BUZZER OF YOUTH

Satoshi

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第1章 入学〜インターハイ予選

第26話 決着

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残り1:24

星垓    91
桐神学園  84



村上「け、決定的だ…これは決定的な差がついた」

山下「ここから逆転は不可能だと?」

村上「0ではないが…かなり難しいだろう。それに彼らは高校生だ。この終盤でこの決定的な差だ。桐神学園は気持ちが切れてもおかしくないし、逆に星垓は勢いに乗っている」



長崎「一本だ…一本返そう」

だが、その声に覇気はない。

長崎だけではない。
ベンチメンバーも含む桐神学園の全メンバーは意気消沈している。


対称的に、星垓の方は勢い付き、既に勝ったという雰囲気が支配しつつあった。
それはすなわち…

”油断”

でもあった。


新海がボールを運ぶが、ドリブルに力強さはなく、疲労したような諦めたようなそんな表情だ。

「新海、ボールくれ」


新海「櫻田…」

新海に声をかけたのは、櫻田だった。

言葉こそいつものように穏やかだったが、目つきはむしろ強くなっていた。


ボールを持ち、武蔵と向き合う櫻田。

櫻田「覚悟しな」

武蔵「!?」


ダムッ!


櫻田、フェイクも何もなしのドライブ。

警戒していた武蔵、これに反応。が。


武蔵「!?!?」

新城「抜かれた?」

髙木「武蔵が…ああもあっさり…」


この日最高のドライブで武蔵を抜き去る。

涼真「行かすか!」

涼真がヘルプに出るも、チェンジオブペースで抜きにかかる櫻田。

涼真「くっ…」
(対応しきれねぇ…!)


そしてドライブの勢いで体が流れたまま空中で体勢を整え、ジャンプシュート。

涼真も、遅れてマークに入った武蔵もブロックに飛んだが間に合わない。


スパァッッ!


会場がどよめく。


村上「なんと…あんな高難度のジャンパーを沈めるのか…」


武蔵「敵ながら流石のシュートセンスだな…」

涼真「新城先輩」

新城「どうした涼真?」

涼真「次、ボールください」

そういった涼真から、例えようもないほどの威圧感がほとばしっている。

新城「わかった、同じ1年同士で負けるわけにはいかねえもんな」


新城がゆっくり運び、ディレイド気味にコントロールする。

中澤「残り1分切ったぞ!」

矢島「集中!」

ベンチから声が飛ぶ。


ボールは幾人かを経由し涼真へ。

24秒タイマーも残り10秒を切る。

ボールを持つ涼真とマークする櫻田、それを避けるように残りの8人は逆サイドに寄っている。


村上「アイソレーション…」

山下「1年生エース同士で決着を付けるって事でしょうか」


※アイソレーション
特定の選手がボールを持った時、1対1で抜いてシュートに行きやすいように残りの選手が逆サイドおよび邪魔にならない場所にポジションを移すこと。
エース同士の1on1対決などでよく見られる。日本ではあまり見られるフォーメーションではないが、アメリカのNBAのチームなど個人能力の高い選手の多いチームで見られる戦術。


涼真、ボールをドリブルで足の下を通すレッグスルー。
これにより体重を右に移動。

櫻田もそれにつられディフェンスに動く。

すかさずクロスオーバー(自分の身体の前でV字にドリブル)で左へ急な体重移動。

キュッ!

櫻田これにも反応。

すると涼真はロールターンで回りながら左手でボールコントロール。
自身の右側にロールでスライド。

櫻田、足がもつれながらもこれに食らいつく。

涼真、そこから更に左右に高速でレッグスルー。
そして左手から右手へとクロスオーバー。

櫻田、反応するも足がついていけず転倒。

涼真、櫻田を抜き去る。

バスッ!


レイアップを沈める。


残り48.8秒

星垓    93
桐神学園  86


村上「アンクルブレイク…!」

山下「決めた!」


※アンクルブレイク
ドリブルテクニックで相手を転倒もしくは膝をつかせるなどして動けない状態にすること。


櫻田「まだだぁ!」

フロントコートに入ってわずか3秒。

櫻田、スリーポイントラインから2、3メートルは離れた場所からシュート。


「「なっっ!?」」


敵味方関係なく虚を突かれ度肝を抜かれたシュートが


スパァッッッ!


