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青年期 36

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…そしてお互いに一騎打ちの勝利、敗北の条件を記した書面にサインしての昼頃。


「撤退の準備は済みましたか?」

「そちらこそ。今の内に城塞に引き上げた方が良いんじゃないか?」


一番目の砦の前で敵兵達が一定の距離を置いて俺らを取り囲むようにしてる中…


俺が余裕の態度で確認すると、騎士の鎧兜を身にまとった男性も余裕の態度で確認し返す。


「ははは。馬に乗らなくても良いんですか?」

「必要無い。貴殿が相手だと逆に不利になるようだからな」


俺の笑いながらの問いに男性はこの前一騎打ちで負けた人から話を聞いたのか意外な返答をする。


「へぇ?まあコッチとしては馬に対処する手間が省けるのでありがたいですが」

「…そろそろ始めようか」

「いつでもどうぞ」


俺が牽制するように返すと男性が開始を促しながら剣を構えるので俺は先手を譲った。


「行くぞ!…はあっ!」

「おっと」


男性の距離を詰めての袈裟斬りを俺はギリギリを見極め、少し後ろに下がって避ける。


「ふっ!」

「ていっ」

「ぐっ…!っ…!」


続く切り上げを最小限の動きで避け、鉄の棒でがら空きの胴を突くと少し前のめりになったので…


いつも通り兜の上から頭を叩いて気絶させた。


「いえーい!俺の勝利だ!」

「次は俺だ!」


俺が男性の剣を拾って掲げるように勝負の結果を叫ぶとザワつく敵兵の中から一人の男が飛び出して来る。


「ん?別にいいけど…俺が勝ったらどうするの?」

「俺の部隊を撤退させてやる!」

「…いや、この人に勝った時点で全軍武装解除しての撤退が決まったんだから意味無いじゃん」


俺の確認に男は意味不明な事を言い出すので俺は呆れながら返した。


「ぐっ…!逃げる気か!」

「逃げるのはソッチでしょ。さっさと武器と防具を捨てて投降してくれよ」


男が痛い所を突かれたかのような反応をした後に拙い挑発をしてくるので俺は流すように催促する。


「くっ…!覚えていろ!この屈辱…いずれ必ず晴らすからな!」

「はいはい、また次の機会にね。それまでしっかり腕を磨いておくんだね」


男は悔しそうに叫びながらもしっかり防具を外して地面に投げ捨てた。


そして敵兵を包囲してた味方の兵達が来ると敵兵達は観念したかのように武器を投げ、防具も外して地面に落とす。


「…う……負けたのか…?」

「俺が勝ちました。惜しかったですね」


すると男性が目を覚まし…周りの状況を見て呟くように聞くので俺は結果を答える。


「まあ再戦したければいつでも遊びに来て下さい」

「ふっ…『遊びに』か…次の機会までは時間が空きそうだがな」

「軍で攻めて来いって言ってんじゃないよ。個人的に来いや」


俺の社交辞令に男性が勘違いしたように言うので俺は思わずタメ口でツッコミを入れてしまった。


「ははは!一軍の将ともあろうお方が若者に振り回されるとはな!」

「待ってろよ!国に帰還したら直ぐに戻って来るからな!」

「はいはい、首を洗って待ってますよ」

「愚か者め。これから事後処理で忙しくなるというのにそんな暇があると思うか」


その様子を見ていた青年が楽しそうに笑うと男が俺を指差しながら宣言するので適当に流すと男性が男に注意する。


「で、ですが…!」

「しばらくは腕を磨く事に専念しろ。少なくとも俺に勝てない腕で俺が負けた相手に勝てるとでも思っているのか」

「…分かりました」


食い下がるような男に男性が説教をかますと男はうなだれて大人しくなった。


「さて…では連れて行きます」

「ああ」


流石に数万の人数ともなると一気に連れては行けないので…


複数回に分けて三番目の砦の向こう側へと送る事にして最初に俺ら傭兵部隊と正規兵達で非武装の兵達を連れて行く。





ーーーーーー





「…はー…やっと終わった…」

「意外と時間がかかるものだな」

「全くだね…もう僕お腹空いてきちゃったよ…」



…辺りも暗くなり始めた時間帯。



そろそろ夕飯の時間といった頃に投降兵全員の解放が終わったので、俺が疲れたように呟くと知り合いのハンター達も同意した。


「じゃあ後は正規兵と騎士団に任せて俺らは城塞に戻りますか」

「そうだな」

「もう俺達の出番は無さそうだ」


俺の提案に知り合いのハンター達が賛同するので一応青年の許可を得て傭兵のみんなと城塞へと帰還する。
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