189 / 480
青年期 125
しおりを挟む
…その後、お姉さんが連れて来た治安部隊の人達に男の身柄を引き渡して俺らは観光を再開する。
「いやー、まさかならず者に囲まれるなんて思いもしなかった」
「全くですね。裏路地とか危なそうな場所には近づいてないのに絡まれるとは…」
「この国は意外と治安が良くないのかも…」
表通りに戻った後に俺が笑い話のように言うとお姉さんも賛同しながら返し、俺は今後の事を見据えながら考えを改めるように呟く。
「もしかしたらこの町だけかもしれませんよ?」
「だといいんだけど。まあ、用心するに越した事はないし」
お姉さんのフォローするような発言に俺は適当に流すように返した。
その夜。
「ん?」
夕飯を食べ終えて片付けをしていると部屋のドアがノックされる。
「はいはい」
俺がドアを開けると令嬢を誘拐しようとしていた刺客の一人であるおじさんが立っていて…
「こんばんは。今お時間よろしいですか?」
シルクハットのような帽子を取りながら挨拶すると確認を取ってきた。
「何か用?」
「少々お時間をいただきたいのですが…」
「分かった。ちょっと出かけてくるから片付けお願いしていい?」
「分かりました」
俺の問いにおじさんは場所を移すような目配せをしながら言うので俺はお姉さんに後片付けをお願いして部屋から出る。
「夜分遅く、急にすみません。昼間になにやら揉め事があったそうで」
「ああ。なに?逆恨みでの敵討ち?」
外に出るとおじさんが断りを入れるように謝って不穏な事を言い出し、俺はソレで察して確認するように聞く。
「まさか。お仕事ですよ。貴方とは一度戦ってみたかった事もあり、丁度良かったのでね」
「仕事、ねぇ…今の内に言っとくけど先生を誘拐とかしたら傭兵団を動かすからタダじゃ済まないよ?」
「『先生』?同室にいたあのお嬢さんの事ですか?ならば心配いりません。私が受けた依頼は貴方を痛めつけて倒す事で、誘拐は関与しておりませんので」
私の仲間達も関与していませんよ。と、おじさんは他の4人への疑いも晴らすように告げた。
「そう?でもやるとしても今は気軽に外に出れる状況じゃないし…」
「はっはっは。貴方もやろうと思えば気軽に往き来できるでしょう?町の南側に行きましょう。そこならば兵士達の邪魔も入らない」
俺が安心しながら戦う場所について悩むとおじさんは笑って強引な提案をする。
「分かった。町の南側ね」
「ではお先に」
俺の了承に、おじさんは挨拶するように言って指定した場所へと走り出す。
「…俺がすっぽかしたらどうするつもりなんだ…?まあいいや」
俺は微妙な顔で呟きつつも気を取り直して一旦部屋の中へと戻った。
「お帰りなさい。早かったですね、何の用だったんですか?」
「なんか昼間のならず者から俺を倒すよう依頼を受けてこれから戦いたいんだと」
「え。坊ちゃんと…?」
お姉さんの問いに俺がおじさんの用件を教えるとお姉さんは驚いたように信じられない感じで呟く。
「…それはまた命知らずというか、なんというか…」
「…んじゃ、頼んだ」
「おう。頼んだぞ」
お姉さんが微妙な顔で呆れたようにまたしても呟くのをスルーして…
俺は変化魔法を使って分身し、分身の俺をおじさんの所へと向かわせる。
「…来ましたね」
分身の俺が南側の壁を乗り越えて歩いているとおじさんが声をかけてきた。
「ごめんごめん、待った?」
「いえ、全然」
分身の俺の気軽な感じでの待ち合わせ的な確認におじさんは帽子のツバを摘みながら否定する。
「念のためもう少し離れようか」
「ええ、分かりました。邪魔が入ると面倒ですから」
分身の俺が指差しながら提案するとおじさんも快諾するので町から更に離れた場所へと移動した。
「…これぐらい離れてれば邪魔は入らないでしょ…とりあえず確認するけど、一人でいいの?」
「ええ、そうです。みんな乗り気ではなく、 断っていたので…貴方の強さに興味が湧きました」
「俺も是非戦ってみたいと思っていたところだよ。丁度良かった」
分身の俺の確認におじさんは肯定して依頼を受けた理由を話し、分身の俺もおじさんの気持ちに賛同するように余裕を見せながら返す。
「ふ、ふふふ…お互い様、といったところですか…」
「…興味本位で聞くけど…依頼の報酬はいくらだったの?」
「共通金貨10枚でございます」
「…約100万って…やっす」
不敵に笑うおじさんにふとした疑問を尋ねると普通に教えてくれ、分身の俺は値段にガッカリしながら呟く。
「依頼を受けるだけで5枚、成功報酬の後払いで5枚なので妥当では?暗殺や殺害では無く、あくまで痛めつける事が目的ですし」
「そう?それでも安いと思うんだけどな…」
おじさんはフォローしてくれるように言うも分身の俺はあんまり納得できずに微妙な顔で呟いた。
「勝てずとも挑むだけで5枚は破格だと思いますが」
「うーん…まあそれもそうか。治療費だと考えればそんなものかな」
「ははは、これはなんともまた強気な」
おじさんの更なるフォローに分身の俺がギリギリでなんとか気持ちの帳尻を合わせるように納得するとおじさんは楽しそうに笑う。
「いやー、まさかならず者に囲まれるなんて思いもしなかった」
「全くですね。裏路地とか危なそうな場所には近づいてないのに絡まれるとは…」
「この国は意外と治安が良くないのかも…」
表通りに戻った後に俺が笑い話のように言うとお姉さんも賛同しながら返し、俺は今後の事を見据えながら考えを改めるように呟く。
「もしかしたらこの町だけかもしれませんよ?」
「だといいんだけど。まあ、用心するに越した事はないし」
お姉さんのフォローするような発言に俺は適当に流すように返した。
その夜。
「ん?」
夕飯を食べ終えて片付けをしていると部屋のドアがノックされる。
