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青年期 46

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それから更に数ヶ月も経つ頃には拠点内に色んな施設が揃い、団員の数も1000人を超えた。


…流石にここまで人数が増えると管理するのが面倒なので、軍のように部隊を編成して知り合いのハンター達に管理をお願いする事に。


一応この傭兵団ではハンターのランクに関係無くみんな対等の関係で接するようにしているが、任務や仕事では軍とほぼ同じ。


おかげでただの知り合いの集まりだった『傭兵団』からマジで『民間軍事会社』になってしまった。


「…はー…」

「なにかあったんですか?ため息なんて吐いて」


俺のダンジョン内で周りを見ながらのため息にお姉さんが不思議そうに尋ねる。


「いや、もうどこのダンジョン行っても知り合いのハンターばっかだな…って」

「そりゃあこの国のハンターの大半は坊ちゃんの傭兵団の団員ですからね」


俺が微妙な感じの顔をしながら話すとお姉さんは不思議そうな表情のままツッコむように返す。


「軍のように部隊を編成したおかげで俺のやる事が無くなったじゃん?…まあ元から何もやる事なんて無かったんだけど…」

「どうしたんですか?急に」

「いや、別に俺が居なくてもいいんじゃないか…って思って。団員達はハンターの仕事やら傭兵団の仕事やらと毎日忙しそうなのに、俺は毎日鍛錬と修行の繰り返し…」


学生時代や子供の頃とほとんど変わらない毎日だし…と、俺は心配そうに聞いてきたお姉さんに自分でもよく分からないモヤモヤを話してみた。


「うーん…どうでしょう?確かに何も無い時は坊ちゃんは『傭兵団の団長』というよりも『傭兵団に支援してる後援者』って感じですけど…」


お姉さんは首を傾げながらも俺の意見に同意するかのように話し始める。


「やっぱりみんな坊ちゃん目当てで集まってるんですから居なくなられると傭兵団が早期に瓦解するのでは?」

「そうかな?」

「少なくとも私や魔法協会に所属してる人達は坊ちゃんについて行きますね」


多分坊ちゃんと仲の良い人達も抜けると思いますよ。と、お姉さんは笑顔で俺に反論するかのような意見を言う。


「…ま、お飾りでも居ないよりはマシか…ありがと」

「いえいえ」


ちょっとはスッキリしたので俺がお礼を言うとお姉さんは笑顔で謙遜するかのように返す。





ーーーーーー





「あ!団長!ちょうどいいところに!」


ダンジョンから帰還しようと来た道を戻っていると団員のハンターが声をかけてきた。


「ん?なにかあった?」

「その、回復アイテムが切れてしまって…後で返すんで貸してもらえません?」

「いくつ?」

「他のメンバーの分を含めて5つほど…」

「…はい。貰っていいよ」

「ありがとうございます!」


なにやら魔物に苦戦してるのか団員が困った様子でお願いしてくるので、俺が渡した後に返却を断ると慣れたようにお礼を言って頭を下げる。



その翌日。



「団長。聞きました?最近ソバルツがまた国境付近に軍を展開してるらしいですよ」

「え、ほんと?」


いつものように暇つぶしに鍛錬するため、移動していると団員の一人が駆け寄ってきて声をかけてきた。


「あくまで噂ですが」

「うーん…意外と早かったな…いや、あと数ヶ月でアレから一年ぐらいになるから意外と空いた方か…?」

「もしかしたらこの前とは違う人が指揮を執ってるかもしれませんね」

「ああ、なるほど。そういう事もあるのか」


団員の発言に俺が考えながら呟くとお姉さんが予想し、俺は納得して返す。


「ま、なんにせよ危なくなったら依頼が来るでしょ」

「今回は前回と違って南方騎士団がいますから…どうでしょう?」

「確かに騎士団だけで戦力的には十分だし、俺らの出番は無いかも」


俺が楽観的に返すとお姉さんは微妙な感じで笑いながら見通しの甘さを指摘するように言うので、俺もその意見に賛同する。


「またまた。前回は団長の指揮で敵を撃退したと聞きましたよ」

「あの時はたまたまだよ。人材不足だったから俺が選ばれただけで、その時に騎士団がいればそもそも押し込まれる事も無かっただろうし」

「でも騎士団の不在を狙って侵攻に踏み切った可能性もありますよ?」


団員の笑いながらの発言に俺が謙遜しながら当時の事を話すと…お姉さんは前回の敵の狙いを予想するかのように言う。


「うーん…そう考えると今回は騎士団がいても勝てるって腹づもりで来てるのか…?ただの牽制の可能性もあるけど…」

「ソバルツの騎士団が来てるという話は聞いてませんので、もしかしたら威嚇とかの可能性もありますよ」

「じゃあそのまま睨み合いだけで終わってくれたら助かるんだけど」

「ははは!確かに。では」


俺が疑問を呟くと団員が予想するように話すのでボケるように返すと団員は笑った後に別れの挨拶をして歩いて行く。
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