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その1 密室殺人? そんなものありません
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いいよな、推理を披露する瞬間ってのは。
みんなが注目してくれて、ヒーローになったみたいだ。
「ちょっ待ちたまえ! 本当にに解けたというのかい? この名刑事である僕が解けなかった謎を?」
「(自称)名刑事の戯言は置いといて、まず結論を言うと犯人は坂本さんだ」
「……アリバイは……?」
「この方法なら彼のアリバイは完全に崩せる。まず、指摘したいのは安藤さんが三か所刺されていた、という点です」
「え……でも別に何も変なところは無いですよね?」
「あるんですよ、柳田さん。もし仮に、確実に殺そうという意図があるならナイフに毒物を塗る必要はないし、逆に毒を塗るなら三か所も刺す必要はない」
「馬鹿かね、恨んでい――」
「怨恨が動機だったら三か所以上刺すだろ、それに毒を塗るなんてまどろっこしいことはいないはず。つまり三か所刺すもしくは毒を塗ることに何らかの意図があったと考えるべきだ」
「じゃ……確証がなかったんだよ」
「アコニチンを使う人間が? よく考えろ」
アコニチンとは、トリカブトに含まれる劇毒。
植物毒の中では最強ともいわれ、特効薬はない。
確かに小太り刑事の言うこともわかるが少しぐらい黙っててほしい。
「と言ったが、あんたの言うことももっともだ。ナイフに塗る程度の量じゃ死には至らない。だからこそこう考えるべきだ、どうして塗る必要があったのかと」
「え……?」
「答えは簡単、誤魔化すためだ」
「ん? 訳が分からんぞ」
「俺の推理はこうだ。安藤さんは帰宅したところを不意打ちで襲われた、その時多量の、致死量のアコニチンを注射される。といっても即死じゃない、恐らく息はあったはずだ。そして彼女を家に引きずり込みアリバイ作りのゲーム、三十分の中断時間に彼女の部屋に行き刺し傷を作り襲われたように偽装する」
「……! もしや首の傷は……」
「おそらく注射跡を隠すため。でも二ヶ所じゃさすがに怪しまれるからトドメの一発を作る。んで、体を清めたらゲーム再開」
「待ちたまえ! それでは密室のトリックが説明できないぞ!」
「まぁ案外単純だよ」
盲点かもしれないけど、な。
「安藤さんの部屋の鍵を使って作ったんだよ」
「「は?」」
「確かに彼女は部屋の鍵を握っていた、だがそれはどこの部屋の鍵かってことだ」
アパートとかマンションの鍵ってのはパッと見区別がつきにくい。俺も昔は全部同じ形なんじゃないかって思ってた時期もあるくらいそっくりだ。
つまり、だ。キーホルダーとか何か特別に判断できる要素で見分けている。
言ってしまえば鍵本体の部分を注目する人は少ない。
だから本人が握っていて、装飾も同じなら騙せるって寸法だ。
「――――ってこと。何なら調べてみれば? 多分指紋とか出てくるんじゃない?」
「成程……君の言う通りかもしれないな」
「で、動機は多分ここに記されてるよ。彼女、隣の人からストーキングされていたみたいだ」
――――――数日後
どうやら俺の推理に間違いはなかったようだ。新聞には例の事件が解決されたという記事が掲載されている。もっとも、すべては小太り刑事の手柄ってことにされているが……解せぬ。
「おーい! 生きてるか?」
新聞を読んでいると薫が訪ねてきた。
おかしいな……昨日家賃は払ったぞ? それも半年分。おかげでまだまだ極貧生活の真っ最中だ。
「……何の用だ?」
「もう何よせっかく仕事を持ってきてやったのに」
「すまん、今日は用事があってね。その話はまた今度で」
「嘘つかないの、どうせここで本読むくらいしかやること無いくせに」
「いや、今回はまじめな用事」
俺は新聞をたたんでデスクに放り投げる。
依頼書と思われる紙束を持った薫は、よほどショックだったのか完全にフリーズしてしまっている。
