子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

文字の大きさ
上 下
142 / 480

青年期 78

しおりを挟む
それから二日後。


空気中の魔素の濃度が上がるという気象現象『降魔』の時期が俺らの滞在してる町にも到来する。


「んじゃ、何かあったら頼むぞ」

「おう」

「頑張ってね~」

「うん。出来る事があるかどうか分からないけど…」


俺がダンジョンに移動する前に分身の俺に有事の際の対応について任せると、お姉さんが分身の自分を応援するように手を振り…


分身のお姉さんは困ったように笑いながら不安そうに返す。


「さて…」


出かける事を他の団員達にバレないように俺と分身のお姉さんは仮面を付けてフードを目深に被って急ぎ足で町から出た。


「…行くよ」

「はい」


そして俺は変化魔法でダチョウに変身し、並行変化させたスレイプニルの脚力で速度を上げて目当てのダンジョンへと急ぐ。


「ギシャー!」
「カアァ!」
「ヒャー!」


…ダンジョンの周りには中から出て来たゴブリンやコボルトなどの魔物が大量にいたが、今は見慣れた雑魚になど用は無いので無視してダンジョンの中へと入る。


「…さーて、珍しい魔物はいるかなー?」

「どうでしょう?」


降魔の時期のダンジョン内での最優先目標は『初見の魔物を探す事』なので、最初は魔物とは極力戦わずにダンジョンを下層まで進んで行く。





ーーーーーー





「…はぁ…金ピカのゴーレムしか居なかった…」

「純金のゴーレムって上位種ですよ?十分珍しいと思いますけど…」


…急いで最下層まで進んだ結果、最下層に上位種の魔物がいた…程度だったので俺がガッカリしながら呟くと分身のお姉さんは困ったように笑う。


「まあそうだけど…」

「それに魔石なんてまるっきり金の延べ棒みたいだったじゃないですか。紫と金色の混ざった光り方なんて初めて見ました」


俺の微妙な顔での呟きに分身のお姉さんは励ますような言い方で感想を告げた。


「うーん…俺はあんまり魔石に興味が無いからなぁ…それより魔法威力軽減の特性の方がありがたかったかな?」

「金色ゴーレムは下位種の普通のゴーレムとは逆に物理に弱いみたいですからね」

「しかも金だから火の属性魔法にも弱いけど…そこはしょうがないか」


俺が分身のお姉さんとは別の収穫あり的な事を言うと分身のお姉さんは魔物の情報を話し、俺はその欠点に目を瞑るように呟く。


「ミスリルのゴーレムなら魔法を無効化する特性を持ってるらしいですよ」

「…ミスリルか…明日行く予定の上級者向けのダンジョンにいるといいんだけど…」

「そうですね」


分身のお姉さんの情報に俺は明日の事を思い浮かべながら呟いていつも通りの修行をしながらダンジョンを戻る事に。



…その翌日。



俺は昨日より予定通り分身のお姉さんと上級者向けのダンジョンへと向かった。


「…ココにミスリルのゴーレムがいてくれたら良いんだけどなぁ…」

「…どうでしょう?ミスリルのゴーレムって希少みたいですから…」


とりあえず町から一番近いダンジョンに入りながら俺が呟くと分身のお姉さんは困ったように笑いながら難しそうな感じで返す。


「…おっ!」

「あれは…」


…上級者向けのダンジョンを急いで降りていると第五階層でオーガがコボルトを捕食するという珍しい光景に遭遇。


魔物同士の『共食い』は降魔の時期でも中々お目にかかれない激レアな現象なので、俺と分身のお姉さんはその場に留まってオーガの行動を見守る。


「グフッグフッ」

「おおっ!」

「あの光は…!」


周辺のコボルトを5体ほど食い荒らしたオーガの身体が光り…


身体が一回り大きく、角や腕も太くなって肌の色も赤から赤黒く変化して上位種に進化した。


「魔物の進化なんて久しぶりに見た…」

「『オーグル』になってますね。『ハイオーガ』とも言われてますが」

「…このまま放って置けばグランドまでいくかな…?…あ」


俺の呟きに分身のお姉さんは魔物の名前を告げてきて、俺が最上種まで進化させようかと悩んでいると魔物がコッチに気づく。


「ガアアア!!」

「…しょうがない。逃げながら待つのも面倒だし、倒すか」

「ああ…もったいない…」


魔物が大声で吠えながらコッチに近づいてくるので俺がため息を吐いて決断すると分身のお姉さんは未練がましく呟いた。


「もしかしたら下層にもいるかもしれないよ?」

「…そうですね…」


俺のフォローに分身のお姉さんは諦めるように呟いて返す。


「ガファ!」

「おっと」

「グ…!グ…!」


魔物が力士のぶちかましのように角を突き刺そうとするタックルをかましてくるので俺は角を両手で掴んで止める。


「…この体勢だとブレーンバスターとかプロレス技を仕掛けたくなるが…っと。…えい」

「グ、ガッ…!」


俺はボソッと呟いてジャンプし、魔物の角に振り上げられるように背後に回って背中から心臓抜きをして魔物を倒した。


「さーて、次行こうか」

「はい」


…降魔の時期のおかげで普段よりも大きくて質の高い魔石を分身のお姉さんに渡し、俺はダンジョンの最下層に向かって進む。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

【幸せスキル】は蜜の味 ハイハイしてたらレベルアップ

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアーリー 不慮な事故で死んでしまった僕は転生することになりました 今度は幸せになってほしいという事でチートな能力を神様から授った まさかの転生という事でチートを駆使して暮らしていきたいと思います ーーーー 間違い召喚3巻発売記念として投稿いたします アーリーは間違い召喚と同じ時期に生まれた作品です 読んでいただけると嬉しいです 23話で一時終了となります

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

処理中です...