ガーディストベルセルク

ぱとり乙人

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候補生金刃乱、誕生

明かされる事実②

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「……という訳なのです。」
 随分端折ったねと思う方。もうn回目の説明となるとさぞかしうんざりしているのではないかという気遣いでございます。え?別に気にしない?それは懐の深い方で助かります。
「……なんと。」
「マ……?」
「しししし、信じ……ら……れ。」
「つい最近までガイスタードだったとは……。」
「あの学園長ぶん殴ってくる。」
 二極化の反応を見ながら僕は蔭原先生を必死で止め、舌打ちをされながらもなんとか阻止する事が出来た。
 あえて今止めた理由は、このままでは話が全然進まないと思ったからである。
『この話が一段落した後で思う存分ぶん殴ってきて下さい。』と耳打ちはしておいた。それが功を成したと思われる。
「という事は金刃氏って完全に裏口入学という訳ですな!?」
 残念イケメンからの不意打ちグサァッ。
「それってマ!?ガチヤババになりけり!」
「……卑怯者。」
 ギャルと爆乳の二度刺しグサァッ!
「確かに真面目に努力している人に対しての最大限の侮辱行為であるな。」
 年齢詐欺ショタからのトドメのグサァッ!!
 もうやめてくれ!僕の精神状態は虚無だよ!!
「その点に関して言えば、言い訳を言うつもりもありません。……ですが、このようなややこしい事になってしまったのは、乱さんだけのせいではないという事もお忘れなきように。」
「そうだそうだー。」
 声量をコバエの羽音程度にして同調の声を出す。なんともまあ我ながら情けない姿なのでしょうか。
「……それで?これから金刃はどうなるんだ?やっぱり退学させるつもりなのか?」
 核心に行くまでが早いねぇ蔭原先生?もうちょい引き延ばしても……結果は変わらないか。
「はい。そこが一番重要なのです。本当の所を言えば、私は乱さんにこの一年間は何も問題を起こさず、加えてガーディストらしい事を極力避けるような学園生活を送るような計画を立てておりました。」
 母さんの顔が一気に曇る。
「……しかし、この前の事件で……私の指示とはいえ能力を使用してしまい、それだけならまだしもその事が世間に発覚してしまいました。これでは最早隠し通す事が出来ません。」
「……どうせ姉さんが余計な口出しをしたんでしょ?」
「はい。」
 間髪入れずに頷く母さん。今すぐあの人と血縁関係切りたいんですけど。
 ……いや待て。血縁関係が無くなる方がマズイんだった。そっちの方があちらにとって好都合だとかどういう事だよ本当に。
「ともかく隠し通す事が困難になったのは事実。このSクラスに配属されている事もすぐに分かってしまいます。そうなれば間違いなく世間は『乱さんがガーディストを目指している』と思い込んでしまいます。……なので、協力をお願いしたいのです。」
 その場にいた母さん以外の全員の頭の上疑問符がついた。
「あの、拙者達に何のお願いが?」
「『乱さんは決してガーディストになろうとは思っていない』という事を個々の頭の中に入れておいて欲しいという事と、第三者に乱さんの件を聞かれたらその事を伝えるように仕向けて頂きたいのです。」
「え?そんだけでおけまる水産?」
「今は水産職の話をしている訳ではありません。集中してください。」
「母さん。今のは『それだけでいいの?』っていう意味だよ。」
「……はい。それだけで構いません。」
「りょ!」
 ギャルピをカマしてくる姿にちょっとキュンッとした時に、何故かほっぺたの古傷が痛む気がした。
「……よく……わから……ない。」
「えぇ。たったそれだけで宜しいのですか?……しかし、むしろもう堂々と公表した方が却って印象もいいし、それに誰にもご迷惑がかからないのではないでしょうか?」
「いいえ。公表するのは非常に危険でしょう。特にここにいる方々にとっては。」
「なんでだよ、先輩?」
 不機嫌そうにガムを膨らます蔭原先生を少々冷たい目で睨みつけながら母さんは続けた。
「よくよく考えてごらんなさい。前代未聞の不祥事です。ガーディストを多く輩出してきたこの花咲絢爛高校で裏口入学の発覚。しかもそれがよりによってガイスト科のSクラス。極めつけがその母親が有名なガーディスト。自分で言っていて恥ずかしいですが事実なので申し訳ないわね。そんな不祥事を起こした高校の生徒達にですよ。」
 自分で言っていて少し憤りと哀しみを感じているのだろうか?
 母さんは少しの間をおいて答えた。
「国の安全を預けるガーディストになってほしいと思いますか?」
 他の全員の目の色が一気に変わる。……そりゃそうだろ!?何言っているの母さん!?
「ちょっ!?母さん!?それは僕でも論点がズレているとしか思えませんけど!?」
 思わず立ち上がってしまった。この案件は僕だけが犠牲になればいい話であって、ここにいる皆には何も関係がない!
