239 / 480
青年期 175
しおりを挟む
…そして三日後。
猟兵隊のみんなが町に到着したので町の外に宿営地の設営をさせて侯爵へと報告に行く。
その二日後。
「…さて。俺らは『独立遊軍』として自由に行動していい…って侯爵から許可を得てるから先ずは敵の本陣を狙いに行こうか」
「分かった」
「了解だ」
「団長との一騎打ちを受けてくれるといいんだけどねぇ」
「楽に早く終わって欲しいもんだ」
分身の俺が隊長達を集め、地図を広げて色々と戦場の情報を話した後に指示を出すと隊長達は慣れたように了承する。
「…じゃ、行こうか」
分身の俺は馬に乗った後に合図をして宿営地から出て団員達と共に国境の向こうの戦場へと向かう。
ーーーーー
「あれ?」
「…アレが敵の本陣…だよね?」
「本陣を守る後方の防衛部隊や遊撃部隊は居ないのか…?」
「まさか…既に敵の策に…?」
俺ら猟兵隊が戦場を時計回りに大きく迂回して敵本陣へと横から向かうと邪魔が全く入らず…
分身の俺や隊長達の半分が不思議そうに言うと、もう半分の隊長達が警戒した様子で周りを見た。
「…まあいいや。ちょっと行って来る」
みんなで周りを警戒しながらゆっくりと敵本陣へと近づくもどこからも敵が来ないので猟兵隊を安全な場所で待機させ、分身の俺が一人離れて敵本陣へと向かう。
「やーやー!我こそは『猟兵隊』を率いるローズナー男爵なるぞ!お互いにこのまま戦っても無駄に時間と兵士を消耗するだけである!その無駄を省くためにそちらの大将に自分との一騎打ちを申し入れる!」
分身の俺は敵本陣から飛んで来る矢を鉄の棒で叩き落としながら近づき、大声で名乗りを上げながら敵に要求を告げる。
「…んお」
分身の俺への矢の雨は止んだが敵からの返事は無く…
5分ぐらい経って敵本陣から大量の騎兵達が飛び出して来た。
「…おおー…マジか…」
分身の俺が猟兵隊の下へと戻りながら後ろを見るとかなりの数の騎兵が突撃をかけてきているので分身の俺はこいつら馬鹿か?と、思いながら呟く。
「んじゃま…後方に移動!退避じゃなく!少し下がれ!」
敵の騎兵をギリギリまで誘き寄せるために分身の俺は変化魔法を使ってセイレーンの喉に部分変化させ、大声で隊長達に指示を出す。
「…よしよし…そろそろだな」
そして馬の速度を落として息を吸い、振り向くように馬から降りて騎兵の部隊が目前に差し掛かった時にセイレーンの技であるパニックボイスを使う。
「…ぐっ…!」
「な、なんだ…!?わっ!?」
「ど、どうした!うわっ!?」
「うわっ!?馬が…!?」
騎兵達が咄嗟に耳を塞ごうと手綱から手を離すと馬は動きを止め、暴れるように乗ってる兵士達を振り落とし始める。
「よーしよし。こっちにおいで」
「「「ヒヒーン!」」」
分身の俺はそのままセイレーンの技で音波を操ってその場に居た敵の軍馬を全て奪い、猟兵隊の下へと戻った。
「オッケー。戻ろう」
「…ねえ、団長。ソレって…もしかしてだけど変化魔法だったりする?」
めちゃくちゃ大量の馬を引き連れて猟兵隊と合流した後に帰還を指示すると隊長の一人が考えながら確認してくる。
「変化魔法だと?俺には魔法を使ってるようには見えなかったが…」
「俺もだ」
「…そうか。『セイレーン』…!確か、セイレーンという魔物は音波を操ると聞く」
「ああ!そういえば聞いた事ある!」
「なるほど…!セイレーンか…!」
隊長の大半が不思議そうな顔をすると別の隊長が思い当たる節を話し、一部の隊長達が納得するように返した。
「「「『セイレーン』?」」」
「海底ダンジョンの最下層とかに極稀に現れる、と言われてる幻の魔物だよ。僕も魔物図鑑でしか知らないけど…」
「俺も本で読んだ事がある。セイレーンが町に近づくと音波で動物達を操り、町中で暴れさせると」
「ダンジョンの外に出ると歌声や音波を使って船を沈める事も多いみたい。だから降魔の時期になると海底ダンジョンの近くは航行禁止だとか」
「あちゃー、バレちゃったか…カッコつけるために『使った事無い』って嘘吐いたのに…まさかバレるなんて…」
国境へと戻りながら隊長達が魔物の事を話すので分身の俺はおどけるように笑って肯定する。
