上 下
215 / 480

青年期 151

しおりを挟む
ーーーーー




「…ほぉ…なるほど…ロムニアではそんな事が…」


俺の話を聞いて男性は面白そうに呟く。


「まさか本当に世界すら支配出来る力が実在するなんて思いもしませんでした。どうせ夢物語だろう…と」

「しかしその生贄…供物として捧げられた少女は鍵と呼ばれるからには何かしらの特異体質であったのだろうか?」

「どうやら魔法適性が一切無い代わりに膨大な魔力を有していたらしいです」

「…なるほど…団長殿、貴殿のように、か?」


俺も面白かった事を伝えるように告げると男性は不思議そうに疑問を聞き…


俺が軽く説明するように答えると男性はイタズラでもするかのような笑みを浮かべて俺を指しながら言う。


「そうですね。俺と同類ではありますが…才能の差、とも言えましょうか…その少女には自分の約5倍。一般魔法使いの平均の50倍ほどの魔力量があったとか」

「50倍…!?それは、なんともまた…」


俺の肯定しながらの詳細に男性は驚いて何も言えないような感じで呟いた。


「相当…稀に見るほどの才能が無ければ持ち得ない量らしいです」

「で、あろうな」

「しかしまだ知られていないだけで世界のどこかには更に倍…もしくは三倍ほどの魔力の持ち主が存在していてもおかしくはないですが」

「ふむ…しかしいくら魔力の量が多いとて適性が無ければ如何ともし難い事じゃないのか?」

「ですね」


俺もお姉さんから聞いた話を男性に話すと納得したように返され…


俺の予想を告げると男性は考えるように魔法適性の重要性を指摘し、俺はソレを身を持って理解しているので肯定する。


「…ふぅむ…ロムニア国内だけではなく、周辺諸国にまで影響を及ぼしそうな難題を解決するとは流石だ」

「ありがとうございます」

「しかし、派閥の一つが崩れたとなるとロムニア国内でも影響は大きいだろうな…うーむ…私ならば直ぐに攻め込んだものを…」


なんとも惜しい…!と、男性は俺の話を聞いた後に過激な事を言い出して悔やむように呟く。


…そんなこんな話は終わったので俺は男性にロムニアのお土産を渡して宿に戻り…


お姉さんと共にお土産探しの観光をする事に。


「…お」

「何かありました?」


街中を散策中に分身が解除されて南の国境付近の出来事を知り、呟くとお姉さんが尋ねてきた。


「どうやらようやく撤退してくれたらしい」

「え?…あー…ようやくですか」


俺の報告にお姉さんは不思議そうな顔をした後に少し考えて理解したように呟く。


「意外とかかったと言うべきか、意外と早かったと言うべきか…」

「交戦はしました?」

「いや、砦までは来なかった。侯爵側の指揮官の手腕が優れてたかもね」

「それか相手側が牽制の意味合いで深く攻めて来なかったか…ですね」


俺が撤退までにかかった期間について呟くとお姉さんが確認するように聞き…適当な予想で味方を褒めたらお姉さんは相手側の思惑を予想するような事を言う。


「ま、なんにせよ俺らが出向く必要が無くなって良かったよ」

「そうですね」

「さーて心配事や不安の種が減ったし、なんか良いお土産はないものかー…っと」


俺は楽観的に返した後に街中を見渡し、見回りながらお土産を探す。



…それから三日後。



団員や馬達の休養も十分にとれたようなので帰国するために男性に挨拶してからラスタに向けて出発する。


「…辺境伯の城塞まで約三日…ってトコかな」

「何も無ければそうですね」

「今まで何も無かったんだから何も無いでしょ」


俺が馬車の中で地図を広げながら期間を予想するとお姉さんがフラグを立てるような事を言い、俺はフラグをへし折るように返す。



…そして更に三日後。



俺ら傭兵団はようやく国境を越えてラスタへと帰国した。


「ふぅ…国内に着くとなんか安心した気持ちになるね」

「あ、分かります。移動中の安全が確保されたような状態なので警戒度が下がりますし」


俺の呟きにお姉さんは同意するかのように理由を話す。


「夕方には辺境伯の居る都市に着くだろうし…拠点まで急いで戻るか、今までみたいに休養してから戻るか…」

「…急いで戻って拠点でゆっくりするか、特に急ぎの用は無いのでゆっくり休養してのんびり戻るか…ですね」

「うん。ソバルツが撤退して行ったから別に南に向かわなくてもいいし」


俺が都市に着いたその後の事を考えながら呟くとお姉さんも考えながら確認するように返し、俺は肯定して理由を告げる。


「…ま、都市に着いた後にみんなに聞けばいっか」

「ですね」


俺は考えるのが面倒になって楽観的に言うとお姉さんの笑いながら賛成した。



「…お」

「…予想通りの時間ですね」


…やはり国内だと道中何も起きずにスムーズに進み、夕方には城塞都市に到着する。


「いやー、久しぶりだなぁ…辺境伯とは拠点で何回も会ってるけど」

「王都に寄る度に遊びに来てるんでしたっけ?」

「そうそう。ドードルが動きを見せないから意外と暇なんだと」


俺が馬車から降りて懐かしむように呟きながらボケを挟むとお姉さんが笑いながら確認してくるので俺は肯定しながら弄るように返す。


「さて…みんなに確認を取ったら宿探しだ」


俺は一旦隊長達を集めてからどうするか尋ね、一応団員達にも確認を取るよう指示を出してからお姉さんと共に宿を探しに行く。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

外れスキル【転送】が最強だった件

名無し
ファンタジー
三十路になってようやくダンジョン入場試験に合格したケイス。 意気揚々と冒険者登録所に向かうが、そこで貰ったのは【転送】という外れスキル。 失意の中で故郷へ帰ろうとしていた彼のもとに、超有名ギルドのマスターが訪れる。 そこからケイスの人生は目覚ましく変わっていくのだった……。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

処理中です...