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青年期 129

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「…んで、『鍵』ってのは?」

「『大いなる力』を手に入れるために必要なんだと」

「「『大いなる力』?」」


俺が別の疑問を聞くと男の一人がふんわりとした事を言い、俺とお姉さんの怪訝に思いながらの反応が被る。


「俺達も詳しくは知らないんだが…なんでもソレを手に入れるとこの国どころか周辺諸国…世界すらも支配出来ると言い伝えられているらしい」

「なんだその胡散臭い話は…そのなんとか公ってのはそんなのを本当に信じてるわけ?」

「ああ」

「その馬鹿げた伝説のような言い伝えを信じてくだらない計画を推し進めた。…そして権力や発言力があるだけにそれを誰も止められないってのがまた厄介でな…」


男の返答に俺が呆れながら返すと他の男も呆れたように肯定し、別の男も呆れながら話す。


「じゃあ人質ってのは?」

「その大いなる力が嘘だった場合の保険だ」

「次期国王の後継者は穏健派だからな。今の内に捕まえて洗脳という名の教育でも施そうとしてるんだろ」

「…ほおー、ただ馬鹿なだけの夢想家だと思ってたら案外現実主義者なのか。しかも意外と頭も回る」


俺が最後の疑問を聞くと男の一人が答え、別の男が説明するので俺はそのなんとか公に対する認識を改める事に。


「…でもなんで私達にその話を?」

「お前らが聞いて来たんだろうが」


お姉さんの不思議そうな疑問に男の一人がツッコミを入れるように返す。


「しかし詳しいね。その鍵やら人質とやらに関わってるの?」

「ああ。…そこでモノは相談なんだが…俺達の仕事を手伝ってくれないか?」


俺が弄るように茶化す感じの軽いノリで聞くと男の一人に普通に肯定され、気まずそうな感じで頼み事をしてきた。


「…内容によるかな。あと犯罪系は後が面倒だから絶対に協力しないよ」


俺は判断を保留するように言って先に釘を刺すように告げる。


「今回は悪どい仕事では無い。逆に人道的な案件だ」

「次期国王候補の奴を、過激派の連中に人質に取られる前にこの町から逃すための協力をして欲しい」


男の一人が否定すると別の男が内容を話してきた。


「へー、じゃあ穏健派からの依頼って事?」

「ああ。そうだ」

「まあそれならいいかな。で、俺らは何をすればいいの?」

「…この依頼を受けてくれ」


俺の問いに男の一人が肯定し、了承して尋ねると別の男が一枚の紙を見せてくる。


「…今から兵を集めてんの?遅くない?」

「『穏健派』だからな。行動がワンテンポ遅れるのもしょうがない」


兵士を募集する求人誌のような内容の紙を見て俺が聞くと男の一人が肩をすくめながら告げた。


「まあ仕事を受ける分には問題無いけど…」

「お前達が敵の目を引いて気を逸らしてる隙に俺達が町の反対側から要人を連れて脱出する」

「その報酬がこの『仕事斡旋』って事?」

「そうしてくれると助かる。知っての通り俺達は裕福じゃないから金に余裕が無くてな」


俺が微妙な感じで言うと別の男が計画の詳細をを教えてくれ、俺の確認に困ったように笑いながら返した。


「一応困ってる人を助けるのもハンターの義務だし…分かった。協力するよ」

「そうか!助かるぜ!」

「俺達だけでも出来ない事は無いんだが…正直、途中で敵に気づかれて追われる可能性が高くて面倒でな」

「追っ手を倒しながら進むにも限度ある。敵が数を活かして攻めて来られると体力が持つか…」


俺の返答に男達は喜びながら自分達だけで計画を進めた場合の心配事や不安要素を話し始める。


「とりあえず俺は団員達に報告して仕事を受けて来るから、ソッチは脱出の準備を進めといて」

「分かった」

「頼んだぞ」

「…万が一、もし俺らが仕事を受けられなかった場合…ソッチ達が領主を説得するっていう保険も用意しといてね」

「…そうか…分かった。考えておこう」


俺が指示を出すと男達が了承し、ふと思いついた最悪の事態を予想して対策を取ると男の一人が顎に手を当てて考えながら了承した。


「んじゃ、行こうか」

「はい」

「…まさか本当に防衛戦になるとは…」

「過激派の名前に偽り無し、ですね」


俺はお姉さんと共に団員達の所へと向かい、途中で意外に思いながら呟くとお姉さんが困ったように笑いながら賛同する感じで言う。


「全くだ。自国民同士で争って何が楽しいんだか…でもそのおかげで俺らは食いっぱぐれが無いんだから皮肉なもんだよね…」

「あ、はは…」


俺が同意した後に呆れながら呟き、微妙な顔で自虐的に言うとお姉さんは反応に困ったように笑って返す。


「…お。いたいた…おーい」

「団長?どうした?なにかあったのか?」


城壁から離れて少し歩いてると団員の一人を発見し、俺が手を振りながら声をかけると不思議そうにこっちに来る。


「今領主が兵を集めてるみたいでもしかしたら俺ら傭兵団の出番が来るかも」

「お!やっぱりか!腕が鳴るぜ」

「とりあえず俺が領主んとこ行って仕事貰えるかどうか確認して来るから、みんなにソレを伝えてもらっていい?」

「分かった」

「よろしく」


俺の報告に団員は嬉しそうに指の骨を鳴らして笑うので指示を出してから一旦別れ、俺は領主の家へと向かった。
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