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青年期 27

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…それから一時間後。


「よーし、行くぞー!」

「「「おおー!!」」」


知り合いのハンター達と色んな展開を想定して対策を立てたので俺は集まった傭兵達に合図を出して砦から出る。


「…やはり敵兵がいるか」

「狭い道での戦いとなると前衛達の消耗は避けられんな」


二番目の砦に向かって進むと予想通り狭い道に敵兵達がこれでもか、というぐらいギチギチに詰めて守りを固めるように防御陣形を取っていた。


「やーやー!我こそは二つの砦を制圧した傭兵部隊を率いる指揮官なり!南の戦場、ソバルツの敵兵達を撃退した我ら傭兵部隊の突撃を!こんな狭い道で食らえば逃走や撤退は間に合わず全滅は必至!命が惜しければ広い場所まで退がれ!10分、時間をくれてやる!」

「…なんだ?指揮官?」

「それより南の戦場から来たって…!」

「確か馬鹿みたいに単身名乗りを上げた奴がいた、って噂が…!アレは本当だったのか…!?」


俺が大声で名乗りを上げながら脅すと敵兵達がザワザワと騒がしくなる。


「…こんな狭い場所じゃ逃げ場もない!」

「一旦退がるべきじゃ…!」

「狼狽えるな!敵にこの堅固な守りは崩せん!」

「ですが後ろの方が…!」


敵兵達が軽いパニック状態に陥る中、部隊長だか指揮官だかが叱咤するが…奥の方の兵達は徐々に退がって行く。


「ちぃ…!臆病風に吹かれおって…!仕方ない!一時的に退くぞ!この先で包囲の陣を敷く!」


…どうやら俺の脅しは効いたらしく敵兵達が狭い道からどんどん後ろに退がり始めた。


「…まさかこんな効果があったとはな…!」

「流石だね。本当に名乗りを上げるだけで敵を退げるなんて」

「いや…多分狭い道で戦うよりも狭い道から出て来た俺らを包囲して潰した方が効率的って事に気付いただけじゃないかな?」

「…確かに真正面からぶつかるよりも包囲した方が有利だからな」


知り合いのハンター達が敵兵達の行動を見て驚くので俺は敵の考えを予想しながら返すと他のハンターも賛同する。


「まあ防衛という意味ではその方が相手にとっては圧倒的に有利だね。でも俺らは目的が違うから短期戦では俺らが圧倒的に有利だけど」

「…魔法が使えるから、か」

「そう。敵味方入り乱れる乱戦とかでは使えないし、兵達がぶつかる前でも前衛にいる精鋭の弓兵に魔法を使う前にヤられるから使えない」


俺が敵の考えに賛同しつつも自分達の有利を告げると男が理由を話すので俺は肯定しながら解説した。


「平原とかで敵に包囲されてる状態で突っ込むと魔法を使われるけど…幸いコッチは狭い道から突っ込んで行くから貴重な魔法使いや弓兵達は前衛にはいないハズだし」

「つまりコッチが魔法を使える数少ないチャンスだという事だな」

「そういう事。ある程度まで近づいたら入れ替わり立ち代わりで魔法をぶっ放した後に突っ込むよ!行くぞー!」

「「「おおー!!」」」


知り合いのハンター達と話してる間に敵兵達が狭い道から撤退したようなので俺は指示を告げた後に号令をかけて狭い道に入る。





ーーーーーー





「…よし!突撃ー!!」

「突撃ぃ!」

「突撃開始!」

「「「うおおー!」」」


俺らは出口付近で一旦止まり、属性魔法を使えるハンター達が正面の敵兵達に魔法を撃ち込み…


前衛後衛が入れ替わり立ち代わりで魔法を撃ち込みまくった後に俺が号令をかけて真っ先に敵陣へと突っ込んだ。


そして後ろの傭兵達が壁になって空けた隙間を維持するように敵兵達と交戦する。


「がっ…!」

「ぐっ…!」

「なっ…!」

「おおっと!居た!突破!防衛に入る!」

「側面に広がれ!」

「押し込まれるな!逆に押し込め!」


敵兵達を鉄の棒で叩いて気絶させながら進んで行くと味方の騎士と会ったので、俺は一旦その場で止まり…


直ぐに指示を出すと知り合いのハンター達が傭兵達に指示を出して脱出経路を作った。


「…やーやー!我こそは傭兵部隊を束ねる指揮官なり!ドードルの大将に一騎打ちを申し出る!このまま戦っても兵と時間を消耗するだけであろう!返答はいかに!」

「アイツは…!」

「名乗りを上げた…もしや!」

「味方が来たのか!?」


俺が息を吸って味方の騎士団に向かって大声で敵兵達の国の名前を出しながら名乗りを上げると、みんな味方の存在に気づいたのかコッチに近づいて来る。


「…アッチに道が!」

「よし!この包囲から脱出するチャンスだ!」

「早く逃げろ!長くは保たないぞ!」


騎士達が俺ら傭兵が命がけで切り開いた脱出経路を気づくので俺も壁の一員として敵兵を倒しながら命令した。


「すまない!感謝する!」

「やーやー!我こそは南の戦場にてソバルツの大将と一騎打ちで勝利し!かの軍勢を退けた司令官なるぞ!相手にとって不足はあるまい!」


騎士団達が逃げる時間を少しでも稼ごうと敵兵達の気をそらすために俺はまたしても大声で名乗りを上げる。


「なっ…!」

「そんな奴が…!」


…一応少しは効果があったらしく敵兵達は騎士団から俺へと注意を向けた。



そんなこんな波のように大量に押し寄せる敵兵をなんとか頑張って食い止め、脱出口を維持する事約20分。



「俺で最後だ!助かった!」

「よし!退がるぞ!しんがりは俺が務める!焦らずゆっくり後退だ!」


馬に乗った騎士がそう報告しながらお礼を言って馬を走らせて行くので俺は指示を出して少しずつ後ろに退がる。


「後退する!」

「後退!」


一番突出していた俺らから最初にジリジリと下がりながら知り合いのハンター達が傭兵達に指示を出して俺をしんがりとして順番に狭い道へと逃して行く。


「俺達で最後だ!」

「オッケー。ココは俺が食い止めるからちゃんと砦まで逃げ切れてるかの確認お願い」

「…大丈夫なのか?」

「大丈夫大丈夫」

「…分かった。死ぬなよ!」


傭兵達はみんな後退し、俺も狭い道まで戻って来たので…


俺は知り合いのハンターに指示を出して弁慶のごとく蓋をするように追撃の敵兵達をココで食い止める事に。
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