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第2章 インターハイ〜
第134話 シュートセレクション
しおりを挟む第4Q 残り2:25
星垓 72
北陵 79
唐沢「勝負をかけましょう」
星垓メンバー「「「はい!!」」」
唐沢「中山君、真田君、出番です」
慎太郎「はい!」
唐沢「残りの勝負のメンバーは中山君、真田君、新城君、髙木君、北条君」
星垓メンバー、誰も声を発さない。静かに聞き入る。
唐沢「中山君と新城君はゲームコントロール。髙木君はゴール下で身体を張る。
そして真田君はスリーポイントが仕事です。そのために北条君を囮に使います」
真田「ま、まさか俺のスリーが本命っすか…?」
唐沢「そうです。北条君が目立っていた中、ディフェンスは北条君に集中するでしょう。これ以上の囮はいない。
勿論シュートセレクションによっては他のメンバーが点を取ることも有り得ますが、残り時間を考えると真田君のスリーは不可欠です」
新城「だってさ真田」
髙木「大丈夫だ。お前は誰よりも練習してきただろ、スリーポイントを。
その通りに決めればいいだけだ」
涼真「切り札の出番っすよ」
真田、数秒目を閉じ、真っ直ぐ前を見て立ち上がる。
真田「やります」
唐沢「よろしい。北陵のオフェンスから始まりますが我慢ですよ。すぐ追いつきたいからと言って不用意なファウルはNGです」
星垓メンバー「「「はい!!!」」」
ブーッ!
タイムアウトが開けた。
星垓
G #11 中山 慎太郎 1年 169㎝
G #4 新城 敦史 3年 184㎝
G/F #9 真田 直斗 2年 183㎝
F #10 北条 涼真 1年 187㎝
C #7 髙木 悠介 3年 198㎝
北陵
G #5 三上 直哉 3年 184㎝
G/F #6 堂林 和樹 3年 189㎝
F #8 光山 遼太郎 2年 190㎝
F #4 筒井 辰也 3年 193㎝
C #15 伊達 裕之 1年 211㎝
山下「両チームメンバーを変えてきましたね」
村上「これが残りの勝負の5人なのだろう」
北陵のオフェンスからスタート。
アウトサイドタイプが3人になった事でボールがよく回る。
星垓のディフェンスはマンツーマン。
三上に慎太郎。
堂林に涼真。
光山に真田。
伊達に髙木。
そして、筒井に新城がついている。
山下「なんでわざわざあんなミスマッチを…」
村上「……」
三上(普通に考えるなら筒井のところが狙い目…だが)
新城、筒井に対しフルフロントでディフェンス。
堂林(北条が俺をマークしながら絶妙にヘルプにいける位置で動いてやがる…迂闊に入れたらまずいかもな)
意外にも北陵のオフェンスは攻めきれない。
ガン!!
筒井、24秒ギリギリでボールを受けシュートを打つも涼真のヘルプを意識して手元が狂う。
ガシッ!!
髙木がリバウンド。
中澤「よーし!」
ベンチもリバウンド1本に声援を送る。
あと1回でもファウルしたら後がない髙木、かつてない集中力。
結果、スクリーンアウトでのポジション取りが完璧だった。
新城「攻めるぞ!」
慎太郎がボールを運び、それを追い越すように星垓メンバーが走り出す。
慎太郎(どう真田先輩に繋ぐか…)
涼真「慎太郎!」
慎太郎「!」
慎太郎、ハイポストに走り込んだ涼真にドンピシャのパス。
新城(インサイドアウトか!)
筒井「外にパス出るぞ!シューターチェック!」
北陵が外へのパスコースを切る。
ビッ!
涼真、右手1本でパス。
自身の後方、ゴール下の髙木に。
慎太郎「!?」
髙木、ゴール下シュート。
ドゴッ!!
髙木「!?」
伊達がギリギリでブロック。
涼真(チッ、間に合うのかよ)
ピッ!
