子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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学生期 14

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…それから5分もしない内にみんながダンジョンに入って行き…


「さて、行きましょうか。っとその前に」

「なんだ?」

「どうした?」


残りは俺達だけになったのでいざ入ろうとした時に俺が止まると、グループの男子生徒が怪訝そうな顔をして尋ねてくる。


「必要ないとは思いますが…念のために復習を。このダンジョンにはどんな魔物がいるか分かりますか?」

「第一階層にゴブリン、二階層にグール、三階層にコボルトでしょ」

「流石です。ではこれから我々が行く予定の第四階層にいる魔物は分かりますか?」

「馬鹿にしてるのか?オークとゴブリンとコボルトだろう」


俺の問いに紅一点の女子生徒が答えるので更に聞くと男子生徒がイラついたように答えた。


「ではそのオークの特徴は…」

「もういいだろう。俺達は今日初めてダンジョンに来た初心者じゃない。お前達と違って十数回も来ているベテランだ」

「…分かりました。では行きましょうか」


まだ復習が終わってないと言うのに男子生徒の一人が偉そうに割り込みながら言うので、俺はしょうがなく話を切り上げてダンジョン内へと入る事にした。


「このまま自由行動でみんなで考えながら先に進むのと、最短距離で第四階層まで突っ切るの…どちらが良いですか?」

「…最短距離で第四階層まで…だと?」

「そんな事が可能なのか?」


俺が生徒達に選択肢を提示すると男子生徒が不思議そうに確認してくる。


「はい。基本的にダンジョンの中にはハンター達が使うショートカットコースがあるんですよ。まあ未知や未踏、まだ探索中とかの例外のダンジョンは除いて…ですけど」


俺は本来なら学生には知り得ないし、そもそも教えてもらえないであろう情報を話した。


「…そんな便利なものが本当にあるのか?授業では聞いた事が無いぞ」

「でしょうね。ハンターの知り合いがいないと普通は知らないでしょうし」

「…まあ第四階層までショートカット出来るんならそれに越したことはない」

「そうね。移動時間を短縮できるならそのショートカットコースで行きましょう」


疑うような男子生徒に俺がそう返すと他の生徒達はショートカットコースを選択する。


「ただし、注意点が一つ」

「「「「注意点?」」」」

「下の階層へ進むためのショートカットはあっても、上の階層に戻るためのショートカットはありません。上の階層に戻る時は階段でしか戻れません」

 
俺は生徒達に勘違いされないよう念のため、戻るのは自力である事を事前に伝えた。


「…という事はまさか…?」

「お察し通り落とし穴で降ります。でもちゃんと下には安全に配慮されたクッションが敷かれてますので頭から相当変な落ち方をしない限り怪我をする事は無いです」

「…落とし穴…」


俺の説明でみんな察したような顔で一人が聞いてくるので肯定しながら安全性を教えるも女子生徒が悩むように呟く。


「別に無理にとは言いませんので、みなさんのペースで進みましょう」

「行きましょう!大丈夫です!気遣いは無用!」

「…では」


俺が配慮しながらフォローするも何故か女子生徒は強気な態度を取るので…


俺はグループの生徒達をショートカット用の落とし穴がある小部屋のような場所へと連れて行った。


「こちらの穴にジャンプすれば一気に第四階層ですよ。自分は先に行ってますね」

「「あ」」


ポッカリと空いてる穴を手で示しながら説明し、俺はグループの生徒達を安心させるために真っ先に飛び降りる。


ボフン!と俺が結構な高さと大きさのクッションに落下し、直ぐに離れると次々に生徒達が落ちて来た。


「…ううー…あれ?痛くない…?」


ボフン!ボフン!と生徒達が同じ場所に積み重なるように落ちて来たが、衝撃は全てクッションに吸収されているので怪我人はゼロ。


「早く退いてくれー…!」

「あっ!」


一番下になっている男子生徒が苦しそうに言うと一番上の女子生徒が焦ったように退いてクッションから降り、他の男子生徒達も降りてくる。


「では行きましょうか」

「ああ」

「そうだな」


4人全員がクッションの上から降りて来たので俺は合図をして生徒達に行動を促す。


「いた…!オークだ」

「チッ…でも周りにゴブリンが…」

「たった三体でしょ。素早く倒してオークに集中すれば良いじゃない」

「それもそうだ。じゃあ俺が突っ込む」

「危なくなったら迷わず躊躇わずに助けに呼んで下さいね。まあ咄嗟の時は勝手に介入しますけど」


生徒達が第四階層を注意深く歩いていると魔物を発見し、話し合って作戦を立てるので俺は一応注意して断りを入れた。


「行くぞ!」

「おう!」


まずは男子生徒が二人、先陣を切ってオークの周りにいるゴブリンに突っ込む。


「ギッ…!」

「ギィッ…!」

「「よし!」」

「おおー…やるなぁ」


二人はゴブリンを剣の一振り仕留めて手応えを感じたように言いながら一人はオークに、もう一人は最後のゴブリンへと向かう。


「グフッ、グフッ」

「チッ…!」


オークは袈裟斬りにされるも軽傷で済んだからか笑うように声を出し、男子生徒は直ぐに後退して距離を取る。


「ガッ…!!」


そして後ろで詠唱していた二人の魔法が当たると短い断末魔を上げて倒れた。


「よしっ!」

「やったわ!」

「意外と弱かったな!」


男子生徒達が喜ぶと残り一体のゴブリンも倒され、姿が消えて爪や牙といった素材が残る。


「この調子じゃ第五階層まで行けそうだ!」

「そうだな。上手く行けば第六階層まで進めるかもしれんぞ」


たかがオークを一体倒した程度で生徒達は調子に乗りながら話すが、俺は空気を呼んで黙ってついて行く。
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