BUZZER OF YOUTH

Satoshi

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第1章 入学〜インターハイ予選

第46話 負の連鎖

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第4Q 残り9:10

星垓  76
深谷  67


山下「この我慢比べの展開での9点差…深谷は厳しくなりましたね」

コートではその深谷メンバーがオフェンスに向かっている。


村上「そうだな…点差だけ見ればまだわからないが…流れが行ったり来たりするゲームならまだしも…こう我慢比べの続く、流れがどちらにも傾かないゲームでの点差となると厳しいものがあるな」


コートでは亀山のシュートを武蔵が必死でチェックしている。


ガッ!


神崎「よっしゃ!」

距離が足りずリングに嫌われたこのシュートを神崎がリバウンド。


村上「そしてここにきて点差がついて、深谷メンバーには疲労も見える。
体力が決してない訳ではないが全国レベルの大会で今日2試合目、それも最終試合ときている。
おまけに深谷メンバーはスタメンがずっと2試合とも出ずっぱりだ。高校生にはきつい局面だろう」


一方星垓は、体力的には大差ないものの、1試合目でメンバーを温存したうえ、この試合でもメンバーチェンジを積極的に行なっている。


村上「スタメンに比べてまだ荒削りとはいえ、選手層の厚さは星垓が上だ。
深谷は負の連鎖に陥らなければいいが…」

山下「負の連鎖?」


ガッ!


神崎が難しい距離のミドルをミス。


リバウンドは安達。


亀山「速攻!」


だが、星垓メンバーの戻りが早く速攻は潰されてしまう。



山下「さっきまでこんな局面では速攻に持ち込めていたのに…」

村上「始まっちまったか…?」

山下「???」


ゾーンでインサイドの安達にボールが入る。
安達、即座にドリブルで攻め込む。

だが、星垓ディフェンスの囲みが早い。

安達「くっ…」

たまらず外の松沢にボールを戻す。

松沢、すかさず左ウイングの室谷に。

だが、疲労からパスコースを誤ったのか、それとも流れによるミスなのか…

本来、ディフェンスから若干外れて外側に出すはずのパス。
それが、室谷の真正面に放られてしまった。


バシィッ!

真田、スティールからワンマン速攻!


室谷「やべえっ!」

室谷、その場で後ろからファウルで止める。


ピピーッ!


審判がいつもと違うファウルのジェスチャー。

普段は片手でグーを作りそれを天に向かって上げ、もう片方の手でファウルした選手を指す。

だが今回は左手でグーを作り、その手首を右手で掴み頭上に上げている。



審判「アンスポーツマンライクファウル!緑13番室谷!」



※アンスポーツマンライクファウル

アンスポーツマンライクファウルとは、バスケットボール規則の精神と目的を逸脱し正当にプレイしていないと審判が判断した場合、または正当にプレイしていたとしても、身体接触が激しく危険と審判が判断した場合に宣告されるファウルのことである。NBAではフレグラントファウルと呼ばれ、危険度に応じてレベル1、レベル2にわけられ、レベル2では、一発退場となり、出場停止処分が加わる場合もある。
1995年以前の旧ルールでは「インテンショナル・ファウル」という名だった。

今回のケースのようにワンマン速攻を後ろからわざとファウルで止めにいったりした時も宣告されることが多い。
ファウルは5つ犯すと退場になるが、このファウルも1つのファウルとして数えられ、無条件で相手に2本のフリースロー(バスケットカウントの時は1本)が与えられ、更にファウルを受けたチームのボールで試合再開。

なお、1選手にアンスポーツマンライクファウルが2回記録されるとディスクオリファイング・ファウルとなり、そのプレイヤーは失格・退場となる。


※ディスクオリファイング・ファウル

バスケットボールのファウルでも特に悪質なものをいう。宣告された場合、失格・退場となり、試合の会場内に立ち入ることも許されない。ファウルの後は相手チームにフリースローが与えられ、さらにスローインの権利が与えられる。



亀山「速攻止めるためとはいえ、足がついていかなくて後ろからいっちまったか…」

安達「どんまい室谷」

室谷「すみません…」




ファウルを受けた真田。

1投目。

スパッ!


