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その2 湯けむり殺人とかまじ勘弁
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風呂上がりの一杯は中々いいもんだな。
長年の夢がようやくかなった。
温泉に入った後フルーツ牛乳を一気飲み。
これが美味いのなんのって。
タイムスリップしてきたローマ人が感動するのもよくわかる。
おかげで昼間の疲れが取れた。
「ふぅ……」
ビンを捨てた後備え付けのソファに座ってみる。
お、すっごくふかふかだ。我が家にも一つほしいとこだ。
つっても滞納してる家賃が多すぎて買えそうにない。
旅館に始めてきたんだが……悪くないな。快適にくつろげるといくか、ストレスがほとんど無い生活を送ってる俺でもリラックスしてストレスゼロになりそうだ。
……てか何すんだ、この後。
飯食って寝るだけじゃ済まなそうだしなぁ。
とか考えていると、目の前を清掃業者風のおっさんが通る。よくあるモップの突き刺さった手押し車を押して。
妙だな……。
普通掃除は客の居ないときか、寝静まった後もしくは出掛けてるときにするもんじゃないのか?
やけに足下が濡れてるし……引っ掛かるな。
ま、考えるだけ無駄だな。
部屋に戻ると、すっごくにやけた顔の薫がいた。
変なキノコを食べた人のように不気味な笑みを浮かべている。
「……何かあったのか?」
「べ、別にぃ……えへへ」
ま、推理すれば楽勝だな。こんなぬるゲー。
ここは薫の地元、友達の経営する旅館、久々の帰郷、恋バナ…………。
「初恋の人にでも会ったか」
「!?」
大当たり、だな。
「おめでたいねぇ……友達から男っ気なしって言われたくせに」
「ちっ違うわよ! 健一兄さんは初恋の人じゃ」
「ほぅ白状してくれましたね」
「!」
徹底的に看破してやった結果、気の毒なくらい顔を真っ赤にしてしまっている。
「いっ今の無しっ!」
「あーはいはい、左様でございますか」
「ちょっ、何拗ねてんのよ。別に……今好きな人は、違うし」
「拗ねてない。人の恋愛には口挟む気ないし、俺はお前が好きだから嫉妬とかいうのはない」
と、言った瞬間、薫が傷付いたような表情になった。
本当に分かりやすい奴だ。そうか、今好きな人は俺か。
悪いが俺は貴方の事が好きとか言われても信用しない。大体そういうのはまがい物でしかないからだ。
昔、学校に通っていた頃、俺に告白してきた女がいた。そいつは俺が虐められてるのを見てもなにもしなかった。自分もそうされるのが目に見えていたからだ。
……おかしくないか?
本当に好きなら、自分を省みないで助けるものではないのか? 窮地に追い込まれている恋人を助けないのはいかがなものか。
だから信用しない。
そんな奴とは一緒に居たくない。
「そうだった! あんたはそういう男だったって忘れるところだった!」
ふん、勝手に怒ってろ。
険悪なムードのまま、食事を終える。一緒に付いてきたお品書きを取っているのをイジって和ませようとしたら逆にキレられた。
そして夜の10時頃、薫が妙にそわそわしだした。
多分何かの約束があって、時間を過ぎてるのに来ないから落ち着かないのだろう。
「鬱陶しいな、何かあったのか?」
「うるさい、あんたには関係ない」
あーあ、取りにつく島もないって感じだよ。
キレすぎだっつの。
が、妙にざわつくな。
嫌な予感がする。
「来ないなら連絡してみたらどうだ?」
「…………ほんとムカつく」
文句を言いつつ、内線電話を使う薫。このご時世なのに携帯を持っていないのだ。
「…………出ないわ」
「忙しいんじゃないか?」
「それは無いわ。ようこは約束してたらちゃんと仕事を終わらせるわ」
「じゃ、何かあったんだな」
いても立ってもいられなくなったのか、薫は部屋を出る。一応俺も追いかける。
ようこさんが仕事をする部屋は三階にあるらしい。急いで階段をかけ上がって――少し湿っているな――一本道の廊下を走る。
「おい待て!」
「え――きゃっ!」
ほらみろ、転んだ。
濡れたフローリングの床で走るからそうなるんだ。
……てか、見えるぞ。
転んだ拍子に浴衣の帯が緩んで色々とはだけさせてしまっている。
「ほら見ろ、こけた」
「~~っ!」
「ほら」
俺が手を差しのべるが、思いきり払いのけてくる。
意地ばっか張りやがって。
「っ自分で立てるわ」
「はいはい……」
一度こけているからか慎重に早歩きしつつ、ようこさんの部屋にたどり着く。
薫がノブに手をかけるが、動かない。
鍵がかかってるのか?
