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第2章 インターハイ〜
第154話 次なる舞台
しおりを挟むブーッ!!!!!!
試合終了
洛阪 103
星垓 99
男子準決勝第2試合は、洛阪の勝利で終わり、昨年に続いて順当に決勝に進むことになった。
大歓声や絶叫が響く中
審判「スコア通り!礼!」
両チーム「ありがとうございました!!」
試合終了の挨拶と共に、互いの健闘を讃え合う。
塚森「いい勝負だったよ」
新城「ああ、決勝がんばれよ」
大谷「またやろうぜ、髙木。U-18でも、秋も冬もよ」
髙木「次は勝ってみせるさ」
慎太郎は真田に支えられている。
その顔には、大粒の涙。
騒がしい体育館の中で声を上げて泣いているが、その声は他の声にかき消されている。
そして涼真は、高松と握手する。
涼真「…決勝、頑張ってください」
高松「ああ」
涼真「…完敗でした」
高松「あんだけ記録にも記憶にも残るプレイしといた奴のセリフかよ…いや、何点取ろうが負けは負けって事か」
涼真「…また秋冬に絶対挑みに戻ってきます」
高松「待ってるぜ、北条」
そして互いに背を向け、ベンチに戻っていく。
高松(高校1年の時に俺に北条のような事ができたか…?
ポテンシャルや技術、伸び代なんかで言えばあいつは日本の歴代でも最高かもしれねえ…俺もいつか、あいつに敵わなくなる、負ける時が来るのかもしれねえな)
高松、振り返り涼真の方を見る。
涼真は唐沢監督に声をかけられている。
高松(まあ、それは今日じゃなかったって事で)
インターハイ、残すは最終日のみ。
《大会最終日・日程》
第1試合・女子決勝(10:00~)
桃花学園(愛知) - 大阪駿英女子(大阪)
第2試合・男子決勝(14:00~)
洛阪(京都) - 愛和工業大学附属(愛知)
唐沢「いい、勝負でした」
星垓メンバー「「「…」」」
試合後のミーティング。
返事もできず、唐沢の言葉に聞き入る。
唐沢「点差があれだけついたにも関わらず、最後まで諦めなかった結果のスコアだと思います。勝てなかったのは無論悔しい。ですが全国制覇の目標に向けて諦めない姿勢を示してくれたと思っています」
中には、泣いている者もいる。
3年生が主だが、下級生もちらほら。
唐沢「3年生は最後の夏、そして秋冬まで部活をするか、受験に専念するかの選択肢がこれからある訳ですが、ひとまずここまでよくチームを支え、引っ張ってくれました。ありがとう」
3年生はもはや涙を抑える事ができない。
唐沢「全員で、というのは叶わないのかもしれませんが、私はできればまた冬、このチームで東京体育館で全国大会を戦いたい。そう思える素晴らしいチームになってくれたと思います」
唐沢が話し終える。
新城「起立!」
新城が突然、号令をかける。
全員、唐沢の方を向き真っ直ぐに立つ。
新城「気をつけ!礼!」
星垓メンバー「「「…ありがとうございました!!!」」」
そしてそのままホテルに戻り、自由時間。
男女とも翌日の決勝を見てから帰る事になっていた。
慎太郎は1人、外の公園にあるバスケットゴールに向かっていた。
慎太郎、スリーポイント。
ガッ!!!
しかしこのシュートは、リングに弾かれる。
さっきから1本も入ってない。
慎太郎、ボールが転がるに任せて拾わない。
感情のままにシュートを打っていたが、入らなさすぎて中断した。
慎太郎「くそ…」
笹本や塚森といったガード陣相手に慎太郎は10得点、12アシストという堂々たる数字。
だが、それでも王者・洛阪には及ばなかった。
転がっていくボールは、別の2本の手によって拾い上げられる。
美保「なーにしてんの」
慎太郎「…お前か…」
美保「1人黄昏てるなんてロマンチストなとこあるじゃん」
慎太郎「関係ないだろ…」
美保「ん?泣いてたの?」
慎太郎「泣いてねえよ!」
そう言いつつ、慎太郎は鼻声だ。
慎太郎「からかいにきたのか?」
美保「んな訳ないじゃん」
慎太郎「いーや、お前は後から泣いてたってネタにするね!間違いない」
美保「だからしないよ、そんなこと」
慎太郎、イライラしつつ美保の顔を見て真顔に。
美保が悲しそうな、真剣な顔つきだったからだ。
しかしそれでも慎太郎は、そっぽを向いて歯を食いしばる。
美保(我慢するんだ…)
慎太郎「ボールくれよ」
美保「はい」
美保、慎太郎にパス。
手前に向かって綺麗な回転をした、お手本のようなパス。
美保もみんなの練習を見て覚え、こっそり練習していたのだ。
ビッ!
