子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

文字の大きさ
上 下
246 / 480

青年期 182

しおりを挟む
…その後、昼食を作ってあげた後に男と手合わせをして夕方まで話をしてから帰る振りをして分身を解除させる。


「…ほー…なるほどね…」

「どうかしました?」


夕飯の準備をしながら俺が呟くとお姉さんが不思議そうに尋ねた。


「なんかドードルの公爵は着々と戦闘…戦争?準備を進めてるらしい」

「あ。そういえば分身がドードルに行ってるんでしたっけ?」

「そうそう。俺らの国が今結構面倒な事になってるじゃん?相手からしたらそのチャンスに将軍が一向に動こうとしないから自分で攻め入る事にしたんだと」


俺の報告を聞いて思い出すように確認するお姉さんに俺は肯定して返す。


「…迷惑ですね…」

「全くだ。でも戦いってのは他人の不幸や弱みにつけ込む方が有利に動くからねぇ…」


お姉さんの呟きに同意しつつも俺は公爵の考えには肯定的に呟く。


「…まあだけどこれで三方向から攻められるという辛い状況になってきたなぁ」

「そうですね。三国が協調して一気に大規模な戦力を投じて来られると東のトラトラットに援軍を要請しなければならなくなると思いますが…」


俺が今の国の状況を整理するように言うとお姉さんは肯定して最悪の状況を想定しながら呟いた。


「こりゃ大変だ。今頃軍閥のトップも頭が痛いだろうね…バタフライエフェクトにしても良くもまあこんな事態になったもんだ…」

「?蝶がどうかしたんですか?」

「いや、ただの例え話し。なんでもないよ」


俺の同情するような呟きにお姉さんが不思議そうに聞くので俺は適当に誤魔化す。



…それから三日後。



ウィロー伯爵から手紙が届いたので読んでみると…


『金銭と引き換えにガウ領を譲り渡す』的な提案が書かれていて、つまりは売却するような内容だった。


「ははは、アッチも相当切羽詰まってるようだ」

「なんて書かれてたんですか?」

「ガウ領を俺に売りたいんだと」

「え!?」


俺が笑いながら言うとお姉さんが不思議そうに聞くので手紙の内容を簡単に話すとお姉さんは驚いたように俺を見る。


「まあ断るけどね」

「断るんですか?」

「うん。どうせいずれは手放す事になるんだから、今わざわざ金払ってまで手に入れる必要も無いし」

「なるほど」


俺の判断にお姉さんが不思議そうに聞き、その理由を話すと納得したように返す。


「他の人に売ろうにも今あんな事になってる領地を買ってくれる人なんていないと思う」

「治安が悪くなってる上に収支も大赤字ですからね…」

「もう少し早く損切りすれば良かったのに…忙しくて判断が遅れたのかな?ま、俺にはどうでもいい事だけど」


俺が根拠を話すとお姉さんも賛同し、俺は伯爵の判断が遅かった点を指摘しつつも適当な感じで話を切り上げた。


「…もし、今買えばウィロー伯爵に恩が売れるのでは?」

「無い無い。アッチは俺がガウ領を欲しがってる前提で提案してるんだから今買えば逆に恩を着せられるよ」

「…なるほど。ソレは困りますね…」

「そもそも敵対してる貴族に恩を売ったところで恩を仇で返されるだけでしょ。アッチは利用する事しか考えてないんだから」

「それもそうですね」


お姉さんの少し考えての確認に俺が否定して逆用される可能性を告げると納得しながら呟き、伯爵達を警戒するように警告するとお姉さんは理解したように肯定する。


その翌日。


俺はもしもの時の事を考えて猟兵隊とローズナーの兵達にローズナー領防衛を想定した共同演習の計画を立て…


猟兵隊のみんなをローズナーに移動する指示を出した。


「一月で足りますかね?」

「一月もあれば十分じゃない?」

「うーん…」


お姉さんの不安そうな確認に俺が楽観的に返すと心配そうに呟く。


「どうせ防衛の時には俺も先生も出張るし…敵の戦力が予想よりも多ければ子供は使用人に任せて分身を解けばなんとかなるでしょ」

「なるほど…!あ、でも分身は解かない方が良いかもしれません。変装でもさせれば私とヘレネーで現場指揮官が更に二人に増えますし」

「なるほど…そんな手もあるか…!じゃあ今の内に変装とか考えててね」

「分かりました」


俺はお姉さんを安心させるように対策を話すも逆にお姉さんの提案に納得させられ、早めに準備をするよう指示を出す。


「今記憶共有とか出来ます?」

「オッケー」


お姉さんの確認に俺は変化魔法の極技その2を使ってスライム化からの分身をさせ…直ぐに解く。


「…え」

「どうかした?」


するとお姉さんが驚いたような反応をするので俺はアッチでなんかあったか…?と思いながら尋ねる。


「…き、記憶共有ってアッチにいる分身の私を消さなくても出来るんですか…?」

「出来るよ?知らなかった?」

「…今初めて知りました…分身ってホント凄い…!まさに極技…!」


お姉さんの驚愕しながらの確認に俺が軽い感じで肯定して確認し返すとお姉さんは驚いたまま呟き、今になって変化魔法の極技『分身』の真価を理解したかのような反応をした。


「ははは。便利でしょ?」

「…はい」


俺が笑いながら得意気に聞くとお姉さんは何か言いたそうな顔をするも抑えたように頷いて肯定する。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

処理中です...