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青年期 107

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「…ちょっと聞きたいんだけど、コレ全部使って延長しても一年?」

『いや、延長ならば半年だな。契約が切れた後ならば一年で再契約してやっても良いが』


俺が地面に置いてある魔石を指差しながら確認すると精霊王は否定するように返す。


「じゃあドラゴンと同じボスクラスの魔石ではどれくらい?」

『…なんと。先程のと同等の物をまだ所持しておるのか…!』

「まあね」

『ソレならば一つで一年…だな』


ワイバーンの魔石を取り出して見せながら尋ねると精霊王が驚き、延長期間を答えてくれる。


「…ふーむ…ドラゴンやワイバーンのボスクラスで一年か…だったらこの魔石だとどうなるの?」


…俺が考えながら呟き、現状では世界に三つしかない『厄災の龍』の魔石を取り出して尋ねると…


『な…!!』


精霊王が驚愕し、他の精霊達は驚愕し過ぎて唖然としたように絶句した。


『…そ…ソレは…!?』

「今んとこ世界で一番質の高い魔石。『厄災の龍』っていう化物だか怪物みたいに強いヤバい魔物のヤツで、なんでもコレを使うと一般の魔法使いでも水爆並みの威力を出せる…とかいうとんでもない代物」


ちなみに世界に三個しかない。と、俺はみんなにこのデカい魔石の事を説明する。


『…ま、まさか…こ、このような物が存在したとは…!』

「コレだと何年ぐらい延長出来る?10年?」

『…ここまでの質と量があれば最低でも50年は延長出来るだろう』

『…我々高位精霊だと150年ほどか…?なんたる存在感…』

『僕ら上位精霊でも最低120年は延長出来るよ…すごい…』


驚きながら唾を飲み込んで喉を鳴らす反応をする精霊王に尋ねると真剣に考えながら答え、鬼や美人さんも延長期間を告げた。


「じゃあ今の内に精霊王と延長しとこうか。どうせ50年もあればあと何個かは取れるだろうし」

『…了承した。対価と引き換えに契約期間を延長しよう』


俺の提案に精霊王はまたしても俺に指をさし、さっきみたいに俺を覆うほどの魔法陣が現れては直ぐに消える。


『…ふはは!ははは!ははははは!素晴らしい…!このような質の魔力は初めてだ!未だかつて味わった事の無い上質さ…!ここまで期待以上に満足がいく魔力などが世界に存在したとは…!我もまだまだ認識が甘かったか!』


…魔石が粒子状になって消えると精霊王が高笑いして上機嫌になり、俺より少し身長が高かったはずの姿が10m軽く超す大きさになった。


「…アレが本来の大きさ?」

『…いや、あの大きさは精霊王の満足度を示しているのだろう』

『…まさかあの精霊王を満足させられる人間がまだいたとは…』

『…貧弱で脆弱な人間も中々に奥深い存在じゃな…』


俺が精霊王を指差しながら聞くと鬼が否定するように答え、小人と女性が意外そうに呟く。


「…とりあえずコレで精霊王を使役出来るようになった…って事でいいの?」

『その認識で間違い無いだろう』

『…まさか高位精霊や妾ら上位だけではなく精霊王をも使役出来る人間がおるとはな…』

『僕の記憶上では精霊王以外の精霊とも契約を結べた人間は一人しか居ない。つまり今回が二人目だ』


俺の確認に鬼が肯定すると美女も驚きながら呟き、美人さんはよく分からない事を言い出す。


『愚物だと侮り愚弄して済まなかったな。許せ人間よ』


精霊王は元の大きさに戻ると上から目線で謝罪してくる。


「じゃあみんなこの精霊王をボコボコにしてくれ」

『『『『…は?』』』』


俺の指示にその場にいた精霊王を含む精霊達が呆気に取られたような反応をした。


「ケジメ、落とし前、みそぎ…ってヤツかな。コッチはちゃんと対価を持ってたのに出会い頭で上半身を消し飛ばされたんだから、それなりの報いは受けてもらわないと示しがつかないじゃん?」

『…仕方あるまい。我への折檻を許そう。さあ来るが良い』


俺が躾と仕返しの意味も込めて理由を話すと精霊王は納得するように呟き、精霊達に許可を出す。


が、精霊達は困惑した様子のまま動こうとしない。


「ボコボコに、って言ったけど一発ずつ叩くか殴るかすればいいよ。場所は顔でも腹でも肩でもお好きなように」

『顔だ。我の顔以外に触れるのは許さん。でなければ示しがつくまい』

「…まあ本人がそう言うんなら…」


…なので俺が行動に移しやすくするために言うも、精霊王が拒否するように場所を指定して命令するように返すので俺は微妙な顔で呟く。


『…精霊王の覚悟を無碍には出来ない…!えいっ!』

『…仕方あるまい…ふん!』

『…許されよ…えいっ!』


少女が意を決したように精霊王の顔にビンタをすると鬼がため息を吐いて殴り、女性も断りを入れてビンタする。


『じゃあ…えーい!』

『…お許し下され…ふん!』

『…どうやら覚悟を決めるしかないようだね…えい!』

『妾で最後か…はあっ!』


少年、小人、美人さん、美女と精霊王の顔を殴ったり叩いたりするが精霊王は腕を組んで目を瞑ったまま微動だにしなかった。


「…じゃあ最後にコレ。ケジメは付けたんだから面会の対価は受け取って貰わないとね」

『…そうだな』


俺が地面に置かれてる魔石を回収し、ゴブリンの魔石を差し出しながら告げると精霊王は肯定して受け取り…


その直後に魔石が粒子状になって消える。


『…ほお…面会の対価にしては少々対価が重い気がするが…自分で手を下さなかった無礼に免じれば釣り合うか』

「さーて、結構時間かかったなぁ…もしかしたら先に帰って来てるかも…」


俺は精霊王の呟きを無視して時間を確認しながら呟き、刺客の青年を担いでお嬢さんの家へと戻る事にした。
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