子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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青年期 93

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その後、おじさん達は周りに居た協会員達に指示を出して魔石や魔物素材を荷車に積ませ、階段横のスロープから地下倉庫の外に運ばせる。


…一応俺が外まで運ぶよう提案したが『本部までの輸送のため、重さに慣れさせないといけない』と言われたので廊下まで運ぶのを見守る事に。


「…さて、後は本部までの輸送だけだな」

「うむ。迅速に運ばねば何が起きるか…」

「「だが…」」


おじさん達は一仕事終えたかのように言うと俺を見ながら呟いた。


「今ならば密約に反せずに個人的な魔石の取引ができるはずだ!頼む、魔石を売ってくれ!」

「金も用意してある!是非とも魔石を売ってくれ!」

「いいですけど…この前売ってしまったので数は少なくなってますよ?」

「くっ…!やはりこの機会を逃すわけが無かったか…!」

「最悪一つでも構わん!売ってくれ!」


おじさん達の懇願するような頼み方に俺が断りを入れながら了承すると、結構厳つい感じのおじさんは王様を睨むように見ながら悔しがり…


やり手の起業家みたいな雰囲気のおじさんはそのまま催促する。


「分かりました。では近くの部屋で…」

「「本当か!」」


廊下で魔石の取引をするのもアレなので応接室のような近くの部屋に移動するとおじさん二人が興奮したように返事をしてついてきた。


「…これが今売却できる魔石ですね」

「…少ない数でこれか…」

「…二人で分けるにしても十分過ぎる量だな…」

「うむ。全て譲ってくれ」


そしてテーブルの上に魔石を置いて告げるとおじさん達は微妙な顔をしながらも買い占めを宣言する。


「…確かに。確認しました」

「ふふふ…!わざわざ来た甲斐があったというものだ…面倒臭がって拒否した奴の悔しがる顔が目に浮かぶ…はーっはっはっは!」


密約とやらでお姉さんが代金を確認すると結構厳つい感じのおじさんは魔石を手に取り、何故か声を上げて笑い出した。


…それから三日後。


「団長、依頼が来てるが…どうする?」

「依頼?珍しいな…用件は?」

「町までの商人の護衛だそうだ」


お姉さんとの観光中に団員が声をかけて来て確認してくるので俺が不思議に思いながら尋ねると依頼の内容を説明する。


「護衛か…誰か受ける人がいないか聞いてみて」

「いいのか?」

「うん。傭兵団の仕事を解禁しようか。ついでに隊長達を集めて来てくれない?」

「分かった」


俺の指示に団員が確認し、俺は肯定しながら更に指示を出すと団員は了承して走っていく。


「コッチに着いてからは傭兵としての仕事をしてないのによく依頼がありましたね」

「商人だから多分あの時都市に居たとか噂を聞いたとかそんな感じじゃない?」

「なるほど」


お姉さんも不思議そうな顔をしながら言い、俺が予想を話すと納得した。


「とりあえず傭兵団として活動するんなら短期とはいえ国に報告書を出さないと…後で事務員にお願いしとくか」

「税金の問題とかも出てきますからね…」

「将軍みたいに面倒な手続きは依頼主側でやって欲しいものだけど、一般庶民にソレを求めるのは無理だろうし…」


俺が一旦観光を切り上げるように言うとお姉さんは少し残念がりながら賛同し、俺はため息を吐きながら呟く。


…そして二日後。


「あ。猟兵隊の…ちょうど良かった」


王様に魔石を売った帰りに城の廊下で女性が声をかけてくる。


「夕方にでも行こうと思ってたんだけど、手間が省けたよ」

「何か用?」

「実は今日の夜に辺境伯の令嬢がこの王都に着く予定なんだけど…どうやら刺客が動いてるとかで護衛を頼みたいんだ。流石にあたし一人じゃ不測の事態に対応出来ないからね」


駆け寄ってきた女性に用件を聞くと仕事の依頼をしてきた。


「まあ金次第かな」

「ははは!金の心配なら要らないよ」

「じゃあ受ける」

「助かったよ。今回の刺客は相手も本腰を入れたのか、凄腕だという話もあるからね」


俺が金のポーズを取りながら言うと女性が笑って返し、俺の了承に安堵したように情報を話す。


「しっかし令嬢に刺客とは物騒な話だ」

「本当ですね」

「ザーラヌ辺境伯はガナンド辺境伯と双璧を成す『ドードルの大盾』だからね…他国からしたら娘を誘拐する事で優位性を確保したいのさ」


俺の肩をすくめながらの言葉にお姉さんが同意して女性は理由を予想する。


「なるほど…俺らの国の刺客が来ない事を祈るのみだな…自国民同士で争うのなんて虚しいだけだし」

「ははは!ラスタとの国境には面して無いからあり得ない。心配するだけ損だよ」 


俺が納得しながら最悪の展開を予想したが女性に笑い飛ばされてしまった。


「…だといいんだけど」

「じゃあ時間が来たら迎えに行くよ。どこの宿屋に泊まってるんだい?」

「あ、ホント。ありがたい…じゃあよろしく」

「はいよ。じゃ、また後で」


女性の確認に俺が今泊まってる宿屋の名刺を渡してお願いすると女性は受け取って手を振りながら歩いて行く。


「ザーラヌ辺境伯って言ってたっけ?領土はどこだろう?」

「書庫に行ってみますか?地図に載ってると思いますよ」

「…そだね、行ってみよう」


俺の疑問にお姉さんがそう提案するので俺は書庫に行って色々と調べてみる事に。


「…でもよく考えたら勝手に入って大丈夫?」

「一応入城許可は貰ってるから大丈夫だと思います。機密情報とかの類は書庫番が目を光らせてるでしょうし」

「それもそうか」


書庫に向かってる最中に少し不安になって聞くとお姉さんは予想を話し、俺は納得しながら返した。
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