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学生期 12

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そしてコボルトを倒し終わった後に俺達は担任教師と合流し、ダンジョンから出て馬車で学校へと帰還する。


「いやー、リデック君助かりました。流石は子爵家の長男だけはありますね。やはり人を束ねるのはお手の物ですか?」

「まあ…経験はありますから」


学校に着くと担任がお礼を言いながら褒めてくるので俺は複雑な気持ちになりながら笑って返す。


「やはり引率者が他にもいると負担が全然違いますよ。またお願いしてもよろしいですか?」

「はい。喜んで」


担任の確認に俺は後輩の面倒を見るのも先輩の務めだしな…と思いながら了承した。


「ではまた午後の授業で」

「はい」


もう昼飯の時間なので担任と別れて俺はいつもの修行場所へと向かう。


「あ。兄さん戻って来たんだ」


修行場所に着くと既に弟と妹が居て、斧で薪割りしてる最中の弟が俺に気づく。


「今さっき戻ってきた」

「初めての野外学習はどうだった?って聞いても兄さんからしたら新鮮味は薄いか」

「まあ新米ハンターの指導とかと変わらなかったからな。人数は多かったけど」

「え?兄さんは戦わなかったの?」


斧や薪を片付けながらの弟の問いに俺が焚き火を準備しながら話すと意外そうに確認してくる。


「俺が参加したら直ぐに終わってみんなの邪魔になるだけだし…今回は引率者としてクラスメイトの半分を担当して見守ってた」

「ふふっ、お兄様ったら本当に教師のよう」


昼飯の準備をしながら理由を話すと妹が口元を隠して上品に笑う。
 

「どちらかといえば教師というより指導者だな。おっとそうだ…リーゼにお土産があるぞ」

「お土産?」


俺は訂正するように返し、ふと思い出した事を告げるとキラキラした期待するような目で身を乗り出しながら聞いてきた。


「コレ。アルケニーの糸」

「!?『アルケニーの糸』!?ありがとうございます!お兄様!」

「…アルケニーの糸といえば最高級の布になる素材だよね?」

「ああ、偶然手に入ってな。もしかしたら俺達が行ったダンジョンの最下層にたまたまアルケニーが大量発生してたかもしれん」


ハンターと物々交換して手に入れた素材を差し出すと妹は興奮したように喜びながら受け取り、弟が驚きながら確認してくるので俺は肯定しながら予想する。


「でもよく手に入ったね?野外学習ってダンジョンの浅い階層だけじゃないの?」

「それがな、ちょうどハンター達と会ったんだ。それでそのハンター達がミノタウロスの角を欲しがってたから交換した」


確かリーゼが欲しがってたから…と、弟の疑問に俺は手に入れた経緯を説明した。


「なるほど…でもミノタウロスの角とアルケニーの糸じゃ全然釣り合わないんじゃない?本当に良かったの?」

「ダンジョン内での助け合いはハンターやシーカーの義務だ。困ってる人がいるなら助けるのが当然だろ?あと可愛い妹のためって事で」

「ありがとうございますお兄様!これでお母様と同じ素敵な服を作れます!」


弟が納得しながらもまた別の確認をするので、教えるように言った後にボケを挟むと妹が糸を手にはしゃぎながらお礼を言う。


「あー…そっか。母様も確か昔兄さんが取ってきたアルケニーの糸で服作ってたっけ」

「この糸を100%使った服は全女性の憧れですのよ!お母様なんて公爵夫人からも羨望の眼差しを向けられて糸の出所をしつこく聞かれてたぐらいでしたし!」

「へー、女性って大変だな」

「そうだね。僕らにはちょっと理解が追いつかないや」


弟の思い出したような呟きに妹が興奮しながら熱弁してくるので俺はどうでもいい…と思いながら弟に振ると、妹を見て困ったように笑いながら同意する。


「っと…そろそろか。はい」

「ありがとうございます」

「ありがと……にしても兄さんかなり料理上手くなったね…このミートシチュー食堂でも出せそうだよ」

「本当です。このバゲットとの相性が抜群で手が止まりません!」


俺が使い捨ての器にビーフシチューを入れて焚き火で焼いたパンを渡すと弟が褒めだして、妹もバクバク食べながら褒めてきた。


「そりゃ毎日料理してたら嫌でも上手くなるだろ」

「…そうかな…?僕でも出来るようになる?」

「私も?」

「なるなる。使い所があるかは分からんけど」


俺の返答に弟と妹が確認してくるので肯定しながら返し、ソレに意味があるのかどうかを聞くように補足する。


「「…確かに…」」

「…まあでも出来て損は無いだろうし…俺で良ければ教えるが?」

「「ぜひ!」」


俺が変化魔法を習い始めた時の老師の言葉を思い出しながら提案すると二人とも即答したので、とりあえず明日から基礎を教える事に。


…その後、昼飯を食べ終わった弟が妹を連れて戻って行くので…


俺は一旦図書館に寄ってから教室へと戻った。


「…お?リデックなんだその本?料理本?」


午後の授業が始まって担任の話を聞きながら料理本を見てると隣の席の男子生徒が不思議そうに聞いてくる。


「ん?ああ。ちょっと基礎知識とかを復習しとこうと思って」

「へー…意外だな。これから料理でも始めるのか?」

「ちょっとな。やっぱ毎日学食は懐が…」

「ははっ!自炊の方が安く済むからな!まさか…」

「そこ。静かに」

「…すみません」


俺が理由を話してボケると男子生徒が笑い、担任に注意されて謝った。
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