「ねえようこ! 開けて! 私よ!」
反応がない。
「寝てる、なら出るはずだよな……」
「わかってるわよ!」
が、鍵がかかっているにしては妙だな…………。
ノブはしっかり回っている。が、ドアとの隙間には1つしか影がない。つまり閂の部分が存在していない。
鍵の種類によってはかかっていない、事もある。
「……どいてろ!」
俺は薫をドアから退かせ――タックルをかました。
鈍い音がしてすこし動く。これは間違いがない、鍵なんかかかっちゃいない。
「っ貸して――っ!」
薫も同じように扉を押してくれ、開いた。
その瞬間、ひんやりとした空気と異様な臭い。
なぜか床がびっしょりと濡れている。そして…………。
――――嫌な予感ってのは当たるもんだな………………。
「な、んで……?」
ようこさんは殺されてしまっていたのだ。
長年の夢がようやくかなった。
温泉に入った後フルーツ牛乳を一気飲み。
これが美味いのなんのって。
タイムスリップしてきたローマ人が感動するのもよくわかる。
おかげで昼間の疲れが取れた。
「ふぅ……」
ビンを捨てた後備え付けのソファに座ってみる。
お、すっごくふかふかだ。我が家にも一つほしいとこだ。
つっても滞納してる家賃が多すぎて買えそうにない。
旅館に始めてきたんだが……悪くないな。快適にくつろげるといくか、ストレスがほとんど無い生活を送ってる俺でもリラックスしてストレスゼロになりそうだ。
……てか何すんだ、この後。
飯食って寝るだけじゃ済まなそうだしなぁ。
とか考えていると、目の前を清掃業者風のおっさんが通る。よくあるモップの突き刺さった手押し車を押して。
妙だな……。
普通掃除は客の居ないときか、寝静まった後もしくは出掛けてるときにするもんじゃないのか?
やけに足下が濡れてるし……引っ掛かるな。
ま、考えるだけ無駄だな。
部屋に戻ると、すっごくにやけた顔の薫がいた。
変なキノコを食べた人のように不気味な笑みを浮かべている。
「……何かあったのか?」
「べ、別にぃ……えへへ」
ま、推理すれば楽勝だな。こんなぬるゲー。
ここは薫の地元、友達の経営する旅館、久々の帰郷、恋バナ…………。
「初恋の人にでも会ったか」
「!?」
大当たり、だな。
「おめでたいねぇ……友達から男っ気なしって言われたくせに」
「ちっ違うわよ! 健一兄さんは初恋の人じゃ」
「ほぅ白状してくれましたね」
「!」
徹底的に看破してやった結果、気の毒なくらい顔を真っ赤にしてしまっている。
「いっ今の無しっ!」
「あーはいはい、左様でございますか」
「ちょっ、何拗ねてんのよ。別に……今好きな人は、違うし」
「拗ねてない。人の恋愛には口挟む気ないし、俺はお前が好きだから嫉妬とかいうのはない」
と、言った瞬間、薫が傷付いたような表情になった。
本当に分かりやすい奴だ。そうか、今好きな人は俺か。
悪いが俺は貴方の事が好きとか言われても信用しない。大体そういうのはまがい物でしかないからだ。
昔、学校に通っていた頃、俺に告白してきた女がいた。そいつは俺が虐められてるのを見てもなにもしなかった。自分もそうされるのが目に見えていたからだ。
……おかしくないか?
本当に好きなら、自分を省みないで助けるものではないのか? 窮地に追い込まれている恋人を助けないのはいかがなものか。
だから信用しない。
そんな奴とは一緒に居たくない。
「そうだった! あんたはそういう男だったって忘れるところだった!」
ふん、勝手に怒ってろ。
険悪なムードのまま、食事を終える。一緒に付いてきたお品書きを取っているのをイジって和ませようとしたら逆にキレられた。
そして夜の10時頃、薫が妙にそわそわしだした。
多分何かの約束があって、時間を過ぎてるのに来ないから落ち着かないのだろう。
「鬱陶しいな、何かあったのか?」
「うるさい、あんたには関係ない」
あーあ、取りにつく島もないって感じだよ。
キレすぎだっつの。
が、妙にざわつくな。
嫌な予感がする。
「来ないなら連絡してみたらどうだ?」
「…………ほんとムカつく」
文句を言いつつ、内線電話を使う薫。このご時世なのに携帯を持っていないのだ。
「…………出ないわ」
「忙しいんじゃないか?」
「それは無いわ。ようこは約束してたらちゃんと仕事を終わらせるわ」
「じゃ、何かあったんだな」
いても立ってもいられなくなったのか、薫は部屋を出る。一応俺も追いかける。
ようこさんが仕事をする部屋は三階にあるらしい。急いで階段をかけ上がって――少し湿っているな――一本道の廊下を走る。
「おい待て!」
「え――きゃっ!」
ほらみろ、転んだ。
濡れたフローリングの床で走るからそうなるんだ。
……てか、見えるぞ。
転んだ拍子に浴衣の帯が緩んで色々とはだけさせてしまっている。
「ほら見ろ、こけた」
「~~っ!」
「ほら」
俺が手を差しのべるが、思いきり払いのけてくる。
意地ばっか張りやがって。
「っ自分で立てるわ」
「はいはい……」
一度こけているからか慎重に早歩きしつつ、ようこさんの部屋にたどり着く。
薫がノブに手をかけるが、動かない。
鍵がかかってるのか?
「ねえようこ! 開けて! 私よ!」
反応がない。
「寝てる、なら出るはずだよな……」
「わかってるわよ!」
が、鍵がかかっているにしては妙だな…………。
ノブはしっかり回っている。が、ドアとの隙間には1つしか影がない。つまり閂の部分が存在していない。
鍵の種類によってはかかっていない、事もある。
「……どいてろ!」
俺は薫をドアから退かせ――タックルをかました。
鈍い音がしてすこし動く。これは間違いがない、鍵なんかかかっちゃいない。
「っ貸して――っ!」
薫も同じように扉を押してくれ、開いた。
その瞬間、ひんやりとした空気と異様な臭い。
なぜか床がびっしょりと濡れている。そして…………。
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「な、んで……?」
ようこさんは殺されてしまっていたのだ。
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