「ま、検討はしておくから書類はそこに置いといてくれたまえ」
さーて、と。
行きますかね。柳田さんとの待ち合わせ場所に。
みんなが注目してくれて、ヒーローになったみたいだ。
「ちょっ待ちたまえ! 本当にに解けたというのかい? この名刑事である僕が解けなかった謎を?」
「(自称)名刑事の戯言は置いといて、まず結論を言うと犯人は坂本さんだ」
「……アリバイは……?」
「この方法なら彼のアリバイは完全に崩せる。まず、指摘したいのは安藤さんが三か所刺されていた、という点です」
「え……でも別に何も変なところは無いですよね?」
「あるんですよ、柳田さん。もし仮に、確実に殺そうという意図があるならナイフに毒物を塗る必要はないし、逆に毒を塗るなら三か所も刺す必要はない」
「馬鹿かね、恨んでい――」
「怨恨が動機だったら三か所以上刺すだろ、それに毒を塗るなんてまどろっこしいことはいないはず。つまり三か所刺すもしくは毒を塗ることに何らかの意図があったと考えるべきだ」
「じゃ……確証がなかったんだよ」
「アコニチンを使う人間が? よく考えろ」
アコニチンとは、トリカブトに含まれる劇毒。
植物毒の中では最強ともいわれ、特効薬はない。
確かに小太り刑事の言うこともわかるが少しぐらい黙っててほしい。
「と言ったが、あんたの言うことももっともだ。ナイフに塗る程度の量じゃ死には至らない。だからこそこう考えるべきだ、どうして塗る必要があったのかと」
「え……?」
「答えは簡単、誤魔化すためだ」
「ん? 訳が分からんぞ」
「俺の推理はこうだ。安藤さんは帰宅したところを不意打ちで襲われた、その時多量の、致死量のアコニチンを注射される。といっても即死じゃない、恐らく息はあったはずだ。そして彼女を家に引きずり込みアリバイ作りのゲーム、三十分の中断時間に彼女の部屋に行き刺し傷を作り襲われたように偽装する」
「……! もしや首の傷は……」
「おそらく注射跡を隠すため。でも二ヶ所じゃさすがに怪しまれるからトドメの一発を作る。んで、体を清めたらゲーム再開」
「待ちたまえ! それでは密室のトリックが説明できないぞ!」
「まぁ案外単純だよ」
盲点かもしれないけど、な。
「安藤さんの部屋の鍵を使って作ったんだよ」
「「は?」」
「確かに彼女は部屋の鍵を握っていた、だがそれはどこの部屋の鍵かってことだ」
アパートとかマンションの鍵ってのはパッと見区別がつきにくい。俺も昔は全部同じ形なんじゃないかって思ってた時期もあるくらいそっくりだ。
つまり、だ。キーホルダーとか何か特別に判断できる要素で見分けている。
言ってしまえば鍵本体の部分を注目する人は少ない。
だから本人が握っていて、装飾も同じなら騙せるって寸法だ。
「――――ってこと。何なら調べてみれば? 多分指紋とか出てくるんじゃない?」
「成程……君の言う通りかもしれないな」
「で、動機は多分ここに記されてるよ。彼女、隣の人からストーキングされていたみたいだ」
――――――数日後
どうやら俺の推理に間違いはなかったようだ。新聞には例の事件が解決されたという記事が掲載されている。もっとも、すべては小太り刑事の手柄ってことにされているが……解せぬ。
「おーい! 生きてるか?」
新聞を読んでいると薫が訪ねてきた。
おかしいな……昨日家賃は払ったぞ? それも半年分。おかげでまだまだ極貧生活の真っ最中だ。
「……何の用だ?」
「もう何よせっかく仕事を持ってきてやったのに」
「すまん、今日は用事があってね。その話はまた今度で」
「嘘つかないの、どうせここで本読むくらいしかやること無いくせに」
「いや、今回はまじめな用事」
俺は新聞をたたんでデスクに放り投げる。
依頼書と思われる紙束を持った薫は、よほどショックだったのか完全にフリーズしてしまっている。
「ま、検討はしておくから書類はそこに置いといてくれたまえ」
さーて、と。
行きますかね。柳田さんとの待ち合わせ場所に。
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