子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題！

青年期 148

「…これは…！パリパリとした食感だけではなく、中はしっとりと肉汁が溢れてくる…！」

「このような料理もあったなんて…！」

「…もっと無いのか？」


おじさんとお嬢さんは驚きながら感想を言うもやはり青年は直ぐに食べ終わっていて、追加のおかわりを要求してきた。


「次で最後ですね。それで足りなければ追加で出します」

「そうか」


俺がチャーハンの準備をしながら返すと青年は納得したように引き下がる。


「…お待たせしました。最後のこちらも同じくとある大陸の料理です」


俺は皿に盛ったチャーハンをテーブルの上に置いて軽く説明して片付けに入った。


「…コレは…マァイか。また珍しい食材を使う物だ」

「「『マァイ』？」」


するとおじさんがスプーンでチャーハンを掬った後に意外そうに言い、お嬢さんや青年が不思議そうに聞く。


「ターニアでは主食としても食べられている穀物だ。この国では扱う料理人が居ないからほとんど目にする事は無い」

「…なるほど…」

「美味い！もっと持ってこい！」


おじさんの説明にお嬢さんが考えるように呟くと青年は話を聞いているのかいないのか…


ガツガツと口の中に流し込むように食べながらおかわりを要求する。


「…この馬鹿者が。お前には辺境伯家の後継ぎだという自覚が無いのか？帰ったら礼儀作法を叩き込まねば…」

「なんだよ、お忍びだから問題無いだろ。…公の場ではちゃんとやるって」


…流石に目に余って我慢出来なくなったのか、おじさんが呆れたように言うと青年は追加で持って来たチャーハンをかき込みながらそう返す。


…そんなこんな中華料理の三種とデザートを食べ終えると辺境伯一家はお礼を言い、金を置いて帰って行った。


どうやら青年はお腹いっぱいなったからか『再戦はまた今度』と先延ばしにしてきたが。


「…ふう、ご馳走さん。じゃあ飯も食ったし観光を再開しようか」

「はい」


俺は辺境伯一家が帰った後に昼飯を食べ、また街中に繰り出してお土産探しをする事に。


…翌日。


の夜。


「…こんなもんでいいかな」

「そうですね。…というか買いすぎのような気もしますけど…」


めぼしいお土産はあらかた買い漁ったので俺が観光の終了を告げるとお姉さんは賛同しながらも困ったように笑う。



…その翌日。



俺ら傭兵団は朝早くから出発して今度は王都を目指した。


「…順調に行けば4日…ぐらいかな？」

「そうですね。今回は護衛とか居ませんし」


馬車の中で俺が地図を広げて期間を予想するとお姉さんも地図を見ながら賛同する。


「あ」

「…どうかした？」

「そう言えば…ヘレネーさんとは王都でお別れ…ですよね？」

「あ」


少ししてお姉さんが急に何を思い出すかのように声を出すので俺が聞くとお姉さんは女性の事に触れて確認するので、俺もそう言えば…と思いながら返す。


「そうか…だったね。すっかり忘れてた…拠点に帰還したら隊長を任せようと思ってたけど…まあいいか」

「…引き留めるとかは…」

「いやー、難しいんじゃないかな？元々国王の護衛をしてたわけだし」

「ですよね…」


俺は残念に思いながらもしょうがない…と気持ちを切り替えながら言うとお姉さんが残留を申し出るよう提案するが、俺の返答に残念そうに呟いた。


「まあでもあのレベルの隊長候補が居なくなるのは中々痛い…傭兵団としても結構な損失だよ」

「強化魔法の練度的に単純な身体能力では素の坊ちゃんよりも上ですから…実力の方もトップクラスですし」

「…ある意味期間が短かったのが幸いか。あのまま戦力としてカウントしてたら抜けた穴を埋めるのが大変だっただろうからね」

「確かに」


俺が傭兵団としての考えを話すとお姉さんも同意し、俺は不幸中の幸いだったって事でなんとか気持ちの整理をつけるように言う。


「…しょうがない事とはいえ、本当に残念ですね」

「全くだ」


お姉さんのため息を吐きながらの呟きに俺も同意して頷く。



…それから村や町を経由しながら進む事、4日後の夕方。



道中特に何の問題も起きず、普通にスムーズに進む事が出来たので大体予定通りの時間帯にドードルの王都へと到着した。


「…えーと…今回は4日ぐらい休養にあてようか」

「あ、そろそろ修行の日ですもんね…良いと思います」


王都の中で俺が滞在期間を決めるとお姉さんは思い出したように言って賛同する。


「んじゃ、みんなに伝えた後に宿を探そうか」

「分かりました」


俺はお姉さんに予定を告げた後に馬車を降りて隊長達を集めてから指示を出し、お姉さんと共にこの前泊まっていた宿屋へと向かう。


「…団長。ちょっといいかい？」

「ん？」


すると歩いている途中で女性が駆け寄って来て話しかけて来た。


「あたしは陛下から受けた依頼の報告があるから少しの間離れる事になるんだけど…」

「ああ、大丈夫大丈夫。行って来ていいよ」

「…助かるよ。ありがとう。じゃ、行ってくる」


女性は許可でも取るように用件を告げるので俺が軽いノリで返すとホッとしたように笑ってお礼を言い、城へと向かって歩いて行く。