子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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青年期 101

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…その数時間後。


「…ん?」


女性を待つついでに…と俺が建物の屋根で瞑想をしていたら、もう日付が変わるっていうぐらいの時間に誰かが敷地内に侵入してきた。


「…魔物の感覚ってのは便利なもんだ…やっぱ野生は危機に敏感なのか?」


俺は立ち上がって呟きながら屋根から飛び降りる。


「…もしかして刺客の人?最後の一人だよね?」

「…ほう…護衛がまだ残っていたか…」


侵入者が建物に入る前に俺が声をかけながら尋ねると青年はビクッと驚いたように振り向くと意外そうに呟く。


「残念ながら今は俺しか居ないんだ。だからもしまだ刺客が他にもいるようならあと一人が帰って来るまで待っててくれない?」

「ははは。これはまた面白い事を…だが安心しろ。刺客は俺で最後だ」


他の奴らを逃してなければ、だがな。と、青年は俺の確認とお願いに笑いながら返す。


「そう?じゃあ移動しようか。ソッチだって邪魔が入るのは嫌でしょ?」

「断る…と言ったらどうする?」

「…しょうがない。流石にこんなトコでは遊べないから直ぐに終わらせる」

「…いいだろう。その強さに自信のある発言…多少は楽しめそうだ」


俺の提案に青年がニヤリと笑って聞くのでため息を吐きながら答えると青年は場所の移動に了承した。


「確かあと一人の刺客が南の方に行ったから…お互いに邪魔にならないよう俺らは北に行こうか」

「分かった。ついて来い」


俺が女性やおじさんが移動した方向を思い出しながら言うと青年は先を行くように直ぐに走り出す。


ーーーー


「…ここまで離れれば問題無いだろう。しかし護衛が対象から離れるとはな…他の刺客が来た場合はどうするんだ?」


王都から10分ほど離れた場所で止まった青年が面白そうに笑いながら尋ねる。


「どうもこうも拐われたら取り返しに行けばいいだけだよ。ちゃんと匂いで追えるようにアクセサリーを着けさせてるからね」

「…なるほど、対策済みか。しかし俺に勝つ前提での考えは改めるんだな」


俺の余裕の態度での返答に青年はニヤリと笑った後に表情と雰囲気をガラリと変えた。


「…ごめん。隙だらけ」

「なっ…!?」


青年が詠唱を始めると同時に俺は速攻で距離を詰め…


懐に入って胸を軽く手で押しながら注意すると青年は驚愕しながら急いでバックステップで後ろに下がる。


「たった一秒でも敵から集中を外すなんて油断し過ぎでしょ。俺じゃなきゃ今のでソッチ終わってたよ?」

「…ふ…ははは!強化魔法の使い手のくせに一撃で仕留めないとは愚かな!だが残念だったな!後悔しろ、今のが最初で最後のチャンスだ」


俺の呆れながらの説教に青年は笑い声を上げた後に勘違いして俺を馬鹿にしたような事を言って魔法を発動させた。


「ん…?」


すると地面に展開された魔法陣から少女が出てくる。


「行け!」

『おいで』

「え!?」


男が俺を指差して命令すると少女が何かを呼ぶように呟き…


今度は空中に魔法陣が展開されるとソコから妖精のような羽の生えた小人が10人ぐらい出てきた。


『きゃははは!』

「…なんだ…?」


そして妖精達は幼女のように無邪気に笑いながら俺を取り囲むように周りに集まってくる。


「おわっ!?」


…俺が不思議に思いながら妖精達の動きを見てると急に右腕が発火して火に包まれた。


『きゃははは!』

「…マジか」


妖精達が笑いながら俺の周りを回ると左腕、右足、左脚…と次々と身体の一部が発火していって直ぐに身体全体が一気に火に包まれる。


『ふふ…なーんだ、あっけなかったわね。私が動くまでもない』

「…様子を見た甲斐があったな…」


おそらく精霊であろう少女が全身火に包まれている俺を見て笑うので俺も笑いながら呟く。


「…なっ…!?」

『…どういうこと?』


全身燃えたまま俺が平然と歩いて青年に近づくとその様子を見た青年が驚愕し、精霊であろう少女は不思議そうな顔で首を傾げた。


「これでも日頃から鍛えているからね。今みたいに火に包まれるぐらいじゃ少し暑いサウナ程度でしかないんだ」

「…おい!」

『…魔法を使ってる様子もない…本当にただ平然と耐えてる…こんな人間もいたのね』


俺が笑いながら言うと青年は焦ったように退がりながら少女に命令するように声を荒げると、少女は現状を把握するように呟きながら意外そうな感じで驚く。


『…いいわ、私が相手してあげる』

「…精霊なんてこの前の本の記述でしか見た事ないからな…今まで聞いた事すら無い存在と戦えるなんてありがたいものだね」


少女の仕方無さげな感じの言い方に俺はラッキーと思いながら返す。


「…おっと」


少女が俺に向かって一歩踏み出すと俺の足下が赤くなり、すぐさまその場を離れると火柱が上がる。


「おおー…すげぇ…ん?」


無詠唱でコレか…と思いながら呟くと視界に入っていたハズの少女の姿が消えた。


「おおっと」

『…凄い反応…』


俺は一瞬で後ろに回り込まれた事に気づいて少女の張り手だか掌底だかを身体を捻って避けると少女が驚きながら呟く。


「…流石に燃えたままだとやり辛いな…」

『…魔力に動きがあった…けど、何が…?一体何を…?』


俺が変化魔法を使って部分変化で皮膚をゴーレムに変えて消火し、直ぐに解除すると少女は不思議そうに呟きながら怪しむような目を向けて首を傾げる。


「隙あり」

「っ!来い!」

『させない!』

「…あっつ!!」


その少女の様子を見て俺が青年に向かって走り出すと青年が焦りながら叫び、殴ろうとした俺の拳を一瞬で移動してきた少女が受け止め…


俺の手が焦げて煙が出るので俺は悲鳴に近い声を上げて距離を取るように離れた。
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