子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

文字の大きさ
上 下
68 / 480

青年期 4

しおりを挟む
「…ただいま」

「おかえりなさい。ちょうど昼食の時間よ」

「分かった」


廊下を歩いていた母親に挨拶すると食堂に行くよう促されたので俺は手を洗ってから行く事に。


「…お、意外と質素」

「無駄は好かん。必要最低限あれば十分だ」


食堂に行くとテーブルの上にはパンとシチューしか無かったので意外に思いながら言うと父親が理由を話す。


「…そう?ハンバーグでも焼こうかと思ったけど…要らないならいっか」

「「ハンバーグ?」」


俺が料理の追加を諦めながら椅子に座ると両親が不思議そうに聞いてくる。


「簡単に言えば肉の練り物だね」

「ほう…?エーデルやリーゼの言っていた料理か。興味深い…どれ、一つ作ってくれ」

「…分かった。じゃあ食べながら待ってて」


手を合わせて食事を始めようとしたら父親が興味を持って要求してくるので俺はスプーンを置いて厨房へと向かった。


…そして俺は厨房で空間魔法の施されたポーチから蓋のされたボウルを取り出し、フライパンに油を引いてタネを焼く。


「…はい」

「…ほう。食欲を誘う良い匂いじゃないか」

「早速いただきましょう」


焼いたハンバーグの乗った皿を父親と母親の前に置くと匂いを嗅いでナイフとフォークを手に取る。


「…!美味い!なんだコレは!」

「こんな料理が…!」

「まあバイソンの肉を使ってるからね。そりゃ美味いよ」


一口食べて驚く両親に俺は材料が特別である事を告げてパンをシチューに付けて食べた。


「『バイスォン』の肉だと!?…なるほど。美味いわけだ…」

「…もしかしてあの子達も毎日こんな料理を?」

「うん。昼食と夕食に」


父親が驚きながら納得すると母親が確認してくるので俺は肯定する。


「…通りでエーデルやリーゼが夕飯も食べずに早く戻りたがるわけね…」

「『学食は高いから自炊している』と聞いてはいたが、自炊の方が豪華で高級な食材を使っているとはなんとも面白い」

「実際自炊の方が食材費だけでいいから、かなり安上がりで済んでたんだけど」

「ははは!ソレがハンターの特権のいうやつか!」


母親の納得したような呟きに父親は笑いながら矛盾のような事を言い出すので俺が実態を告げると…


食事中だというのに珍しく声に出して笑い出す。


「普通なら手に入りませんものね。…それはそうと…このハンバーグはまだあるの?」

「お、気に入った?中にチーズを入れたのもあるよ」

「なんと!他にも種類があるというのか!?」


母親はおかわりを申し出るように確認してくるので俺が他の種類を教えると父親が驚く。


「パンに挟む、っていう食べ方もあるからね。紙に包めば携帯食にもなるし」

「…エーデルやリーゼから聞いてはいたけど…本当に料理も上手なのね」

「最初はそうでもなかったんだけどね。エーデルやリーゼに教えるために、って本を読んで勉強した」


俺がハンバーガーを教えると母親も驚きながら言うので俺は微妙に否定しながら料理の腕が上達した理由を話した。


「だから俺が作れる料理やお菓子のほとんどはエーデルやリーゼも同じように作れる」

「…そうか。お前達ならば万が一最悪の事態に陥り家が没落したとしても生活していけそうだな」

「もしそうなっても俺の稼ぎだけで家族を養うぐらいは出来るからエーデルやリーゼには父さんと一緒に再興を頑張って欲しいものだね」


俺の言葉を聞いて父親が自慢するように笑いながら言うので俺も笑いながら返す。


「ははは!言うようになったな!」

「あの状況からここまで立派に育ってくれて誇らしいですわね」

「全くだ。リデックに当主を譲れないのが悔しい限りだが…エーデルなら上手くやってくれるだろう」

「それで、ハンバーグは焼く?もういい?」

「「焼く!」」


両親共に嬉しそうに話し合うので俺が問うと二人とも食い気味に答える。


ので…俺は厨房に行ってチーズ入りのタネと普通のタネを焼き、パンを平たく切ってチーズが入ってないハンバーグをレタスやタマネギと一緒に挟んだ。


「…はい。パンの方は本当は手掴みで食べるんだけど…ナイフとフォークでも好きな方法で」

「ほう、手掴み。変わった食べ方だがやってみよう」


俺が両親の前に皿を二つずつおいて説明すると父親はパンを素手で掴んでかじりつく。


「…!コレは素晴らしい味だ!パンと肉と野菜の味のバランスが素晴らしい!」

「あなた。このチーズ入りの肉も素晴らしい味でしてよ!」

「うむ。この濃厚で重厚な味…満足感の高さも十分だ」

「…コレもエーデルとリーゼも作れるの?」


両親は料理の感想を話し始めるので俺は食堂から出て行こうかと考えていたら母親が確認してくる。


「うん。魔物の肉を使ってなくても美味しくできるよ」

「…学園が長期休みに入ったらリーゼに飲食店を任せてみるのもいいかもしれんな」

「そうですね。メニューを増やした方が繰り返し予約してもらえそうですもの」


俺の返答に父親が直営店の貴族用の飲食店の話をし始め、母親もその考えに賛同した。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

誰も要らないなら僕が貰いますが、よろしいでしょうか?

伊東 丘多
ファンタジー
ジャストキルでしか、手に入らないレアな石を取るために冒険します 小さな少年が、独自の方法でスキルアップをして強くなっていく。 そして、田舎の町から王都へ向かいます 登場人物の名前と色 グラン デディーリエ(義母の名字) 8才 若草色の髪 ブルーグリーンの目 アルフ 実父 アダマス 母 エンジュ ミライト 13才 グランの義理姉 桃色の髪 ブルーの瞳 ユーディア ミライト 17才 グランの義理姉 濃い赤紫の髪 ブルーの瞳 コンティ ミライト 7才 グランの義理の弟 フォンシル コンドーラル ベージュ 11才皇太子 ピーター サイマルト 近衛兵 皇太子付き アダマゼイン 魔王 目が透明 ガーゼル 魔王の側近 女の子 ジャスパー フロー  食堂宿の人 宝石の名前関係をもじってます。 色とかもあわせて。

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~

小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ) そこは、剣と魔法の世界だった。 2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。 新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・ 気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

処理中です...