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青年期 160

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…俺が私兵団『猟兵隊』を立ち上げてから一週間後。


俺は猟兵隊にローズナーやガウの兵士との共同演習をしてもらうため、みんなをローズナー領へと向かわせた。


「大丈夫ですかね?」

「大丈夫でしょ」


『行ってもやる事が無いから』と残ったお姉さんの確認に俺は楽観的に返す。


「演習の期間は一月でしたっけ?どんな内容の計画なんですか?」

「最初に話したのと一緒。アッチの兵士達には猟兵隊の指揮下に入って訓練や演習をしてもらう」


お姉さんが思い出すように言いながら聞いてくるので俺は計画に変更が無い事を告げ、内容を教える。


「…やっぱり反発しないか心配ですね…」

「流石に『兵士』なんだから上の命令には逆らわないと思うけど…まあ最初の内は面白くはないだろうね」


少し考えてのお姉さんの心配するような呟きに俺は兵達の内心を予想しながら言う。


「でもそう考えたら一月では足りないのでは?」

「いやいや、アッチの兵士達がちゃんと猟兵隊のみんなの指揮下に入って指示に従うか…の確認だから普通なら一週間でも長いと思うよ」

「なるほど…だから『演習』なんですね」

「そうそう。期間を一月にしたのは少しでも連携が上手くなるようにって期待を込めてね」


お姉さんは期間が短いような事を言い、俺が反論するように説明すると納得したので俺はそう意図を話した。


「確かに連携が上手くなれば合流や離れた状態のままの作戦を使う時もスムーズに進む…流石坊ちゃん。そこまで考えているとは」

「…ありがと」


お姉さんが意外そうに驚いて褒めて来るが俺はこんな当たり前の考えで褒められても…と、内心あまり嬉しくは無いが一応お礼を言う。




ーーーーー





「あ!ちょうど良いところに」


…昼食の時間に修行場所から本部の自室へと戻っていると、魔法協会所属の人が声をかけてくる。


「どうかしたんですか?」

「今コンテスティ侯爵が来ていまして…どうします?」


お姉さんが用件を聞くと魔法使いは来訪者の事を報告して俺に対応を尋ねた。


「侯爵が?珍しい…じゃあ俺が対応するよ」

「あ、お願いします」


俺は意外に思いつつも対応を引き受けると魔法使いは軽く頭を下げて歩いて行く。


「辺境伯じゃなく侯爵って珍しいですね」

「全くだ。多分王都に用があったついでに寄ってくれたんだろうけど…」


お姉さんも意外そうに言い、俺は肯定しながら侯爵を迎えに行く事に。


「む。いきなり来てすまんな、ゼルハイト卿」

「いえ、全然。暇すぎて今しがた鍛錬から戻って来たばかりですので時間はいっぱいありまして…侯爵が来てくれて助かりました」

「…そうか」


東門へと行くとおっさんは馬車から降りていて謝罪から入るので俺が否定して歓迎すると安心したように笑う。


「自分達は今から昼食なのですが…一緒にどうでしょう?」

「ほお、タイミングが良かったか。是非ご一緒させてもらおう」


俺の提案におっさんは喜びながら受け入れ、何故か馬車に乗らずに徒歩で俺らについて来る。


「何か食べたい物とかありますか?自分に作れる物ならお作りいたしますが」

「…ゼルハイト卿が作るものは全て絶品ゆえになんでも良いのだが…しいて言うなら肉、か。ボリュームのある肉料理を出してくれるとありがたい」

「分かりました。ではハンバーグと唐揚げにします」

「やったー!一週間振りの唐揚げ!」


俺がリクエストを聞くとおっさんは少し考えて呟いた後にザックリとした要求を言い、作る料理を決めるとお姉さんが喜ぶ。


「…そう言えば傭兵団を解散して私兵団を立ち上げたそうだな」


本部の建物へと移動してる最中におっさんがふと思い出したかのように確認してくる。


「はい。色々と思うところがありまして」

「…それでローズナー領かガウ領へと出兵させているのか?前までと違って今回は人がほとんど居ないようだが…」


俺の肯定しながらの理由を曖昧に濁すかのような返答におっさんは特に深掘りはせずに周りを見ながら不思議そうに呟く。


「ローズナーやガウの兵達と共同演習をさせています。辺境伯の所に援軍に行ってる間にソバルツが攻めて来ても対応出来るように」

「…ははは!二面同時対応を念頭に置いて対策を練るか!つまり同時に援軍の要請が来ても対応するという事だな、面白い!」


俺が兵達が不在の理由を話すとおっさんは何故か声を上げて笑い出した。


「これはつい戦力として期待してしまうな…本来なら援軍など要請しないに越した事は無いのだが」

「…正直に言いますと自力で解決出来るならコチラとしては面倒なので呼んで欲しくないです。ですが、もし不安になりましたら少しでも早く手遅れになる前にお呼び下さい。その方がお互いに損害は軽微で済みますので」

「ははは!それはそうだ。その時は期待しているぞ」


おっさんはニヤリと笑って呟くと体面を気にしたような事を言い、俺が素直に本音の考えをぶっちゃけると笑って俺の肩に手を置く。


「…状況次第ですので『お任せ下さい』と自信持っては言い切れませんが、自分の出来る限り頑張らせてもらいます」

「うむ。その折は頼んだぞ」


俺の微妙に卑屈っぽい返答にもおっさんは特に気にしてない様子で返す。
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