「そこまでズレているとは思いません。何故ならこのような不祥事があれば評判が落ちるのは明白。今までのような学園側への支援は一切打ち切られるでしょう。具体的に言えば国内外のガーディスト候補生による模擬戦闘等でしょうか。悪評のある高校と腕比べした所でメリットなどありませんからね。研鑽のつめない環境で、どれだけ力をつけられるでしょうか。……容易に想像できるでしょう?そしてそのような人をガーディストとして採用するかどうか……ね。」
「ななな!?とんでもない事を仰るでござるな!?つまり拙者達に事実を伝えた上で、その隠蔽に協力しろと!?仮に発覚した場合はガーディストになる道が閉ざされるとな!?」
「ちょ!?は!?マジでありえねーだろ!?何言ってんの!?」
「オ、おおおおおお、横暴!」
「冗談じゃないぞ!?いくら有名なガーディストとはいえ!身内の案件で我々を巻き込まないで欲しい!」
 生徒全員がいきなり母さんの前まで来て異論を唱え始めた。当然の事だろう。
「……お前等落ち着け。聞いてしまったものはどうしようもない。」
 只一人、蔭原先生だけが冷静に話を聞いていた。
「しかしですな!?我々はガーディストになりたいが為に入学してきたのですぞ!?それを不可抗力とはいえ、一人の裏口入学の為に潰されたとなっては……!」
「マジ詰んだ!ウチの未来どうしてくれん!?おわだよ、おわ!」
 蔭原先生は頭をぼりぼりと掻きながら舌打ちをする。
「だから落ち着けって。この人がそんな事言っても、この学園では何の権力も無いから従わなければいいだけだ。だけどそんな馬鹿げた提案をしてきたって事はだ。……そういう形で学園長にも言われたんだろ?先輩。」
「……な……そ……んな……。」
「……本当に学園長からそのような事を……?」
「……その通りです。」
「母さん、全員で学園長を気の済むまでボコボコにしよう。多分それが一番手っ取り早い。」
 ペシンッと僕の鼻尖を優しく氷の礫が叩いてきた。僕の言っている事は間違いであろうか?そんな事ないと思うけど。
「学園長がそのような滅茶苦茶な脅迫まがいの提案をしてくるとは……根本が腐っているのでござるな?」
「あの片眼鏡。次顔見たらマジゲロしそう。」
「……権力にしがみつく哀れな人。」
「反吐が出る。」
「まぁそんな事だろうとは思っていたさ。じゃあ話は終わりか?そろそろ学園長を殴りに行きたいんだが。」
 イライラの頂点なのか、蔭原先生のガムを噛むスピードが先程より早くなってきた気がする。
「そうね。私からは以上よ。それで、協力してくれるのかしてくれないかだけど……聞くまでもないわね。」
 全員が承知したのか頷いてくれた。
「……皆、ごめんね。まさかこんな事態になるとは思いもよらなくて。」
 僕は背筋を伸ばし、深々と頭を下げる。元はと言えば、僕が実力で普通科に入学していればこんな事にはならなかった。全部自分の実力不足、勉強不足が原因なのだ。
 しかし結果的にこのクラスの全員を巻き込む形になってしまった。正直非難轟々であるのは覚悟していた。
 ……しかしだ。蓋を開けてみると。
「んんー……まぁ今回の話を聞く限りでは、金刃氏にそこまで非はないと思うでござるよ?色々不運が重なったような形であったと思われ!なので、むしろ被害者な気がするでござる!」
 え?雷坂君?君って実はとんでもなくいい人?顔も良くて?喋り方壊滅的だけど。
「それな!ウチもガイスタードだったら同じ事する系かも!知らんけど!」
 ギャルの無責任発言はいつも心救われます。
「……これからも宜しく、ね?」
 勿論ですとも!そのご尊顔を拝見するまでは死んでも死に切れません!あ、あとスリーサイズだけは何としても知りたいです!
「……全く。退学するのかしないのか最後まではっきりしない奴だったが、これでようやく決まったな。……宜しく。」
 重低音ショタの需要性、あると思います!
 なんと暖かい声!!僕このクラスに入れて初めて良かったと思えたかも!
「だとしても裏口入学はやっぱり駄目だと思うでござるがな!はーっはっは!!」
「ポンコツ!」
「ららら雷坂君!」
「……お前という奴は。」
 いいんだよ、皆。この人何かと余計な一言言わないと気が済まないタイプだってのは薄々感じていたから。
 にしても心にマグナムでもぶち込まれたのかくらいの衝撃が来たね。シクシク。
「ではここにいる皆様、不出来な息子ではございますが宜しくお願い致します。くれぐれもガーディストにはなりたくないという旨を忘れずに。……それでは失礼致します。」
「よし。じゃあお前等。今日は自習だ。好きにしろ。」
 ガタンッと乱暴に席を立ち、自習と言う名の職務放棄を宣言した蔭原先生。
 向かう先は只一つ。
「蔭原。私も行きます。」
「あん?なんでだよ。俺一人じゃ手に負えないとでも?」
「違います。私も腹の虫が治まらないのでついていくだけです。」
 あの学園長って案外しぶといんだなぁと思いつつ、去り行く二人の背中に向かって僕は手を合わせたのであった。
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