の売買は禁止されているが、暗黙の了解で大々的にやらなければ問題にはならない…という事になってはいるものの…
こうもなりふり構わずガウ領を売却して手放そうとする伯爵の行動は目に余ったのか、それから数日経つ頃にはついに城に呼び出されて直接釘を刺されたようだ。
…普通ならばこんなヤバい状況になる前に俺みたいに領地没収の措置を受けるハズなのだが、伯爵の地位の高さによる権力や影響力のせいでソレも出来ないとか。
まあ、そのせいで逆にガウ領を手放す事が難しくなって更に毒に侵されてどんどん状態が悪化していくんだけども。
更に一週間後。
流石にもう政府も見て見ぬ振りは出来なくなったのか、ウィロー伯爵にガウ領についての改善命令が下る。
…これで決められた期間内に改善しなければガウ領を没収されるだけでなく、ウィロー領まで没収される可能が出て来てしまった。
つまりはウィロー伯爵は最終通告を受けてしまったに等しく、上手く立ち回らなければ最悪お家取り潰しまであり得る展開に入った事になる。
…まあもうこうなってしまえばどんなに上手く立ち回ったとしても…
最善にして最良の結果でも失脚してしまい、影響力の低下や権力の弱体化は免れないところまで来てしまってるんだけど。
もちろん最悪の結果は爵位剥奪からの領地や財産没収、そしてお家取り潰しのコースだが。
…その二日後。
またしてもウィロー伯爵から手紙が届き…今度は『ガウ領を是非とも譲り受けて欲しい』と懇願するような内容が書かれていた。
「ははは!」
「…どうかしました?」
「ついにウィロー伯爵も尻に火が付いて形振り構わず手段を選んでいられなくなったようだ。俺がガウ領を譲り受けるならアッチが共通金貨を200枚用意してくれるんだって」
「…えっ!?」
俺が手紙を読んで笑い声を上げるとお姉さんは本から目を離して聞き、手紙の内容を簡単に話すとお姉さんが驚く。
「今のガウ領を政府が定めた期間内に改善するのは不可能と判断したみたい。この手紙5枚にわたって本気で懇願するような内容を書いてるぐらいだし」
「…ウィロー伯爵が金を払ってガウ領を買ってもらう…って事ですか?」
「そうなるね。マイナスの値段なんて中々無いよ」
俺の説明にお姉さんが驚きながら確認し、俺は笑いながら肯定する。
「…どうするんですか?」
「そろそろ相手側の顔を立てて申し出を受けようかな。ここで無視して伯爵を潰すのも有りだけど、ソレで怨みを持たれたり敵対派閥に突かれる隙を生むのも得策じゃないし」
「…そうですね」
お姉さんは判断を尋ねるので俺が答えて説明する感じで意見を述べるように言うと、お姉さんも少し考えて賛同した。
「…うーん今の状況だと、逆に金を貸して大きな貸しを作るのも有りかも。どうせ伯爵の失脚は免れないんだから侯爵もそれぐらいはお目溢ししてくれるだろうし」
「…坊ちゃん政治的な駆け引きも得意だったんですね…」
俺がゲーム感覚で考えながら予想して言うとお姉さんは驚いたように意外そうに呟く。
「ああ。一応代行達に俺の考えを話してアッチの意見を聞いてたりしてるからね」
なので俺はお姉さんが引っ張って来た魔法協会の人達がブレーンである事を教える。
「…んじゃ、頼む」
「おう」
「え?どこかに行くんですか?」
俺が念の為に変化魔法を使って分身し、王都で待っている伯爵の下へと返事をしに行くための分身を見送るとお姉さんが不思議そうに尋ねて来た。
「ウィロー伯爵は王都で待ってるんだって。どうやら一刻も早くガウ領を手放したいみたい」
「ああー…なるほど。万が一の事態に備えて、ですね」
「そう。まあ必要無いとは思うんだけど…何があるか分からないし」
俺の説明にお姉さんは納得しながら返すので俺は肯定してこれでも警戒してる事を伝える。
「…でもよく考えたら売却って禁止…釘を刺されてませんでした?」
「『売却』じゃなく『譲渡』だからセーフって事にするんじゃない?政府の方もソコには目を瞑ると思うよ」
「…なるほど」
お姉さんが確認するように疑問を聞き、俺は抜け道の予想して返すと納得しながら呟く。
ーーーー
「…お」
「どうでした?」
「全く何も起きなかった。普通にめっちゃ感謝されて終わったよ」
…二時間ぐらいで分身が解除されるとお姉さんが確認するように尋ね、俺はアッチでの出来事を軽く話した。
「良かったですね。…あれ?そういえば書類とかは無いんですか?」
「一応国に申請として出してるから明日か明後日ぐらいにコッチに届くはず。ウィロー伯爵が急ぐようめちゃくちゃ圧をかけてたし」
「…ウィロー伯爵はなんとか致命傷だけは免れた…って感じですかね?」
「だね。なんとかしぶとくギリギリ首の皮一枚の状態で踏ん張り切れたみたい」
お姉さんの疑問に俺が説明するように返すと笑いながら確認してきて、俺も笑って肯定する。
『ウィロー伯爵が貴族達にガウ領の売買を持ちかけている』という噂が聞こえきた。
