子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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少年期 2

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「ギ…?」

「さあ来い!」


ゴブリンに近づくと気づかれたので俺は柔道の構えのように腰を落として相手の出方を伺う。


「ギシャー!」

「甘い!」

「ギエッ…!」


ゴブリンが先手を取って真正面から距離を詰めてきて爪で引っ掻こうとするので、俺は手首を掴んで軽く足を払い…背負い投げの要領でゴブリンを地面に背中から叩きつけた。


「せい!」 


そして間髪入れずに倒れてるゴブリンの顔面に思いっきりパンチを入れると…


ゴブリンの顔が簡単に砕けて俺の拳が地面に当たる。


「坊ちゃん流石です!」

「やりますな…!」

「見事な体捌きでした」


ゴブリンの身体が消えて爪だけが残るとお姉さん達が拍手しながら褒めてくれた。


「コレは?」

「ソレはゴブリンの爪ですな。魔物は死ぬと身体が魔素に還りダンジョンへと吸収されます。ですがその過程で一部は魔素に還らず残る物があり…ソレが『魔物素材』と呼ばれる物です」

「なるほど」


俺が地面に落ちてる爪を拾いながら聞くとおじさんが説明してくれる。


「毎日の修行の成果がしっかり出ていましたな。ゴブリンの爪の鋭さに怯む事なく手首を掴む機転、バランスを崩すための足払いも完璧でした…追撃も欠かさずちゃんとしている」

「ありがとうございます。これもひとえに師匠の指導が良いからですよ」

「…いえ、リデック君の日々の鍛錬の成果が出ただけのこと」


男の評価に俺が教え方が上手だと返すと照れたように謙遜した。


「坊ちゃん、そのままでは風邪引きますよ」

「ありがとう」

「…では行きましょうか」

「はい」


お姉さんが畳まれた服を渡してくるので受け取って着ると、おじさんが先に進むよう促してくる。


「いた。先生!」

「はい」


少し歩いた先でまたゴブリンを発見したので服を脱いでお姉さんに投げて俺はゴブリンに近づく。


「ギ?」

「先手必勝」

「ギ…!」

俺が先手を取って走って距離を詰め、 ゴブリンの首を掴んで握力で絞め付けた。


「ギ…!」

「おお!効かない!」



ゴブリンは苦しそうにもがいて俺の腕を両手の爪で引っ掻くが、俺の腕にはかすり傷一つ付いていない。


「ギ……!」


ゴブリンは少し間もがいていたが酸欠になったのか身体の力が抜けた後に姿が消える。



「今度は爪と牙と…コレは?」

「そ、ソレは!!」

「も、もしかして…!」


地面に落ちた素材を拾っていると紫色の六角形の石みたいなのがあったので…


俺がみんなに見せながら不思議そうに聞くとお姉さんとおじさんが驚く。


「ぼ、坊ちゃん!ソレをお貸しください!」

「う、うん…はい」


お姉さんは興奮したように手を出して催促するので俺が渡すと…


「こ、コレは…やっぱり!『魔石』!魔石です!」

「やはり魔石でしたか…!」


ソレを確認するように良く見た後に断定して驚きながら言い、おじさんも驚きながらその変わった石を見た。


「流石坊ちゃん!持ってますね!もの凄い豪運ですよ!」

「そ、そう…?魔石って?」

「魔石とは魔物の核であり、魔素や魔力の塊です。魔素から魔物が生まれる際に最初に構成される事から、『魔物が倒れ魔素に還る時には魔石から真っ先に変わる』と言われている部位なので『魔石が残る』という事例は全て記録されるほど…それほどまでに非常に珍しい事なのですよ」

「なるほど…」


お姉さんがはしゃぎながら褒めてくるので疑問を尋ねるとおじさんが詳しく説明してくれる。


「魔石は魔法協会が高く買い取ってくれますよ!でもみんな売らずに自分達で使う事がほとんどですけど」

「そうなんだ」

「私も未だ資料でしか見たことなくて…実物は初めて見ました…」

「私も、結構長く生きてるつもりですが…初めて見ました。いやはや…長生きはしてみるものですな」


お姉さんはそう説明すると魔石を掲げるように見ながら呟き、おじさんも『ありがたや…ありがたや』と合掌するように両手を合わせながら言う。
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