「…でもどうやって?もしかしてあの一瞬だけ変化して一瞬で戻ったのかい?」
「そうそう。だからバレないように俺はみんなに背を向けてたじゃない?」
「…セイレーンって確か人型だけど半分鳥みたいな姿をしてる、って図鑑には書かれてたけど…」
「ほら、半分だったら服装で分からないじゃん?」
「「「なるほど…」」」「「「確かに…」」」
女性の問いに分身の俺が肯定しながら嘘を吐くと隊長の一人が思い出すように呟くが適当に誤魔化すとソレを信じて納得してくれた。
「…しかしそうか。団長の行動で不可解な事があれば変化魔法を使っている可能性があるのか…」
「「「そうか」」」「「「なるほど」」」
隊長の納得がいったような発言に隊長達みんなも同じような反応をする。
「でも流石は団長。変化魔法をここまで使いこなすなんて」
「ああ。やはりM級なだけはある」
「僕も団長に師事して変化魔法を覚えようかなー…」
「お。興味湧いた?教えようか?」
隊長達が褒めると一人の隊長が変化魔法に興味を示すので分身の俺が確認すると…
「…やっぱいいや。僕程度だと団長みたいに上手く扱えないから周りの評価は変えられないだろうし…」
隊長の一人は少し考えてメリットデメリットを秤にかけ、判断したのか諦めるように呟いた。
猟兵隊のみんなが町に到着したので町の外に宿営地の設営をさせて侯爵へと報告に行く。
その二日後。
「…さて。俺らは『独立遊軍』として自由に行動していい…って侯爵から許可を得てるから先ずは敵の本陣を狙いに行こうか」
「分かった」
「了解だ」
「団長との一騎打ちを受けてくれるといいんだけどねぇ」
「楽に早く終わって欲しいもんだ」
分身の俺が隊長達を集め、地図を広げて色々と戦場の情報を話した後に指示を出すと隊長達は慣れたように了承する。
「…じゃ、行こうか」
分身の俺は馬に乗った後に合図をして宿営地から出て団員達と共に国境の向こうの戦場へと向かう。
ーーーーー
「あれ?」
「…アレが敵の本陣…だよね?」
「本陣を守る後方の防衛部隊や遊撃部隊は居ないのか…?」
「まさか…既に敵の策に…?」
俺ら猟兵隊が戦場を時計回りに大きく迂回して敵本陣へと横から向かうと邪魔が全く入らず…
分身の俺や隊長達の半分が不思議そうに言うと、もう半分の隊長達が警戒した様子で周りを見た。
「…まあいいや。ちょっと行って来る」
みんなで周りを警戒しながらゆっくりと敵本陣へと近づくもどこからも敵が来ないので猟兵隊を安全な場所で待機させ、分身の俺が一人離れて敵本陣へと向かう。
「やーやー!我こそは『猟兵隊』を率いるローズナー男爵なるぞ!お互いにこのまま戦っても無駄に時間と兵士を消耗するだけである!その無駄を省くためにそちらの大将に自分との一騎打ちを申し入れる!」
分身の俺は敵本陣から飛んで来る矢を鉄の棒で叩き落としながら近づき、大声で名乗りを上げながら敵に要求を告げる。
「…んお」
分身の俺への矢の雨は止んだが敵からの返事は無く…
5分ぐらい経って敵本陣から大量の騎兵達が飛び出して来た。
「…おおー…マジか…」
分身の俺が猟兵隊の下へと戻りながら後ろを見るとかなりの数の騎兵が突撃をかけてきているので分身の俺はこいつら馬鹿か?と、思いながら呟く。
「んじゃま…後方に移動!退避じゃなく!少し下がれ!」
敵の騎兵をギリギリまで誘き寄せるために分身の俺は変化魔法を使ってセイレーンの喉に部分変化させ、大声で隊長達に指示を出す。
「…よしよし…そろそろだな」
そして馬の速度を落として息を吸い、振り向くように馬から降りて騎兵の部隊が目前に差し掛かった時にセイレーンの技であるパニックボイスを使う。
「…ぐっ…!」
「な、なんだ…!?わっ!?」
「ど、どうした!うわっ!?」
「うわっ!?馬が…!?」
騎兵達が咄嗟に耳を塞ごうと手綱から手を離すと馬は動きを止め、暴れるように乗ってる兵士達を振り落とし始める。
「よーしよし。こっちにおいで」
「「「ヒヒーン!」」」
分身の俺はそのままセイレーンの技で音波を操ってその場に居た敵の軍馬を全て奪い、猟兵隊の下へと戻った。
「オッケー。戻ろう」
「…ねえ、団長。ソレって…もしかしてだけど変化魔法だったりする?」