が、やはり領地内の様子や収益がアレなせいでみんなに断られているらしい。
…一応表向きでは領地の売買は禁止されているが、暗黙の了解で大々的にやらなければ問題にはならない…という事になってはいるものの…
こうもなりふり構わずガウ領を売却して手放そうとする伯爵の行動は目に余ったのか、それから数日経つ頃にはついに城に呼び出されて直接釘を刺されたようだ。
…普通ならばこんなヤバい状況になる前に俺みたいに領地没収の措置を受けるハズなのだが、伯爵の地位の高さによる権力や影響力のせいでソレも出来ないとか。
まあ、そのせいで逆にガウ領を手放す事が難しくなって更に毒に侵されてどんどん状態が悪化していくんだけども。
更に一週間後。
流石にもう政府も見て見ぬ振りは出来なくなったのか、ウィロー伯爵にガウ領についての改善命令が下る。
…これで決められた期間内に改善しなければガウ領を没収されるだけでなく、ウィロー領まで没収される可能が出て来てしまった。
つまりはウィロー伯爵は最終通告を受けてしまったに等しく、上手く立ち回らなければ最悪お家取り潰しまであり得る展開に入った事になる。
…まあもうこうなってしまえばどんなに上手く立ち回ったとしても…
最善にして最良の結果でも失脚してしまい、影響力の低下や権力の弱体化は免れないところまで来てしまってるんだけど。
もちろん最悪の結果は爵位剥奪からの領地や財産没収、そしてお家取り潰しのコースだが。
…その二日後。
またしてもウィロー伯爵から手紙が届き…今度は『ガウ領を是非とも譲り受けて欲しい』と懇願するような内容が書かれていた。
「ははは!」
「…どうかしました?」
「ついにウィロー伯爵も尻に火が付いて形振り構わず手段を選んでいられなくなったようだ。俺がガウ領を譲り受けるならアッチが共通金貨を200枚用意してくれるんだって」
「…えっ!?」
俺が手紙を読んで笑い声を上げるとお姉さんは本から目を離して聞き、手紙の内容を簡単に話すとお姉さんが驚く。
「今のガウ領を政府が定めた期間内に改善するのは不可能と判断したみたい。この手紙5枚にわたって本気で懇願するような内容を書いてるぐらいだし」
「…ウィロー伯爵が金を払ってガウ領を買ってもらう…って事ですか?」
「そうなるね。マイナスの値段なんて中々無いよ」
俺の説明にお姉さんが驚きながら確認し、俺は笑いながら肯定する。
「…どうするんですか?」
「そろそろ相手側の顔を立てて申し出を受けようかな。ここで無視して伯爵を潰すのも有りだけど、ソレで怨みを持たれたり敵対派閥に突かれる隙を生むのも得策じゃないし」
「…そうですね」
お姉さんは判断を尋ねるので俺が答えて説明する感じで意見を述べるように言うと、お姉さんも少し考えて賛同した。
「…うーん今の状況だと、逆に金を貸して大きな貸しを作るのも有りかも。どうせ伯爵の失脚は免れないんだから侯爵もそれぐらいはお目溢ししてくれるだろうし」
「…坊ちゃん政治的な駆け引きも得意だったんですね…」
俺がゲーム感覚で考えながら予想して言うとお姉さんは驚いたように意外そうに呟く。
「ああ。一応代行達に俺の考えを話してアッチの意見を聞いてたりしてるからね」
なので俺はお姉さんが引っ張って来た魔法協会の人達がブレーンである事を教える。
「…んじゃ、頼む」
「おう」
「え?どこかに行くんですか?」
俺が念の為に変化魔法を使って分身し、王都で待っている伯爵の下へと返事をしに行くための分身を見送るとお姉さんが不思議そうに尋ねて来た。
「ウィロー伯爵は王都で待ってるんだって。どうやら一刻も早くガウ領を手放したいみたい」
「ああー…なるほど。万が一の事態に備えて、ですね」
「そう。まあ必要無いとは思うんだけど…何があるか分からないし」
俺の説明にお姉さんは納得しながら返すので俺は肯定してこれでも警戒してる事を伝える。
「…でもよく考えたら売却って禁止…釘を刺されてませんでした?」
「『売却』じゃなく『譲渡』だからセーフって事にするんじゃない?政府の方もソコには目を瞑ると思うよ」
「…なるほど」
お姉さんが確認するように疑問を聞き、俺は抜け道の予想して返すと納得しながら呟く。
ーーーー
「…お」
「どうでした?」
「全く何も起きなかった。普通にめっちゃ感謝されて終わったよ」
…二時間ぐらいで分身が解除されるとお姉さんが確認するように尋ね、俺はアッチでの出来事を軽く話した。
「良かったですね。…あれ?そういえば書類とかは無いんですか?」
「一応国に申請として出してるから明日か明後日ぐらいにコッチに届くはず。ウィロー伯爵が急ぐようめちゃくちゃ圧をかけてたし」
「…ウィロー伯爵はなんとか致命傷だけは免れた…って感じですかね?」
「だね。なんとかしぶとくギリギリ首の皮一枚の状態で踏ん張り切れたみたい」
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