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第4章 集大成・ウィンターカップ
第187話 嫌な予感
しおりを挟む他チーム メンバープロフィール
村越 悠聖
東裁大相模高等学校3年
188㎝80kg
誕生日:6/16
血液型:A
特徴:黒髪でショートヘアの、特徴の少ない髪型。プレイヤーとしては得意のディフェンス、スリーポイントを武器にしつつ目立たない場所での細やかな貢献をするタイプ。落ち着きもあり、同じチームになって5年以上経つ阿部や北田の同級生はもちろん、下級生も村越を頼りにしている。
休みの日はよく釣りをしている。
特技:巧妙な釣りの餌作り
趣味:釣り
得意教科:日本史、世界史
苦手教科:数学
得意なプレイ:ディフェンス、スリーポイント
バスケを始めたきっかけ:相模中等部入学時に勧誘されて
密かな悩み:お人好しすぎて頼られるのだが、断りきれないこと
-----------------------------
前半終了
星垓 47
東裁大相模 34
ハーフタイム。
コートでは次の試合の湘洋大付属と桐神学園がアップしている。
山下「前半は星垓が総合力で圧倒したわね」
中嶋「外と中の使い分けが上手いですからね。何より星垓には戦術に定評がある唐沢先生、そしてその戦術を遂行するためにチームを上手くコントロールできる新城・中山のツーガードがいますから。星垓のメンバーは主力が全国ベスト4を今年だけでも既に2回経験している。やはりその経験値は侮れない」
山下「じゃあ、こっちは?」
山下、眼前でアップする両チームを見る。
中嶋「この2チームは…正直難しいですね。夏の唯一の直接対決でもインサイドの差で湘洋大付属が勝ったとはいえ9点差…しかも準々決勝までどちらも全力を出していません。この対決に備えて隠し持っている武器も多いはず。夏に湘洋大が勝っているのと全国に出た経験があるとはいえ…どちらが勝っても驚きはしませんが…予想はできませんね、現段階では」
しかし、まだアップだというのにどこかピリピリとした空気。
中嶋(この試合、もつれそうだな)
ブーッ!
後半開始が近づき、星垓と東裁大相模の選手が戻ってくる。
中嶋(そして、こっちもまだまだ)
ユニフォーム姿で準備しているのは、以下のメンバー。
星垓
11 中山 慎太郎 169㎝ 1年
9 真田 直斗 184㎝ 2年
4 新城 敦史 185㎝ 3年
10 須川 雄大 190㎝ 2年
7 髙木 悠介 199㎝ 3年
東裁大相模
11 今野 正志 176㎝ 2年
14 椿 卓馬 182㎝ 1年
4 阿部 理人 186㎝ 3年
8 村越 悠聖 188㎝ 3年
15 梅村 聡紀 198㎝ 1年
涼真(相模はやっぱり今野さんがコントロールしないとガードの安定感が手薄になる。椿も北田さんも攻撃力はあるけどポイントガードは本職じゃないからな…
星垓も新城さんが3番にいないとフォワードが手薄になる…俺が出れないせいと言えばそれまでだが…)
涼真、悔しそう。
涼真「くーっ!つくづくこの怪我が恨めしい!」
美保「はい、無い物ねだりしない」
満月(とはいえ、そりゃそうよね…出れないで見てるだけって凄くもどかしいもの…夏は私もそうだったし)
糸織里「さあ、後半始まりますね!」
後半は星垓ボールからスタート。
慎太郎がボールを受ける。
相模はこれまでと違い、ナンバーコールをしない。
※ナンバーコール:マンツーマンの時にマークマンを確認するために自分のマークを指差す、もしくは声に出す事。
慎太郎(2-3ゾーン?…いや、今野さんと椿が縦に並んでる…これは1-1-3ゾーンか…!)
後列は梅村を中心に右に阿部、左に村越が陣取る。
慎太郎、ディフェンスのギャップに入ってきた髙木にボールを入れる。
慎太郎(どの程度のゾーンか確かめておく必要があるな)
キュキュッ!!!
髙木、たちまち阿部、梅村、椿の3人に囲まれる。
髙木「ぐっ…!」
髙木、たまらず外にパスを出そうとするがトリプルチームを仕掛けている椿、阿部がパスコースに手を出し容易にパスを出させない。
髙木、やっとの事でトップの慎太郎にパス。
慎太郎「なるほどな…」
(ゾーンの攻略には外のシュート。外のシュートを1番打ちやすいパスはインサイドから外に出すパス。このゾーンでインサイドと、インサイドからスリーポイントに繋がるパスを簡単に出させないようにしてる訳だ)
ダム!!
慎太郎、すかさずドライブ。
キュキュッ!
今度は今野と椿の2人に囲まれる。
ビッ!!
慎太郎、囲み切られる前に外の真田にパス。
涼真(よし!ドライブで中に切れ込んでのインサイドアウトのパス!)
スパァッッ!!!
