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青年期 33

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「あ、グリーズベアーの肉なら持ってるよ」

「「なにっ!?」」


俺の発言に青年と男性が同時に驚くので…


「引き渡す予定の投降兵達を連れて全軍撤退してくれるならあげてもいいけど」

「馬鹿な!そんな個人的な利益のために軍を引くなど…」

「今ならバイソンとアラジカの肉もセットで付けちゃうよ?」

「なんだと!?…ぐっ…!」


俺が交渉するように言うと当然直ぐに拒否られたが、通販番組のようにおまけを追加したら男性は更に驚いて目を強くつぶり悩み出す。


「…ダメだダメだ!ここで己の私欲に負けてしまっては戦場に散っていった兵達が浮かばれん!」


男性は首を振って欲を振り払うように叫んで交渉を拒否る。


「あらー残念。結局戦場で雌雄を決するしか無いってワケね」

「…ココに長居すると迷いに侵される…戦場では迷う者は真っ先に死ぬ。ではこれで失礼する」


俺が笑いながら弄るように言うと男性は苦虫を噛み潰したような顔で呟き、青年にポーズを取りながら挨拶して戻って行った。


「…あーあ、残念…楽に早く終わると思ったのに…」

「ははは!アレで本当に軍を引かせていれば前代未聞だぞ。敵司令官に賄賂を渡して撤退するよう交渉するとは本当に面白い」


俺のため息を吐きながらの呟きを聞いた青年は楽しそうに笑いながら言う。


「…ふう。美味い物を食べれたし、面白い物も見れた…では俺はこれより城塞に戻り、騎士団を率いて奇襲作戦に移る」

「よろしくお願いします」


青年は笑いが収まると行動を報告してくるので俺も三番目の砦へと向かって作戦の準備をする事に。



…そして二日後。



投降兵の引き渡しの日になり…5000名近い捕虜…投降兵達を引き取りに、敵の司令官が二番目の砦から一万近い軍勢を引き連れて一番目の砦へと移動を始める。


「…敵が動いたようだね」

「ああ。しかし本当に予想通りだな」

「それだけ挟み撃ちを警戒しているという事だろう」


伝達の兵からの報告を聞いた俺の発言に知り合いのハンター達はいつでも出撃が出来る状態を維持しながら返す。


「では出撃する!」

「「「おおー!!」」」


俺は号令をかけて傭兵正規兵合わせて6000名の兵達を引き連れて三番目の砦の裏から出て、二番目の砦へと向かった。


「城塞の方から狼煙が上がったらいよいよ本格的な攻城戦が始まるね」

「…そうだな」

「砦に入り切れない敵が外側にも布陣しているだろうからこの前のように簡単にはいかないはずだ」

「だが騎士団の奇襲が成功すれば…」


移動中に俺が軽く確認するように言うと知り合いのハンター達は改めて気を引き締めるように話す。


「でも騎士団が約5000で俺らが約6000…敵はどんなに多くても二万ぐらいだし、数の差的にはまだマシじゃない?」

「…いや、倍も差があるのはなかなかキツイぞ…」

「砦の制圧さえすれば勝ちだ。流石に敵も士気を失い投降するだろう」

「そう考えると実際に戦う事になるのは半分ぐらいかな?」

「それならなんとかなりそうだ」


俺の発言に男がなんとも言えない顔で呟くと他のハンター達は勝利条件を考えながら笑う。





ーーーーーー






「…おおー…侯爵の所を思い出すなぁ…」

「数で言えばアッチの半分以下か…あの時の1/3ぐらいだと思うと気持ちにも余裕が生まれてくるね」

「人数が少ない分、圧もあんまり感じないし」


二番目の砦の近くに着くと敵兵達が砦を守るように周りに布陣しているので、俺がそれを見ながら呟くと知り合いのハンター達は余裕そうに返す。


「…敵は二万も居なさそうだ。せいぜい一万と少しぐらいか」

「…とすると…敵の総戦力は三万とちょっとか…攻めて来た時は四万ぐらいって聞いてたのに一月ちょいで結構減ったなぁ…」

「いや、敵との交戦は二ヶ月以上も前の話だよ」


知り合いのハンターの言葉に俺が簡単な計算をしながら呟くと他のハンターが訂正を入れてくる。


「…そんなに前なんだ?」

「南の戦場も交戦が始まった時期は変わらん。一月以上も攻められ続け、あそこまで押し込まれていたのだから」


俺の問いに知り合いのハンターは当時の状況を説明してくれた。


「…一月以上も騎士団不在ってキツ…よく粘れたもんだ…」

「そんな状況をお前さんはたったの一週間でひっくり返したんだ。大したものだよ、本当に」

「まあ相手が勝勢だと思って油断してくれてたからね。一瞬の隙を突いて流れを掴んだらそのまま一気に…って感じ」


逆に短期決戦で決められなかったら危なかったかも。と、俺は男に当時の事を思い返しながら話す。


「…今回も同じか」

「そう。『勝って兜の緒を締めよ』って言葉もあるぐらいだし」

「…なるほど、確かに『勝った』と思えば心に一瞬の油断や隙、慢心が生まれる…」

「ソレを戒めるための言葉か。きっと戦場で生まれたのだろうな」


知り合いのハンターが腕を組んで考えるように言うので俺がそう教えるように返すと、他のハンター達は言葉の意味を理解して納得するように言う。


「…どこで知った言葉だっけ?…まあ多分ソレで合ってると思う」

「俺は今初めて聞いたな」

「僕も」

「同じく」

「…俺もだ。この国の言葉では無いかも知れん」

「じゃあもしかしたら文献とか本での知識だろうね。先人達の偉大なる知恵…か」


俺の思い出すような適当な発言に男が不思議そうに返すと他のハンター達も同意し、ハンターの一人が予想すると他のハンターの一人も賛同する。
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