審判「青ボール!」
ボールはエンドラインを割った。
慎太郎「なんで今インサイドに出した?」
涼真「…慎太郎、お前なんか勘違いしてねえか?」
慎太郎「なんだと?」
新城「おい、ケンカしてる場合じゃ…」
涼真「違います。冷静だから言ってるんす」
そう言うと慎太郎に向き直る。
涼真「真田先輩を入れた時点でスリーを警戒してくるに決まってんだろ?それでいい形じゃないのに真田先輩にスリーを打たせるのか?そうじゃねえだろ、先生の言ってた事は」
涼真、スコアと残り時間を指差す。
第4Q 残り1:54
星垓 72
北陵 79
涼真「7点負けてるんだ、スリーに拘って得点機会を潰すのは違うだろ?そんな余裕があるのか?シュートセレクションも考えられねえコントロールじゃ何の意味もねえんだ!」
慎太郎「…そうだな、すまん」
髙木「だがどうする?24タイマー15秒でどう攻めきる?」
そこに審判が声をかけにくる。
審判「スローインまだかね?」
新城「あ、今いきます」
涼真「先輩、残り時間、俺にポイントガードやらせてくれないっすか」
新城「何?」
涼真「お願いします」
新城「…わかった、頼んだぜ」
星垓のスローイン。
エンドラインの新城からトップの涼真にボールが入る。
涼真と堂林、向かい合う。
堂林「来い、北条!」
涼真「遠慮なく」
ダム!!
涼真、小細工なしのドライブ。
堂林も並走する。
ヘルプが来てゾーンが収縮する。
ダン!!
涼真、レイアップに跳ぶ。
伊達、堂林がブロックに跳ぶ。
涼真、空中で体勢を変え髙木へパス。
その髙木へ光山がヘルプに走る。
涼真(空いた!!)
ビッ!!
涼真、その体勢から真後ろへ剛速球。
慎太郎「上手い!!」
(さっきのゴール下へのパスが布石になって外が空いた!)
そこには、完全ノーマークの真田。
ビッ!!
北陵ディフェンスが誰も追いつけない中、美しい軌道のスリーポイントが放たれる。
スパァッ!!!
第4Q 残り1:45
星垓 75
北陵 79
「っしゃあああああああ!!!!」
「来た!真田のスリー!!!」
星垓ベンチ、一斉に立ち上がる。
慎太郎(あんなこと言っといて、お前が1番スリーのお膳立て率先してしてるじゃんかよ、しかもこれ以上ないシュートセレクションでな。大した奴だぜ)
涼真「ディフェンス!」
ダン!
いち早くセーフティポジションに戻っていた涼真、地面を両手で叩き気合を入れる。
三上「1本!」
北陵メンバー、チャンスを作ろうとスクリーンを掛け合い動く。
星垓メンバー、堂林にマンマークしている涼真以外もマンツーマンだがゾーンに近い動き。
インサイドを固めていた。
ビッ!!
ボールは幾人かを経由し、ローポストの筒井へ。
背負うのは新城。
ダム!!
筒井、パワープレイ。
新城「ぐっ…」
筒井、振り向きゴール下。
新城「舐めんじゃ…ねえよ!」
新城、同時に跳ぶ。
ドゴッ!!
新城、渾身のブロック。
身長差9㎝を跳ね返す。
だが
ピーッ!!
審判「ファウル!青4番!!」
新城「何!?」
新城はボールのみを叩いた。
だが、筒井が意図的に上手く体勢を崩した為、審判からは新城が押したように見えたのだった。
筒井「助かった…」
三上「けど…」
山下「惜しかったですね…あんな誤審があるなんて」
村上「だが、フィールドゴールを決めさせなかった、という見方もできるがな」
山下「…と言うと?」
村上「フリースローで取る点も大事だが、単発であれば流れを持っていくには至らない。誤審とはいえフィールドゴールを奪わせなかったディフェンスは悪くなかった。仮に2本決めたとしてもわからんぞ、この勝負」
スパッ!
筒井はフリースローを2本とも決めた。
第4Q 残り1:27
星垓 75
北陵 81
涼真「1本!」
ビッ!!
涼真、前線へ鋭いロングパス。
その先には、誰よりも早くスタートしていた慎太郎がいた。
そもそも足の速い慎太郎である。
敵も味方も追いつけなかった。
慎太郎「うげっ!パス強すぎ!」
(イチローのレーザービームかっての!)
しかし慎太郎、難なくキャッチ。
バス!!
無人のゴールでレイアップを決める。
第4Q 残り1:23
星垓 77
北陵 81
山下「中山君、すごい速さでしたね」
村上「見逃さなかった北条も流石だな」
僅か4秒の星垓のオフェンスが終わり、北陵のオフェンス。
リードしている北陵、時間を使いながらボールを回す。
三上(残り1分を有利に戦う為にも…)
ビッ!!
いつもハイポストに構える事が多い伊達、ローポストでボールを受け髙木を背負う。
ダム!!
伊達、髙木相手にパワープレイ。
三上(インサイドの厄介な相手を追い出すか)
髙木、やはりファウルアウトを意識していつものパワーが出ていない。
みるみる押し込まれる。
中澤「髙木!がんばれ!」
矢島「お前、そんなもんじゃねえだろ!」
次回、vs北陵決着。
……To be continued
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