神崎「よし!」

髙木「両方決めろよ!」


2投目。

スパッ!


星垓メンバー「よっしゃあ!」

「2投とも決めた!」


真田「当たり前だろ!シュートには自信あんだ!」


そしてアンスポーツマンライクファウルにより、そのまま星垓のスローイン。


新城(ここで2点でも取れれば13点差…勝利が見える!)

新城、インサイドの髙木にボールを入れる。

髙木、ポジションを取る過程で気付く。

髙木(こいつ安達…足にきてやがる)

髙木、ボールを受けすぐに全力でパワープレイ。
体勢が整ってなかったうえに足にきていた安達、その場でバランスを崩し髙木の侵入を許してしまう。


髙木、ゴール下シュート。
安達、止めきれず空中で髙木に接触してしまう。


ピピーッ!

バスッ!


第4Q 残り8:21

星垓  80
深谷  67


星垓メンバー「いよっしゃあああ!」

大盛り上がりの星垓メンバー。


スパッ!

高木はフリースローもしっかりと沈める。

星垓メンバー「よし!一本止めろよ!」

「まだまだ時間あるんだぞ!」

点差をつけても油断など微塵もない。むしろ気力が満ち満ちていた。



山下「じゅ、14点差…」

村上「負の連鎖だ…」

山下「え…?」

村上「我慢して我慢してここまできたのに点差が開いちまった。
深谷も星垓も意識せずとも精神的にも肉体的にも疲労は溜まってた。
だが、星垓はリードして盛り上がってるから疲れなど今は感じないだろう。
反対に深谷は…点差をつけられた事実が疲れを呼び、疲れがミスを生み、点差は更に開いていく。
こういう展開でリードを大きくされちまったチームが陥りがちなパターンだ、これは」

山下「じゃあこうなることも村上さんはわかっていたんですか?」

村上「いや、こうならねえか心配はしてたがここまで崩れちまうとはな…
深谷ってチームは手堅く手堅くいくチームなだけに大崩れするとは考えにくかったんだが…」


ガッ!


コートでは波田が逃げるように打ったフェイドアウェイが外れる。


疲れから足が止まってしまった深谷は精彩を欠き、点差は瞬く間に15点差、20点差に。

一方の星垓は残り5分、武蔵と変えてエースである涼真を投入。
その爆発的な得点力で深谷にとどめを刺す。


このQ、星垓が積み上げた得点は実に34。
ツボに入った時の爆発力は全国でも十分にトップクラスであることを証明した。


だが深谷も得点源亀山、波田を中心に諦めずに食らいつく。

特に亀山はキャプテンとして残り2分から3本連続してスリーポイントを決めるなど意地を見せた。


だが、関東大会は一発勝負のトーナメントである。
勝敗を決める瞬間はあっけなく訪れる。



ピピーッ!


試合終了

星垓  105
深谷  82



新城「23点差…けど点差ほど実力の差はなかったな」

髙木「次やったら今回みたいに勝てるかどうか…」




一方、Bコートでも試合が終わろうとしていた。



湘洋大付属メンバー「ラスト1分!集中!」

「最後まで!」


土波日本大学メンバー「まだいけるぞ!」

「諦めるな!」



残り59秒


湘洋大付属   92
土波日本大学  79


コート上では湘洋大付属15番、織田が1対1を仕掛ける。


対峙するのは土波日本大学11番、2年の箕輪。

箕輪(ほんとに1年かよ…俺より10㎝近くデカいのにめちゃめちゃ早え…!)


ドガァッ!

1対1から豪快なワンハンドダンク。



ピピーッ!


試合終了

湘洋大付属   96
土波日本大学  79




そして、Bトーナメントでも…

Aコート

桐生三  72
昌徳   86


Bコート

藤野     68
東裁大菅生  85


これでベスト4が出揃った。

翌日、関東大会準決勝、決勝!



To be continued…
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