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青年期 163

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…それから一月とちょっと経つ頃には猟兵隊のみんなが共同演習を終えて拠点へと戻って来た。


「お帰り。どうだった?」

「特に問題は起きていない」

「みんなちゃんと指示を聞いてくれて優秀だったよ」

「うむ。多少の反発や反感は覚悟していたが…すんなりと事が進んで肩透かしを食らった気分だったな」


隊長達が自室に集まって来たので俺が確認すると隊長達は良い報告をしてくれる。


「へー、意外。俺も上手くいかなかったらどうしよう…ってちょっと不安だったけど、それなら大丈夫そうだ」

「では予定通りに?」

「ん。これからは大体半年に一回ぐらいかな?アッチとの共同演習をしよう」

「「賛成」」

「異議無し」

「「俺もだ」」


俺の安堵しながらの呟きに隊長の一人が確認を取るので予定を話すと隊長達みんなが賛同した。


「あ。あとみんなに朗報があるよ」

「「「「朗報?」」」」


隊長達が解散する前に…と、俺が話を切り出すとみんなは不思議そうな顔をする。


「三日ぐらい前かな?魔法協会からの報告で、ようやくミスリルの加工技術の実用化に成功したんだって」

「本当か!?」

「ミスリル?」

「あのミスリルを加工出来る技術があるとは…!」

「…どっかで聞いたような?」


俺の報告を聞いて隊長達は驚く人と不思議そうな顔をする人に分かれた。


「攻撃魔法を無効化する金属だね。簡単に言えば」

「『ミスリルゴーレム』と呼ばれる魔物から入手出来る魔物素材になります」

「あー…思い出した。そのミスリルかぁ…」

「ミスリルは超希少金属だったような…」

「…そうか、アレか。だが確か加工の難易度が高く、数少ない限られた職人にしか扱えないと聞いたが…」


俺が軽く説明するとお姉さんも補足し、不思議そうな顔をしていた隊長達は思い出したかのように呟く。


「で、この拠点内にある魔法協会の支部に持っていけば多少金はかかるけど、武器や防具に加工してくれるらしい」

「ほう…ソレはありがたい」

「でもゴーレムってこの国に居ないよね?ドードルやロムニアのダンジョンでは見たけど…」

「そもそもミスリルのゴーレムなど目撃情報すらほとんど無い。もはや幻といっても差し支えないほどの魔物だ」

「…加工技術があっても物が無ければ…な」


俺の話を聞いてみんな嬉しそうな反応をしたのも束の間、隊長の一人が確認するように聞くとみんな微妙な顔になる。


「まあそう言うだろうと思って…俺からみんなにプレゼント」

「「「「なっ…!?」」」」


俺が空間魔法の施されたポーチからミスリルを取り出し、バスケットボールよりも少し大きい塊をテーブルの上に置きながら告げるとお姉さん以外の隊長達みんなが驚愕した。


「流石にプレートメイルのように全身を鎧で覆える量じゃないけど、上手く使えばある程度全身を庇えるぐらいにはなると思う」

「…ほ、本当に貰っていいのか?」

「そりゃ隊長に死なれたら部隊の戦力が大幅に下がるからね。少しでも守りを強くしないと」

「…じゃあ…ありがたく…」

「うむ…感謝する」


予想を話して二個、三個と同じ大きさの塊を取り出してテーブルの上に置いていくと隊長の一人が確認し、俺が渡す理由を教えると隊長は困惑した様子で一人ずつ取っていく。 



ーーー



「…こんな…一体どれほどの値が付くか分からないほど希少で貴重な物を、みんなにあんな簡単に配って本当に良かったのかい?」


…用が済み、お姉さんを除く隊長達みんなが部屋から出て行くと何故か女性が戻って来た…と思えばミスリルの塊を片手に困惑しながら確認してくる。


「問題無いよ。みんなにあげてもまだ余るほどにあるし」

「そんなに…!?」

「ミスリルゴーレム5体分でしたっけ?魔法協会に研究材料として結構渡しましたけど、まだまだいっぱいあるんですよね?」

「いっぱい…あるかな?プレートアーマーが10人分作れるか否か、ってぐらいだから多少多いぐらいじゃない?無駄遣いとか出来ないし」

「そんなに…!?」


俺の返答に女性が驚くとお姉さんが確認するように聞き、俺が否定するように返すと女性はまたしても驚いた。


「おおっと、そうだ。嫁に死なれたら困るから先生同様にミスリルの防具を二つ揃えて。はい」

「えっ…!?」


俺はそう言いながら大きめのミスリルの塊を二つテーブルの上に置くと女性がまた驚く。


「それじゃあ行きましょうか」

「ええっ!?…行くってどこに…?」


お姉さんがミスリルの塊を受け取って女性を先導するように言うと女性は困惑しながら尋ね…


「もちろん防具を揃えに、です。では行って来ます」

「行ってらっしゃい」

「え、ちょっ…!ええー!」


お姉さんは目的を話して俺に挨拶するので俺も手を振って挨拶を返し、部屋から出ていく二人を見送る。


「…さて、あとどれくらいミスリルが残ってるか確認しないと…」


自室で一人になった俺は独り言を呟いてポーチの中に入ってるミスリルの量を確認する…ついでに中身をちゃんと把握出来ているのかを確認するための良い機会なので持ち物を整頓する事にした。
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