子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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学生期 13

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…それから一週間後。


「リデック君、申し訳ないのですが、明日の午前中は早起きしてもらえないでしょうか?」

「え?いや、まあ出来ますけど…」


午後の授業が始まる前に珍しく担任が俺の席に来て確認するので俺は釘を刺しにか…?と、内心ビビりながら返事する。


「それで大変申し訳ないのですが…他のクラスの野外学習に引率として付いて行く事は出来ますか?どうやら人手が足りなくなってしまったようで…」

「ああ。それぐらいなら全然大丈夫ですよ」

「おー、リデックお前やるなぁ。他のクラスの引率頼まれるってすげーじゃん」


担任の困ったような顔での頼みを俺が快諾すると隣の席の男子生徒が感心しながらも弄るように言う。


「良かった…では朝7時に正門の前にお願いします。ああ、明日は一日出席になりますので、帰還したらこの教室には戻らずそのまま寮でお休み下さい」

「分かりました」

「うおーマジかー!羨ましー!」


担任が安心したような顔で呟いて予定を話すので俺が了承すると前の席の男子生徒が嫉妬したように叫び…


「ではこれから午後の授業を始めます」


担任は何事も無かったかのように教壇へと戻って授業を始めた。



…そして翌日。



俺が時間よりも少し早く正門の所に行くと既に数人の生徒がチラホラと居て…


「君がリデック君ですよね?」

「はい。先生に頼まれて来ました」


ソコで待ってると後から来た教師が確認してくるので肯定する。


「いやー、君は立派な生徒だ。他の生徒達も君を見習って欲しいものだが…おっと、とりあえず君は一般クラスだから知らないだろうし事前に説明しておくか」


まだ出発まで少し時間があるから。と、別の教師が俺を褒めながら思い出したように言う。


「特別クラスの野外学習には4人に一人、担当者である引率の教師がつく事になっている。なんせ貴族の子供の集まりだ…中には跡取りとかもいるからね、万が一の事があってはならない」

「なるほど」


教師の説明に俺は相槌を打ちながら話を聞く。


「多少の怪我ぐらいならお目こぼしを貰えるが、重傷や死亡…なんて万が一の事態が起こらないようにくれぐれも気をつけてくれ」

「分かりました」


教師は事情などを説明すると話の締めに釘を刺すように言ってくるので俺は了承した。


「…そろそろ時間だな。ではこれより野外学習を行う!ダンジョンに向かう馬車に乗ってくれ!」


続々と生徒達が集まってくると時計を見た教師が声を張り上げて指示を出し…


生徒達はみんな用意された馬車に乗り込んで行くので俺も教師と共に馬車に乗る。



…そして移動する事、約一時間。



この前とは別の初心者用のダンジョンへと到着した。


「ではグループに分かれてくれ」


教師達や俺が最後に馬車から降り、教師の一人が指示を出すも既に馬車に乗った時点からグループが作られていたのか…


集まっている生徒達は一人たりともその場から動かない。


「…では新しい引率者を紹介する。リデック君だ」

「よろしくお願いします」

「学生?」

「教師じゃないのか…?」

「学生が引率者だと?」


みんなの前で教師が俺を紹介するので挨拶して軽く頭を下げると生徒達がザワザワし始める。


「えー、彼は君たちの後輩ではあるが、今回は引率者としての立場になるので彼の指示をよく聞き、彼の指示通りに動くこと」

「もし引率者の指示を無視して事故が起きた場合には我々は責任が取れないので、万が一の事を考えると彼の指示が聞けない者を連れていくわけにはいかん。嫌なら彼と共にココに残る事になる」


教師の一人が話を続けると別の教師が生徒達に釘を刺すように注意した。


「なにか質問は?」

「ソイツの指示で危険な目に遭った場合は誰が責任を取るんだ?」

「無論我々だ。引率者の指示通り動いて危機に陥った場合は通常通り我々教師の落ち度となるからな」


教師が尋ねると生徒の一人が俺を見ながら聞き、教師は説明しながら答える。


「なぜ後輩が引率者に?」

「単に人手不足だからだ。心当たりがあるだろう?」

「でもなんで後輩なんだ?他にも教師はいるんじゃないのか?」

「人手不足と言ったばかりだが?ロドス教諭の推薦でもある」


生徒達は不満をぶつけるように質問を続けるが教師は慣れた様子で淡々と答えていく。


「他に質問は?…無いならこれよりダンジョン内へと入る。今回は第四階層が目標だが、進めるようなら第五階層まで進む事を許可しよう」

「引率者の指示をちゃんと聞いて無茶をしないように。リデック君、君になら言う必要は無いと思うが念のために言っておく…引き際を見誤らず、周りに助けを呼ぶのを躊躇わない事だ」

「分かりました」


教師が野外学習の内容を話すと他の教師が俺に注意するよう告げるので俺は頷いて了承した。


「ではこれより野外学習を開始する!」

「ではお先に」


教師の合図と共に4人一組のグループが教師と共にダンジョンの扉の中に入って階段を降りて行く。


「リデック君は最後のグループを頼む」

「分かりました」


…どうやら俺は最後のグループの担当のようなのでみんなの行動を見送りながら待つ事に。
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