めちゃくちゃ大量の馬を引き連れて猟兵隊と合流した後に帰還を指示すると隊長の一人が考えながら確認してくる。
「変化魔法だと?俺には魔法を使ってるようには見えなかったが…」
「俺もだ」
「…そうか。『セイレーン』…!確か、セイレーンという魔物は音波を操ると聞く」
「ああ!そういえば聞いた事ある!」
「なるほど…!セイレーンか…!」
隊長の大半が不思議そうな顔をすると別の隊長が思い当たる節を話し、一部の隊長達が納得するように返した。
「「「『セイレーン』?」」」
「海底ダンジョンの最下層とかに極稀に現れる、と言われてる幻の魔物だよ。僕も魔物図鑑でしか知らないけど…」
「俺も本で読んだ事がある。セイレーンが町に近づくと音波で動物達を操り、町中で暴れさせると」
「ダンジョンの外に出ると歌声や音波を使って船を沈める事も多いみたい。だから降魔の時期になると海底ダンジョンの近くは航行禁止だとか」
「あちゃー、バレちゃったか…カッコつけるために『使った事無い』って嘘吐いたのに…まさかバレるなんて…」
国境へと戻りながら隊長達が魔物の事を話すので分身の俺はおどけるように笑って肯定する。
「…でもどうやって?もしかしてあの一瞬だけ変化して一瞬で戻ったのかい?」
「そうそう。だからバレないように俺はみんなに背を向けてたじゃない?」
「…セイレーンって確か人型だけど半分鳥みたいな姿をしてる、って図鑑には書かれてたけど…」
「ほら、半分だったら服装で分からないじゃん?」
「「「なるほど…」」」「「「確かに…」」」
女性の問いに分身の俺が肯定しながら嘘を吐くと隊長の一人が思い出すように呟くが適当に誤魔化すとソレを信じて納得してくれた。
「…しかしそうか。団長の行動で不可解な事があれば変化魔法を使っている可能性があるのか…」
「「「そうか」」」「「「なるほど」」」
隊長の納得がいったような発言に隊長達みんなも同じような反応をする。
「でも流石は団長。変化魔法をここまで使いこなすなんて」
「ああ。やはりM級なだけはある」
「僕も団長に師事して変化魔法を覚えようかなー…」
「お。興味湧いた?教えようか?」
隊長達が褒めると一人の隊長が変化魔法に興味を示すので分身の俺が確認すると…
「…やっぱいいや。僕程度だと団長みたいに上手く扱えないから周りの評価は変えられないだろうし…」
隊長の一人は少し考えてメリットデメリットを秤にかけ、判断したのか諦めるように呟いた。
43
お気に入りに追加
1,046
あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?
伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します
小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。
そして、田舎の町から王都へ向かいます
登場人物の名前と色
グラン デディーリエ(義母の名字)
8才
若草色の髪 ブルーグリーンの目
アルフ 実父
アダマス 母
エンジュ ミライト
13才 グランの義理姉
桃色の髪 ブルーの瞳
ユーディア ミライト
17才 グランの義理姉
濃い赤紫の髪 ブルーの瞳
コンティ ミライト
7才 グランの義理の弟
フォンシル コンドーラル ベージュ
11才皇太子
ピーター サイマルト
近衛兵 皇太子付き
アダマゼイン 魔王
目が透明
ガーゼル 魔王の側近 女の子
ジャスパー
フロー 食堂宿の人
宝石の名前関係をもじってます。
色とかもあわせて。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。
彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。
最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。
一種の童話感覚で物語は語られます。
童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる