子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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学生期 弐 14

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…初戦の相手、Dクラスはリーダーを29名で囲って完全な守備陣形を取りながら進んでいた。


なので蜂矢の先頭の3グループが突撃して道を開き、それと同時に強襲部隊が左右から攻めかかって包囲の形を取る中…


俺の前にいたグループが相手リーダー近くに攻め込んで周りの奴らと交戦し、後方の3人グループがリーダーに直接攻めかかりギブアップしたので勝利。


そして次戦、午後のAクラスはハンターのパーティのように4人一組で多少の連携は使って来たが…


8対4の闘いを繰り返し、闘いごとに数の差ですり潰すようにして勝利。


…その翌日の最終戦のCクラスは俺らのように軍事行動的な陣形を取ってきた。


けども所詮は真似事に過ぎず、統率が全然取れてなかったので…


強襲部隊が相手リーダーを背後から左右の挟み撃ちのように連携して攻めかかって倒し、本隊との交戦前に勝利。


…その二日後の一学年との試合は力の差もあり一時間とかからず余裕で勝利し…


午後の三学年との試合も指揮、統率力の差で俺らが5人ほど残り、多少の余裕を持って勝利した。


「いえーい!今年も優勝だぜー!」

「やっぱ先輩達は強かったな!あんなのとマトモに当たってたら勝ち目ねーわ!」

「これで二連覇だ!来年も優勝して不動の三連覇目指すぜ!」


全ての試合が終わった後、俺らは教室にお菓子やジュースを持ち込んで祝勝会を始める。


「今回もリデックのおかげだな!流石は貴族の長男なだけはあるぜ!」

「三学年にも貴族出身が居たらヤバかったかもな!」

「流石に貴族の家に産まれて一般クラスはねぇだろ!」

「じゃあリデックはなんだよ?」

「コイツ学校行きたくないってゴネたから一般クラスになったらしいぜ!」

「ははっ!だったな!まあなんにせよお前のおかげだよ!来月からの飯が楽しみだな!」


…クラス対抗戦で優勝したのがそんなに嬉しかったのはクラスメイト達は羽目を外してめっちゃ盛り上がっていた。



翌日。



「坊ちゃん、優勝おめでとうございます!見てましたよ!素晴らしい指揮でしたね!」


朝から修行場所で料理の本を読んで勉強してるとお姉さんがやって来て褒めてくる。


「ありがと。まあ訓練中のただの学生と現役ハンターの俺とでは、ね…」

「…坊ちゃんが普通に戦えば多分一般クラス全員対一人でも余裕で勝ちそうですもんね…」


俺がお礼を言いながら微妙な顔で差を話すとお姉さんも微妙な顔で例え話をしながら賛同した。


「まず努力の量が全然違うしなぁ…」

「今の坊ちゃんは単純に人の7倍ですから…」


俺の呟きにお姉さんは横を向いて分身である他の7人の俺が別の場所で素手同士、剣同士、槍同士で戦いながら弓での鍛錬もしてる様子を見ながら若干困った様子で呟く。


「やっぱり分身って効率的には反則級に便利ですね…本体の坊ちゃんが本読んでる間に実戦の経験値がどんどん溜まっていくんでしょう?」

「ん。分身だから死んでも問題無いし…どちらかが死ぬまで…俺自身が自分を殺すために死ぬ気で戦ってるわけだからね。技術の向上は凄まじいよ」

「それでいて分身が死ぬ度に経験や魔力は本体に戻るなんて羨ましい…!」

「ふふん。変化魔法を極めし者の特権だから。…まだ極みまでは程遠いけど」


お姉さんの確認に俺が説明しながら返すと嫉妬したように羨ましがるので…


俺は得意げにドヤ顔で笑いながら返し、直後に訂正するように呟いた。


「そう言えば…分身の時間制限とかは無いんですか?」

「無い。分身の俺が死ぬか、分身の俺自身が解除するか、本体の俺が解除するまでは永続的に活動出来る」


もちろん飲食睡眠は必要だけど。と、お姉さんの疑問に誤解を招かないようにちゃんと説明する。


「…傷が治らないとかは?」

「分身でも自然回復はちゃんとするから普通に俺と何一つ変わらないよ」

「ええー…反則的な出し得技じゃないですかー…私にも教えて下さいよー」


お姉さんが更に確認するように聞くので否定して返すと極技の性能にヒいたように呟き、拗ねたかのようにまたしても嫉妬みたいな事を言い出す。


「教えてもいいけど…それじゃ変化魔法を習得する事になるよ?」

「やっぱ止めときます。分身したい時は坊ちゃんに頼めば良いですし」


俺の確認にお姉さんは考える間もなく断って笑いながら俺に押し付けるような事を言った。


「一応何度も言ってるけど…俺が分身をかけたら俺しか戻せないからね?使い所はちゃんと考えてよ?」

「分かってますって」


俺が釘を刺すように注意するも多分お姉さんはちゃんと理解はしてないだろうな…って感じで笑いながら返事する。


…そして数日後。


「ん?」

「誰か来ましたわね」


寮の自室で夕食の準備をしてるとインターホンが鳴った。


「俺が出るよ」

「分かった」

「こんばんは。…君がリデック・ゼルハイト君だね?」


弟と妹にそう告げてドアを開けると教師が立っていて、挨拶すると俺を頭からつま先まで見てから尋ねる。


「はい、そうですけど…何かありました?」

「おめでとう、君は代表者に選ばれた。二週間後に始まる学校対抗戦の事は当然知ってるだろう?」

「はあ…ありがたいですけど…俺なんかで良かったんですか?」


俺の問いに教師が笑顔で祝うように報せて来るので俺はまさか選ばれるとは…と、困惑しながら確認した。


「理事長は君の指揮能力を高く評価したようだ。『団体戦ともなれば戦闘能力だけで勝てるほど甘くはない』と理事長は仰っていたよ」

「まあ、一応出来る限り頑張りはしますが…」

「それじゃあよろしく頼んだよ」


教師が選考理由を話すが俺は全然乗り気じゃないので歯切れ悪く返すも教師は期待の言葉をかけて帰って行く。


「凄いじゃないか、兄さん。この学校の代表だよ」

「流石はお兄様」

「うーん…相手に対するハンデのつもりか?絶対他の代表者達は俺の指示なんて聞かねぇだろ」


弟と妹は喜びながら褒めてくるが俺は思い通りには行かないだろうと予想しながら返す。


「まあ聞かないだろうね」

「特別クラスの人達は一般クラスを下に見てますもの」

「…まあそりゃ立場の差以上に実力の差が、な…特別クラスと対抗戦をするつもりなら一般クラスだと最低二組分の人数が居ないとまず試合の形にすらならないし」


弟と妹が俺の予想に賛同するので俺は自分のクラスと、引率経験のある同学年の特別クラスの戦力の差を比べながら話した。


「でも選ばれたからにはもしかしたらみんな兄さんの指示に従うかもよ?」

「…だといいんだがな」


弟の楽観的な発言に俺は貴族の坊ちゃん達のプライドの高さに不安を覚えながら返して夕飯の準備を再開する事に。
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