「はいはい」
俺がドアを開けると令嬢を誘拐しようとしていた刺客の一人であるおじさんが立っていて…
「こんばんは。今お時間よろしいですか?」
シルクハットのような帽子を取りながら挨拶すると確認を取ってきた。
「何か用?」
「少々お時間をいただきたいのですが…」
「分かった。ちょっと出かけてくるから片付けお願いしていい?」
「分かりました」
俺の問いにおじさんは場所を移すような目配せをしながら言うので俺はお姉さんに後片付けをお願いして部屋から出る。
「夜分遅く、急にすみません。昼間になにやら揉め事があったそうで」
「ああ。なに?逆恨みでの敵討ち?」
外に出るとおじさんが断りを入れるように謝って不穏な事を言い出し、俺はソレで察して確認するように聞く。
「まさか。お仕事ですよ。貴方とは一度戦ってみたかった事もあり、丁度良かったのでね」
「仕事、ねぇ…今の内に言っとくけど先生を誘拐とかしたら傭兵団を動かすからタダじゃ済まないよ?」
「『先生』?同室にいたあのお嬢さんの事ですか?ならば心配いりません。私が受けた依頼は貴方を痛めつけて倒す事で、誘拐は関与しておりませんので」
私の仲間達も関与していませんよ。と、おじさんは他の4人への疑いも晴らすように告げた。
「そう?でもやるとしても今は気軽に外に出れる状況じゃないし…」
「はっはっは。貴方もやろうと思えば気軽に往き来できるでしょう?町の南側に行きましょう。そこならば兵士達の邪魔も入らない」
俺が安心しながら戦う場所について悩むとおじさんは笑って強引な提案をする。
「分かった。町の南側ね」
「ではお先に」
俺の了承に、おじさんは挨拶するように言って指定した場所へと走り出す。
「…俺がすっぽかしたらどうするつもりなんだ…?まあいいや」
俺は微妙な顔で呟きつつも気を取り直して一旦部屋の中へと戻った。
「お帰りなさい。早かったですね、何の用だったんですか?」
「なんか昼間のならず者から俺を倒すよう依頼を受けてこれから戦いたいんだと」
「え。坊ちゃんと…?」
お姉さんの問いに俺がおじさんの用件を教えるとお姉さんは驚いたように信じられない感じで呟く。
「…それはまた命知らずというか、なんというか…」
「…んじゃ、頼んだ」
「おう。頼んだぞ」
お姉さんが微妙な顔で呆れたようにまたしても呟くのをスルーして…
俺は変化魔法を使って分身し、分身の俺をおじさんの所へと向かわせる。
「…来ましたね」
分身の俺が南側の壁を乗り越えて歩いているとおじさんが声をかけてきた。
「ごめんごめん、待った?」
「いえ、全然」
分身の俺の気軽な感じでの待ち合わせ的な確認におじさんは帽子のツバを摘みながら否定する。
「念のためもう少し離れようか」
「ええ、分かりました。邪魔が入ると面倒ですから」
分身の俺が指差しながら提案するとおじさんも快諾するので町から更に離れた場所へと移動した。
「…これぐらい離れてれば邪魔は入らないでしょ…とりあえず確認するけど、一人でいいの?」
「ええ、そうです。みんな乗り気ではなく、 断っていたので…貴方の強さに興味が湧きました」
「俺も是非戦ってみたいと思っていたところだよ。丁度良かった」
分身の俺の確認におじさんは肯定して依頼を受けた理由を話し、分身の俺もおじさんの気持ちに賛同するように余裕を見せながら返す。
「ふ、ふふふ…お互い様、といったところですか…」
「…興味本位で聞くけど…依頼の報酬はいくらだったの?」
「共通金貨10枚でございます」
「…約100万って…やっす」
不敵に笑うおじさんにふとした疑問を尋ねると普通に教えてくれ、分身の俺は値段にガッカリしながら呟く。
「依頼を受けるだけで5枚、成功報酬の後払いで5枚なので妥当では?暗殺や殺害では無く、あくまで痛めつける事が目的ですし」
「そう?それでも安いと思うんだけどな…」
おじさんはフォローしてくれるように言うも分身の俺はあんまり納得できずに微妙な顔で呟いた。
「勝てずとも挑むだけで5枚は破格だと思いますが」
「うーん…まあそれもそうか。治療費だと考えればそんなものかな」
「ははは、これはなんともまた強気な」
おじさんの更なるフォローに分身の俺がギリギリでなんとか気持ちの帳尻を合わせるように納得するとおじさんは楽しそうに笑う。
13
お気に入りに追加
866
あなたにおすすめの小説
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~
乃神レンガ
ファンタジー
謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。
二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。
更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。
それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。
異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。
しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。
国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。
果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。
現在毎日更新中。
※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる