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第2章 インターハイ〜
第101話 振り出し
しおりを挟むブン!!
神崎がボールを前線に放る。
バシッ!
ボールをキャッチしたのは、これまたいち早く走っていた涼真。
間島「何度も…」
古沢「やらせるか!」
ガード2人がセーフティに戻る。
ダムッ!!
涼真、1対2でも構わずドリブル発進。
そのままレイアップに踏み切る。
間島「くっ…」
(スピードで負けてなくても…身体能力とフィジカルに差がありすぎる!止められねえ…)
バスッ!
2人の上からシュートを決める。
豊誠学園 52
星垓 52
ピピーッ!!!
オフィシャル「タイムアウト!白!」
第3Q残り7分半。
わずか2分ばかりの攻防で星垓、一気に同点に。
その間、豊誠学園の得点は0。
-観客席
近藤「それにしても…どうしていきなり豊誠学園は点を取れなくなったんだ…?」
霧谷「あの8番だな」
岩倉「8番?」
(北条じゃなくてか?)
霧谷「豊誠学園のオフェンスはクロックオフェンスだ。
これで1番厄介なのはバックドアカットやフレアカット。対処としてはまずこの2つを自由にさせないこと。
で、星垓はそのために、インサイドではマンツーマンでのマッチアップ気味のゾーンを敷いてる」
岩倉「え?ほぼポジション通りのマンツーマンじゃなかったのかよ?」
(スイッチもほぼなかったぞ…?)
霧谷「スイッチできねえのさ、あの8番がゴール下から動かねえからな
クロックで回るとゴール下で8番含めて最低2人にはマークされることになっちまう、つまりクロックをしてもあまり意味がねえんだよ」
近藤「でも、たったそれだけで…?」
霧谷「…ゾーンにすることでもう1つメリットがあったんだよ」
永島「もう1つ?」
霧谷「特定の選手が、いて欲しいポジションにほぼ居座れるってことだ。
ゴール下に髙木でなく8番が控えてるってのは、ディフェンスでの視野が髙木より広いからなんだと思うがもう1つ、北条をコートのほぼ中央に配置してんだよ」
永島「なんでだよ」
霧谷「豊誠学園のオフェンスで厄介なのはクロックオフェンスともう1つ、4番と9番の強力な1on1からの得点力だ。
それに対して星垓はボールを持ってようがいまいがガードの2人が常にマンツーマンで守り…」
岩倉「なるほど、ボールを持ってる時は北条がヘルプに出てくるってことか!」
霧谷「そう。北条はオフェンスだけでなくディフェンスもかなり能力が高い。
けど、このダブルチームの目的は2人でトラップを仕掛けてボールを奪うんじゃなくて、とにかく得点力の高い2人からボールを離させることだ」
永島「!!そういう事か!」
岩倉「2人の攻撃回数を減らすことで豊誠学園の得点力を限りなく抑えにかかってるってことか」
霧谷「んで、北条がダブルチームに行くタイミングの指示は、ゴール下で全ての動きを見渡してる8番が出してるんだ」
近藤「ふうん…でもあの8番、そんなバスケIQが高いんならもっと重宝されてもいいんじゃないか?ベンチにいることも多いだろ」
霧谷「そりゃあそうさ…あいつ、才能ないもん」
近藤、永島、岩倉「「「???」」」
霧谷「一般にくらべりゃデカいが、全国に出るインサイドとしちゃ、190そこそこってのはまだ小柄だ。
かと言ってパワーが凄いわけでも無ければ、スピードがあるわけでもない。技術も4番にしちゃある方だがそれでもせいぜい器用ってだけ。2ウェイプレイヤー(複数ポジションでプレイできる選手)でもない。身体能力だっていいとこ中の中。要は身長以外は全てが平均レベルの器用貧乏なんだよ」
岩倉「それでもチームで生き残るために…」
霧谷「そう、奴は『見る』ことに徹したんだろう。それによってバスケットIQを徹底的に磨き、唯一持っていた決して低くはない身長でゴール下の防波堤になり、瞬時に状況判断して最適なディフェンスの指示を出す。」
ズザァッ!!!
豊誠学園のオフェンス。
ルーズボールに神崎健太がいち早く反応。
倒れ込みながらボールを奪う。
中澤「よく取った!」
霧谷「こうやって泥臭いプレイも積極的にする。
全国で勝ってく為にはこういうプレイヤーも絶対必要だ。
あのカッコ悪さ…逆にカッコイイよな」
スパッ!
速攻から涼真がミドルを沈め、星垓がついに逆転する。
神崎玲太「そうかよ、それがお前の戦い方か」
クロックオフェンスから神崎玲太・健太の1on1へ。
ダムッ!
玲太が右45°から右ドライブ。
健太、コースに反応する。
ダム!
キュッ!!
神崎健太「!!」
玲太、そこからスピンムーブで左サイドへ急な方向転換。
健太、ついていけずかわされる。
ビッ!
スパッ!
玲太、そこから急ストップ、ジャンプシュートを沈める。
神崎玲太「1on1じゃ俺が上のようだな」
神崎健太「……」
神崎玲太「古沢さんと間島を何度か止めたくらいでいい気になるなよ
まだ、俺を止めてねえ」
神崎健太「いや、止めてやるさ。そして試合は星垓が勝つ!」
続く星垓のオフェンス。
新城「1本じっくり!」
トップで新城がボールキープしたまま時間を消費する。
矢島「(24秒タイマー)残り10秒!」
新城、神崎のスクリーンでハイポストに上がってきた髙木にボールを入れる。
同時に左ウイングから涼真が髙木に向かい走る。
山内「ハンドオフか!」
山内、スクリーンを先回りする。
が、涼真がボールを持ってない。
涼真、そのまま右ウイングへとアイバーソンカット。
…と見せかけいきなりバックドアカットでゴール下を狙う。
山内「させるか!」
ガッ!
バンプで涼真の侵入を阻止しようとした矢先、神崎のスクリーンに山内が捕まる。
フリーになった涼真に髙木からパス。
バスッ!
涼真、きっちりレイアップを決める。
第3Q 残り4:55
星垓 56
豊誠学園 54
山内「ちっ…」
(スクリーンの使い方も絶妙だし…何より身体能力がめちゃくちゃでついてくのがやっとだ…)
豊誠学園のオフェンス。
古沢がボールを運び、仕掛けようとするも新城の後ろに涼真が控えている。
古沢「なるほど。意地でも俺に攻め込まれたくないみたいだな」
新城「…………」
古沢、ドリブルでボールキープ。
古沢「クロックに初見でここまで対応してきたチームなんて数えるほどしかいない、大したもんだよ」
神崎玲太がクロックの動きでウイングに上がってくる。
古沢「けどその程度でうちは負けない」
古沢がドリブルのギアを上げる。
ガッ!
神崎玲太のスクリーンに新城が捕まる。
涼真「ちっ…」
涼真、古沢と並走。
古沢、構わずレイアップへと踏み切る。
涼真、同時にブロックに跳ぶ。
ヘルプに来た神崎もブロックに跳んだ。
涼真「!?」
(距離が異様に近い?)
古沢は、跳ぶと同時に涼真に上手く身体を預けていた。
そこから低さで涼真との距離を作り出し、フィンガーロールで難易度の高いスクープショット。
涼真(上手え…!)
ガンッ!!
だが、シュートはリングで跳ねた。
古沢「くそっ…」
(北条のブロックが高かった分、高く放ったから加減が…)
だが
バシッ!
このリバウンドを拾ったのは神崎玲太。
スクリーンの後、ピックアンドロールの要領でゴール下に走っていた。
ゴール下で対峙するは、スイッチした新城。
バスッ!!
神崎玲太、新城の上からゴール下を決める。
第3Q 残り4:37
星垓 56
豊誠学園 56
ここから、試合は一進一退となる。
バシィッ!!!
「すげえブロックだ!」
「高かったなぁ、星垓の7番!」
バチッ!
「一瞬の隙を突いて豊誠の9番のスティール!」
スパァッ!!
「古沢のミドル!」
「ヘルプを警戒して外から決めた!」
ドッガアアアア!
「北条ダンクきたぁ!」
「ほんとに1年なのか?てか高校生なのか?」
互いに守り合い、点を取り合う。
どちらも譲らない。
ピピーッ!!
第3Q 終了
星垓 69
豊誠学園 69
試合のトランジションとペースが非常に早く、4分半で互いに15点ずつと点が目まぐるしく入る第3Qの後半だったが
この時間帯のFG成功率は互いに50~60%程度だった。
そして勝負は振り出しのまま、最終Qへ。
……To be continued
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