リングを射抜く。


残り42.6秒

星垓    93
桐神学園  89


櫻田「4点差!」


だが、櫻田の決めた12秒後。


バスッ!


涼真のドライブに合わせた髙木がゴール下を沈める。


残り30.4秒

星垓    95
桐神学園  89



残り時間を考えれば、星垓の勝ちはほぼ確定している。
だが…


スパァッッ!


「またスリーポイントだあぁぁ!」


櫻田「っしゃあ!」


残り16.9秒

星垓    95
桐神学園  92


櫻田 祥人。
この男の闘志は消えることはなかった。


そして残り時間、桐神学園はファウルゲームに持ち込む。

※ファウルゲーム
ファウルが1つのQでチーム累計で5つを越えると相手にフリースローが与えられる。ファウルゲームとはファウルでわざと時計を止め、フリースローを打たせて外れることに期待し、リバウンドを取って速攻でシュートに持ち込む戦法である。
相手がフリースローを苦手とするチーム、もしくはプレッシャーに弱い選手がいるであるならば特に有効な反面、ファウルの累積で主力が退場したり、フリースローを決められたらファウルが無駄に終わる、とデメリットもある。


残り8.2秒

ファウルを受けた皆藤。


村上「15番皆藤1年生…しかもインサイドプレイヤーはフリースローが苦手な選手が多い傾向にある…プレッシャーを跳ね除けて決められるか…」


1投目。


ザシュッ!

残り8.2秒

星垓    96
桐神学園  92


星垓メンバー「っしゃあ!」

「4点差!」


2投目。


ガッ!

リング奥を弾いて外れる。
この瞬間、タイマーが動き出す。


長崎「リバウンド!」

米田が髙木を飛ばせないために全力で押さえ込む。

長崎が掴もうとしたリバウンドを涼真が弾き、ボールは再び宙を舞う。

ボールはまたしても長崎と涼真が弾いて宙を舞い、櫻田の手に。


櫻田、ドリブルでフロントコートに持ち込み、スリーポイントを放つ。


ブーッ!!


ザシュウッ!


村上「入った!」

山下「ブザービーター!」


だが…


審判「ノーカウント!リリース(シュートのボールが手から離れること)がブザーの後!」

「あああ…」

桐神学園サイドは意気消沈する。
ブザービートは無効、そして試合にも敗れた。

星垓サイドは…

「勝ったあああ!」

「決勝だ!」

拍手や万歳、そしてベンチで飛び跳ねるメンバー。
そしてコート上で喜びを爆発させるメンバー。

新城、そして涼真はその場で大きく息を吐き、安堵の表情。


審判「96対92で青(星垓)!」

「ありがとうございました!」

両チーム、健闘を讃え合う。

櫻田「北条。また来月の関東大会の本番、それとインターハイ予選でな」

涼真「楽しみにしてるよ」

2人は握手を交わす。




試合終了

星垓    96
桐神学園  92

1Q 星垓(31-39)桐神学園
2Q 星垓(14- 6)桐神学園
3Q 星垓(16-13)桐神学園
4Q 星垓(35-34)桐神学園


星垓は髙木、涼真が2人とも28得点の活躍。
ディフェンスで値千金の活躍をした武蔵は、自身がマークしている間は櫻田に9得点しか許さず。

その櫻田は両チームで最多の35得点と気を吐く。
1年生ながらエースとしてその得点力を改めて見せつけた。


だが、関東大会予選はこれで終わりではない。


翌日の予定

第1試合 女子5位決定戦
相模女子vs亀ヶ峯

第2試合 男子5位決定戦
法帝大付三vs慶鵬義塾

第3試合 女子3位決定戦
平塚学院vs旭山

第4試合 男子3位決定戦
東裁大相模vs桐神学園

第5試合 女子決勝
星垓vs金沢女子学院

第6試合 男子決勝
湘洋大付属vs星垓



To be continued…
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