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その2 湯けむり殺人とかまじ勘弁
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「まさかこんな――っ!?」
奴は急に俺の腕を取ると、脇腹に固いものを押し付けてきた。
「妙な真似したら撃つわよ」
「容赦ねぇなぁ……」
銃持ってんのかよ……。
体の影になっててわからないが絶対そうだろ、感触的に。
「――ここで話すのもなんだし、お茶でもしない?」
「断ったら?」
お腹の感触がより強くなる。なるほど、逆らえば撃つって訳ね。
「……わかった、聞くよ」
やっぱ先手を打たれたら勝てそうにないな…………。
――――近くの喫茶店
「――それ、銃刀法違反なんじゃないか?」
俺はいつかのように彼女と向かい合うように座る。
「残念でした♡ エアガンよ……改造してるからゼロ距離なら痛いじゃ済まないけど」
奴はいたずらっ子のように笑った。普通に可愛かった。が、俺は女好きじゃないからどうでも良かったが。
っしかしやられたな。
もしあの場で俺が助けを呼んでいたとしても、奴は俺をからかっただけだと弁解できる。どちらに転んでも奴に利する展開かよ……それを出会い頭で出来るか?
「チッ……全部お前の手のひらの上って訳か?」
「貴方達の存在は完全なるイレギュラーよ。私の邪魔をしないで頂戴」
「忘れたか? 俺はお前の邪魔をすると言ったハズだが?」
「いえ、むしろ好都合な部分もあったわよ……」
「! 今回の事件、お前が黒幕じゃないのか?」
「まさか……! あんなセンスの無い犯行、私はしないわよ。ちょぉっと、心外ね」
「じゃ狙いは何だ? アルバイトでもしてたのか?」
「旅館の乗っ取りよ。安定した資金源として利用するつもりだったの」
「……そう簡単にいくもんか」
あそこの所有権は殺されたようこさんが持ってる。身内は塀の中にいる。潰すか競売にかけるかで奴の手に渡るハズもない。
「ふん、見てなさい……しばらくしたら遺言状が発見されるわ。内容は私に旅館の経営権を相続する、ってね」
「……偽造したのか? いくらなんでも都合が良すぎる」
「想像にお任せするわ」
ひゅー……おっそろしい女だぜ。
「ま、それは置いといて……残念なお知らせだ。あの旅館、とある資産家が気前よく購入するつもりだそうだぜ」
その資産家、薫はケチだがこういうときは妙に気前がいいんだ。ようこさんが人生をかけてまで守ろうとした旅館を第三者に明け渡すのが癪なんだそうだ。
と、俺が口にした瞬間、奴は一瞬だけ忌々しそうな顔をした。
「そう、それは残念ね……」
「そんなことよりも、もっと重要な事があるんだがな……」
「へぇ、なにかしら?」
「この間お前がタダ飲みした分の金払え」
「……ぷっ…………くくっ……!」
「笑うなよ」
「だって……真面目な顔して…っくそんなこと、言うんだもの」
このやろ~俺が家賃何ヵ月滞納してるか知らないからって……ほぼ毎日水かパンの耳か薫の手作り料理しか食ってねぇんだぞ!
「少しくらい奢ってくれたって良いじゃない」
「黙れクソババア」
「……私、こうみえても18よ」
老け顔かよ……。
「いいわ……大好きな貴方に会えたんだもの、払ってあげる」
「けっ……心にもないこと言いやがって」
俺は奴から野口さんをひったくりポケットにねじ込む。
「……次会うときは、もっと面白い犯罪を魅せてあげるわ」
「どうぞご勝手に……全部台無しにしてやるから覚悟しとけ」
奴は口角を少しだけ上げると、去り際にこう呟いていった。
――――またね、小五郎くん。
奴は急に俺の腕を取ると、脇腹に固いものを押し付けてきた。
「妙な真似したら撃つわよ」
「容赦ねぇなぁ……」
銃持ってんのかよ……。
体の影になっててわからないが絶対そうだろ、感触的に。
「――ここで話すのもなんだし、お茶でもしない?」
「断ったら?」
お腹の感触がより強くなる。なるほど、逆らえば撃つって訳ね。
「……わかった、聞くよ」
やっぱ先手を打たれたら勝てそうにないな…………。
――――近くの喫茶店
「――それ、銃刀法違反なんじゃないか?」
俺はいつかのように彼女と向かい合うように座る。
「残念でした♡ エアガンよ……改造してるからゼロ距離なら痛いじゃ済まないけど」
奴はいたずらっ子のように笑った。普通に可愛かった。が、俺は女好きじゃないからどうでも良かったが。
っしかしやられたな。
もしあの場で俺が助けを呼んでいたとしても、奴は俺をからかっただけだと弁解できる。どちらに転んでも奴に利する展開かよ……それを出会い頭で出来るか?
「チッ……全部お前の手のひらの上って訳か?」
「貴方達の存在は完全なるイレギュラーよ。私の邪魔をしないで頂戴」
「忘れたか? 俺はお前の邪魔をすると言ったハズだが?」
「いえ、むしろ好都合な部分もあったわよ……」
「! 今回の事件、お前が黒幕じゃないのか?」
「まさか……! あんなセンスの無い犯行、私はしないわよ。ちょぉっと、心外ね」
「じゃ狙いは何だ? アルバイトでもしてたのか?」
「旅館の乗っ取りよ。安定した資金源として利用するつもりだったの」
「……そう簡単にいくもんか」
あそこの所有権は殺されたようこさんが持ってる。身内は塀の中にいる。潰すか競売にかけるかで奴の手に渡るハズもない。
「ふん、見てなさい……しばらくしたら遺言状が発見されるわ。内容は私に旅館の経営権を相続する、ってね」
「……偽造したのか? いくらなんでも都合が良すぎる」
「想像にお任せするわ」
ひゅー……おっそろしい女だぜ。
「ま、それは置いといて……残念なお知らせだ。あの旅館、とある資産家が気前よく購入するつもりだそうだぜ」
その資産家、薫はケチだがこういうときは妙に気前がいいんだ。ようこさんが人生をかけてまで守ろうとした旅館を第三者に明け渡すのが癪なんだそうだ。
と、俺が口にした瞬間、奴は一瞬だけ忌々しそうな顔をした。
「そう、それは残念ね……」
「そんなことよりも、もっと重要な事があるんだがな……」
「へぇ、なにかしら?」
「この間お前がタダ飲みした分の金払え」
「……ぷっ…………くくっ……!」
「笑うなよ」
「だって……真面目な顔して…っくそんなこと、言うんだもの」
このやろ~俺が家賃何ヵ月滞納してるか知らないからって……ほぼ毎日水かパンの耳か薫の手作り料理しか食ってねぇんだぞ!
「少しくらい奢ってくれたって良いじゃない」
「黙れクソババア」
「……私、こうみえても18よ」
老け顔かよ……。
「いいわ……大好きな貴方に会えたんだもの、払ってあげる」
「けっ……心にもないこと言いやがって」
俺は奴から野口さんをひったくりポケットにねじ込む。
「……次会うときは、もっと面白い犯罪を魅せてあげるわ」
「どうぞご勝手に……全部台無しにしてやるから覚悟しとけ」
奴は口角を少しだけ上げると、去り際にこう呟いていった。
――――またね、小五郎くん。
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