子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題！

青年期 48

「…そう言えば…あれから予約していた飲食店には行けました？」

「ああ。流石に材料が材料なだけあってとても美味な料理ばかりだったな。食べ終えた後に直ぐ次の予約を入れたものだ」


自室に着いた後に俺が昼飯を作ろうとしてふと思い出した事を尋ねると青年は肯定した後に感想を言う。


「ありがとうございます」

「俺が行った時は君の妹も厨房に入っていたぞ。後から聞いた話ではどうやら普段は居ないらしく、かなり運が良かったようだ」


俺がお礼を言うと青年は意外な事を言い出した。


「リーゼが？という事は…夏休みに入った頃か…もしかして一月ほど前ですか？」

「そうだ。まさか子爵令嬢が直接料理をするなんて驚いたが…しかし君から教わったと聞いて直ぐに納得した」


俺は少し驚いて聞き返した後に時期を予想して尋ねると青年は笑いながら話す。


「確かに弟と妹には自分の持つ技術のほとんどを教えはしましたが…料理の腕は今やもう自分よりも上かもしれません」

「ははは、師はいずれ弟子に越される運命なのだ。そこは仕方あるまい」

「…そうですね。おっしゃる通りです」


俺が自虐的な感じで謙遜するように言うと青年が楽しそうに笑うので俺は少し寂しさを感じながら笑い返した。


「…ん？待て。今弟と言ったか？まさか嫡男も料理が出来るのか？」

「はい。お菓子やデザートを作らせたら自分とほぼ同等に近く、妹よりも腕は上になります」

「エーデル様のケーキやクッキー凄く美味しいですよね。坊ちゃんが作るのとほとんど遜色ないぐらいの味ですし」

「…俺は何倍も努力してるのに暇つぶしの片手間で追いつかれるって結構クるものがあるよ…」


青年の驚いたような確認に俺がそう返すとお姉さんが弟を褒め出し、俺は弟や妹の要領の良さや才能に嫉妬しながら呟く。


「それは…まあ…」

「…ところで…飲食店ではどんな料理が出ました？」


お姉さんが困ったように笑いながら言い淀み、俺はため息を吐きたかったが辺境伯の手前我慢して飲み込んで話を戻して尋ねる。


「コース料理だったぞ。まさか突き出しから目当ての生肉が出てくるとは思いもしなかった」

「なるほど…多分生肉ではなく燻製肉を薄切りしたヤツだと思います。レモンのタレが付いてましたよね？」

「ああ。サッパリとして一口ではとても足りなかった」


俺は青年の話を聞いて予想し、確認すると肯定して料理の感想を告げた。


「…ソレって多分リーゼ様が作ったものでは？」

「だと思う。魔物の肉の加工は下手に触って失敗したらヤバイから料理人に高い技術があってもさせないだろうし、そもそも加工する時間もあるか分からないから出来ないハズ」


お姉さんも予想しながら聞いてくるので俺は父親の考えや予約状況を予想して肯定する。


「…というわけで昼食の一品目はタン塩レモンです」


俺は昼飯のメニューの一つを決めて空間魔法の施されたポーチから燻製肉と紙皿、包丁を取り出してテーブルの上に置いていき…


一枚の紙皿の上で燻製肉を薄切りにして三枚の紙皿に盛っていった。


「コレがタレですね。使うかどうかはお好みでお願いします」

「なんと…！あの突き出しとして出て来たモノをこんなに…！？いいのか！？」


俺がレモンのタレが入ってる小瓶をテーブルの上に置いて判断を委ねると青年が驚きながら俺を見て確認する。


「使ってる肉の種類が同じとは限りませんので、多少の味の違いにはご容赦を」

「では早速…！…うむ、美味い」


俺のクレーム対策の断りに青年は何も言わずに薄切りを食べると満足そうに頷く。


「コレは熊肉の燻製でして…お酒のつまみとして食べられているみたいですね」

「そうなのか。だがあいにくと俺は酒を飲まんのでな。いつ敵と戦う事になるか分からん以上飲めんのだ」

「ではジュースはどうでしょう？一応お酒に寄せてはいますが、寄せてるだけなので『お酒のようだけどあくまでジュース』といった味です」

「ほう？いただこう」


俺が軽く料理の説明をすると断るように理由を話すので、代わりの飲み物を提案すると興味深そうな顔で受け入れた。


「…美味い。ただ甘いだけではなくほんのりとした酸味が良い味わいを出している」


青年はグラスに注がれたジュースを飲むと意外そうに感想を告げる。


「コレはどこで手に入れたものなのだ？」

「えーと…自家製ブレンド…になるんですかね？一応市販のものをただ混ぜただけなので自分で作ったわけでは無いですけど…」


青年の問いに俺は言い方を考えながら答えた後に誤解されないように若干の訂正をした。