星垓メンバー「「「イェース!!!!」」」
第3Q 残り9:41
星垓 50
東裁大相模 34
後半開始、星垓がスリーポイントで先制。
原「それでいい!切り替えろ!」
相模ベンチから原監督が声を出す。
涼真「それでいい、だと?」
春香「点取られたのに…?」
佳奈絵「確かにスリーポイントは良いシューターでも試合での確率は4割くらい。5割に行く事なんてものすごく稀。それでも星垓にはコートに髙木先輩以外確率のいいシューターが4人揃ってるのに…」
華音「インサイドアウトは防いでるけど、ドライブからのキックアウトで打たれてるやないの…」
涼真「…」
(まさか…そこだけ敢えて捨てている…?)
相模のオフェンス。
今野「1本!」
今野がボールを運ぶ。
新城「マーク確認!」
慎太郎「11番!」
髙木「15番!」
須川「8番!」
真田「14番!」
新城「4番!」
星垓のディフェンスはオーソドックスなハーフコートのマンツーマン。
ビッ!
ビッ!
相模がボールを回すも、星垓のマンツーマンに穴はできない。
今野(流石に普通に攻めたんじゃ星垓のマンツーから点を取るのは難しい。なら…)
今野、手でサインを出す。
バッ
これを見た梅村、スリーポイントラインの外へ。
これによりインサイドにスペースが生まれファイブアウトの形に。
同時に逆サイドにいた阿部が村越にスクリーンをかける。
村越、このスクリーンでインサイドに侵入。
須川「スイッチ!」
新城「おう」
新城がインサイドをフリーにしない為、村越のディフェンスの為についていく。
そして外では、椿が今野にスクリーン。
ダム!
今野、このスクリーンを使ってフリースローライン付近へ侵入。
慎太郎(くっ…スクリーンが上手い!)
真田「スイッチ!」
スクリーンをかけた椿、そのまま外にポップしてスリーポイントラインの外へ。
ビッ!
今野のパスが放たれた。
インサイドへ。
新城「!?」
村越はインサイドでフリーになれないと見るや、そのまま逆サイドの外にいた梅村にスクリーン。
今野の放ったパスは、インサイドに侵入した梅村へ。
髙木は外に釣り出されている為、インサイドで新城と梅村の1対1。
新城「しまった…!」
(それが狙いか…!)
ダム!!!!
梅村(勝つ!絶対勝つんだ!先輩達の為に!)
梅村、跳躍。
ゾク…
新城(ヤバい!これは決められたらヤバい気がする…!ファウルでも止めないと…!)
いやな予感に突き動かされ、新城も跳躍。
ガシィッ!
新城、梅村の身体に強く接触。
だが
梅村「おおおおおお!!!!」
新城「!?」
梅村の常軌を逸したパワーの前に、ぶつかりに行った新城が逆に吹き飛ばされる。
ピピーッ!!!
ドッガァァァアアアアアア!!!!
審判の笛と同時に、梅村の強烈なボースハンドダンクが炸裂。
審判「ファウル!白4番!バスケットカウント!」
梅村「うおおおおおおおおっ!!!」
決めた梅村、ゴール下で吠える。
涼真「まずいな」
春香「え?まだ14点もリードしてるのに」
涼真「今の相模のオフェンス、確かに狙いは梅村のインサイドだろうけど…パスを出す今野さん含め全員がシュートを狙いにいけるセットオフェンスなんだよ」
糸織里「ふむふむ」
涼真「まず、梅村が外に出てから最初に阿部さんが村越さんにスクリーンをかけた…そのままフリーになれれば村越さんはゴール下でシュートを狙える。
そこがダメでも、外でポップしていた阿部さんがスリーを狙える」
奈津実「ボールマンのとこでも同じことをしてたよね。今野さんにスクリーンをかけてドライブで決める事もできるし、外に開いた椿がスリーも狙える」
涼真「けど本当の狙いは、中から村越さんが梅村にスクリーンをかける事。1度スクリーンをかけている村越さんは、マークマンが背の低い選手に変わっている可能性が高い。その村越さんが外でスクリーンをかけたらどうなると思う?」
美保「あ…!」
涼真「梅村についてる髙木さんは、本来そのまま梅村についていけばいい話なんだけど…スクリーナーが身長もあってスリーのシュート力もある村越さんだとそうはいかない。村越さんのシュートの打点には髙木さんやインサイドの身長でないと対応できない。だから髙木さんは外に残らざるを得ない」
優花「でも、そこでインサイドにパスを通されると…」
涼真「そう、背の低いプレイヤーと梅村、圧倒的に相模に有利な1対1の完成、って訳だ。
中等部から一緒にプレーしてるだけあって、セットプレーの練度も桁違いだ」
バス!!!
コートでは梅村が苦手なフリースローも決め3点プレーを完成。
第3Q 残り9:25
星垓 50
東裁大相模 37
涼真(まずいな…場合によっちゃ後半一気に相模に持っていかれそうな嫌な予感がする)
現状、星垓のオフェンスは外中心に機能している。
だが、相模のオフェンスも先程の洗練されたセットプレーも機能する気配を見せている。
加えて…
涼真(良くも悪くもムラのある梅村が…今のプレーで乗ってきてなければいいが…フリースローも決めてたし)
夏に苦杯を舐めさせられた梅村という厄介極まりないプレイヤーの存在が、涼真に不安を抱かせていた。
……To be continued
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