子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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学生期 弐 25

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…それから数ヶ月後。


「おはようございます」


いつものように朝から修行場所で鍛錬してると、いつものようにお姉さんがやって来る。


「おはよう」

「坊ちゃん、コレ見て下さい」


俺が挨拶を返すとお姉さんは細いブレスレットを取り出した。


「なにこれ?ブレスレット?」

「違いますよー。最新の魔道具の試作品です」

「『魔道具』?」

「はい。昨日魔法協会の人が来て、研究の成果である試作品を坊ちゃんに渡してくれ…って」


俺の問いにお姉さんは否定しながら返すので俺が尋ねると理由と経緯を説明し始める。


「…なんで俺に?」

「魔石のお礼じゃないですか?あとこれからも魔石を確保し続けるための貢ぎ物とか」

「へー…なんに使うか分からないけど、タダで貰えるならありがたいね」


俺が不思議に思いながら聞くとお姉さんは笑顔で予想を話すので俺は喜んで魔道具とやらの試作品を受け取った。


「まあ魔道具って貴重で希少ですもんね。その試作品みたいに本物の魔石が使われてるヤツは特に」

「…そういや『魔道具が珍しくて貴重で希少』ってのは良く聞くけど実際見たのは初めてだな…」

「私だって魔石が使われてる物は初めて見ましたよ。普通なら魔偽石ですし」


お姉さんの羨ましそうな発言に俺がブレスレットを見ながら呟くとお姉さんも同意しながらよく分からない事を言う。


「…マギセキ?」

「魔石の代替品ですね、簡単に言うと。『偽物の魔石』という意味で『魔偽石』と呼ばれてます」

「へー、そんなのもあるんだ」

「はい。『魔鉱石』と呼ばれる魔力を吸収して蓄える性質がある鉱石を加工した物に魔力を込めると『魔偽石』になるとか」


俺が不思議に思いながら聞くとお姉さんは言葉の意味を説明した後に更に製造方法も教えてくれる。


「でも小さいのを一つ作るのにも一人分の魔力量を全て込めないといけない上に、品質は魔石の1/10程度まで近づいてようやく『凄い技術だ』と手放しで褒められるレベルですからね…」

「…最高品質でも1/10か…辛くない?」


オーケーポーズを取りながら物の大きさを表して説明するお姉さんに俺は微妙に思いながら聞く。


「しかもソレで魔石と同じ…もしくは少し高いぐらいの値段ですよ?なので基本的に研究で使われてるのは1/50から1/100の低品質の魔偽石ばかりですし」

「おおぅ…代替品のクセに本来の物と同じ値段を取るとは強気な…」

「魔石の唯一の代替品ですからね。手間もかかるだけに値段が高いのもしょうがない…とみんな割り切ってましたよ」


お姉さんの呆れたような説明に俺が軽く驚きながら返すと微妙な感じで笑いながらみんなは渋々受け入れてた事を話す。


「だから今出回ってる魔道具も全部魔偽石製なんです」

「なるほど。魔道具が希少なのはそういう背景があったからか…また一つ賢くなったなぁ…」


お姉さんが話を締めるように言うので俺は納得して、良い話が聞けた…と思いながら呟いた。


「そして今までの魔道具は数回使うと魔偽石が壊れるので使い捨てでしたが…なんと!最新の魔石を使った魔道具は魔力を溜める事で何度も繰り返し使えるとか!」

「へー。そうなんだ」

「ただし、回数を増やすのは魔石でしか出来ないみたいですね。人が魔力を込めると何故か一回使ったら壊れるそうです」

「ふーん…不思議だね。電圧の違いで壊れる電気製品みたいなものなのかな?」

「…?元々魔物と人では魔力の質とかの違いがある…とか言われてますから、多分そこらへんが関係してるんだと思いますよ」


お姉さんの説明と注意に俺が前世の記憶での知識で例えて納得すると、お姉さんも似たような理由を予想する。


「ちなみに回数は色で判断するらしく…えーと…『白』『黒』『灰』『紫』『藍』『土』『緑』『青』『黄』『赤』の順番らしいですね」


お姉さんは紙を取り出すと魔道具の使用回数についての説明を始めた。


「…なんでまたそんなややこしい事を?」

「魔石の色がそういう風に変わっていくからじゃないですか?」

「なるほどね…じゃあしょうがないか」


俺が呆れながら聞くとお姉さんが理由を予想しながら答えるので俺は納得しながら引き下がる。


「坊ちゃんのソレは緑色に発光してるので…4回まで使えるみたいですね」

「4回か…」

「確か…魔道具はゴブリンやゾンビの魔石で4回、スライムやコボルトの魔石で5回ほど回数が増える…と聞いたような…」


お姉さんは俺の持ってる魔道具の色を見て判断すると思い出すように魔石ごとの補充回数を呟く。


「ちょっとやってみようか。どうやるの?」

「魔石をくっつけるだけで良いらしいですよ」

「…おお!」


俺がゴブリンの魔石を取り出して聞くと簡単な方法を教えてくれたので…


実際に試してみると魔道具の魔石にゴブリンの魔石が吸い込まれるように消え、色が緑色から灰色に変わった。


「多分ゴブリンの魔石でも大きさで回数は変動するかもしれません。私も詳しくは分からないのですが…『最低でも4回以上』は確実だと思います」

「は~…そういや初心者用のゴブリンと上級者向けのゴブリンは魔石の大きさだけじゃなくて質も違うんだっけ?」

「はい。やっぱり魔素の濃度が高い所にいる魔物の魔石はそこらへんの魔物の魔石とは魔力の密度が全然違いますよ」


お姉さんの予想に俺が確認すると肯定した後に理由を話す。


「へー…で、この魔道具はなにに使うの?」

「確か…『切り上げ強化』の魔法が使えるようになる、って言ってたような…」

「…『切り上げ強化』?なにそれ?」


俺が魔道具を見ながら尋ねるとお姉さんは思い出すように魔道具の効果を呟き、俺は聞き慣れない言葉に不思議に思いながら問う。


「平均値以下の魔力持ちを引き上げるための強化魔法の基礎らしいですよ?魔力が平均値の半分以上あれば平均値にまで引き上げて、半分以下なら効果が無いとか」

「ふーん、四捨五入みたいな感じかな?」

「まああくまで底上げなので、私達みたいに平均以上の魔力を持ってる魔法使いには関係のない話なんですけどね」


お姉さんの説明に俺が数学の用語に当てはめて理解しようとするとお姉さんは笑いながら俺たちには無意味である事を告げた。


「…例えば魔力を使って平均値以下になった時に使ったら回復する?」

「いえ、あくまで器を一時的に大きくするような感じなので魔力は回復しないらしいです。が!魔力が一切減ってない状態だと器に応じて中身…魔力が増えるとかは聞きました」

「なるほど…回復には使えないのか…つまりは弱者のための救済措置って事かよ」


俺が確認すると否定して魔法の解説をするのでガッカリしながら呟くと…


「坊ちゃん、言い方悪いですよ。『戦力を増やすための賢者の知恵』と言って下さい」

「確かにそうだ。弱い魔力持ちを平均的にまで引っ張り上げようとする考えは賢者そのものだね」


お姉さんは困ったように笑いながら訂正を求めてくるので俺は同意して頷き、前言撤回するように訂正する。
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