慎太郎、シュート。
ガガッ!!
またしても弾かれる。
美保「…」
(一緒に泣こうと、思ったのにな)
美保だって応援するしかできず悔しかったのだ。
普段からみんなが頑張っていると知っていたから、余計に。
慎太郎「なあ」
美保「何?」
慎太郎「涼真は、絶対負けてなかったよな?洛阪に…田村さんに、高松さんに」
美保「…」
慎太郎「もし負けていたとしたら…」
美保「はい、ストップ」
慎太郎「!?」
美保はその先の言葉が想像できてしまった。
美保「よくわかんないけど、バスケットボールってチームスポーツでしょ?個人の勝敗じゃなくてチームでの勝敗じゃない?
1人が負けてなくても、今回はチームで負けてたんだよ。だから責任は、全員にあると思う」
慎太郎「…そうだな」
美保「経験者なんだからそのくらいわかってるでしょ?そんなわかり切った事でうじうじしないの」
慎太郎「…ごめん、その通りだ」
美保「それに今日の北条君と慎太郎君のプレイは…なんて言うか…見ててワクワクしたよ」
慎太郎「…そうか」
慎太郎、美保にパス。
軽めだった為、美保も難なくキャッチ。
慎太郎「もっかいパスくれよ」
そう言った慎太郎の顔は、また闘争心を取り戻していた。
美保はニッコリ笑って、慎太郎にパス。
ビッ!!
このシュートは
スパァッツ!!
見事にリングを通過した。
小春「これは…ひょっとする?」
武蔵「彼女できたことない慎太郎にも春がきたかついに?」
春香「慎ちゃんも美保ちゃんも隅に置けないね…」
優花「いいよねぇ…なんかお似合いだし」
そして遠くでは、他の1年生が男女問わずそのどことなく甘い空気の2人を見てニヤニヤしていたのだった。
そしてホテルのロビーでは
涼真と満月の2人が座っていた。
満月「残念だったね、男女とも」
涼真「うん…なあ満月」
満月「ん?」
涼真「俺は満月に謝んなきゃいけない事がある」
満月「え!?」
涼真「俺のプレイを見てて欲しいなんて言って…俺は第3Qの時諦めようとしてた。投げやりになってた。
慎太郎が怒鳴ってくれなきゃ、俺はあそこまでやれなかった」
満月「…そっか」
涼真「それに、勝てなかった。満足いくプレイもできなかった。それだけ謝っておきたくて」
満月、スコアシートの数字を思い出す。
満月(…あれで…!?)
北条涼真 vs洛阪
63得点、2アシスト、6リバウンド、2スティール、3ブロック。
※63得点は、インターハイで1個人が記録した得点として歴代2位の記録。1年生の記録としてはぶっちぎりの1位。得点以外の他の数字も、総合して見れば1個人の記録として見れば凄まじい数字。
涼真「何より…全国制覇できなかった」
満月「でも、出し切った顔してたよ」
(単にスタミナが切れただけってのもあるかもだけど…)
涼真「…そうかな」
満月「そりゃ試合には負けちゃったけど…私から見れば今日の涼真君は…特に終盤の涼真君はすごくワクワクさせてくれたよ?奇跡だって起こしたじゃん。あの得点差からさ」
涼真は複雑な顔をしている。
プレイを褒めてもらったのは嬉しいが、負けた以上慰めになっているかは微妙なのである。
満月「負けを知らないで成功した人なんていないよ。関東大会で負けた時、その負けは無駄だったと思う?」
涼真「…思わない。今回リベンジしたしな」
満月「私達女子だって今回の負けを無駄にはしない。涼真君も今回の経験を無駄にしちゃダメだからね!」
涼真「…うん」
インターハイ決勝を前に、次なる舞台を見据えて涼真達は始動する。
……To be continued
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