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モノローグ ⑪

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──潮風の届く丘にて

 本当に、なんて素晴らしい天気なんだろう。
 和志は芝に寝転がり、流れる雲に見入っている。
 そんな和志とこの丘にたたずみ、僕は限りなく穏やかでいられる。
──清々しい初夏の香りに包まれて、僕はそっと和志に寄り添った。

 これが至上の「愛」なのか?
──あの頃の「愛」とは、あまりにも違うね。

 君を愛して僕は知った。愛とは止めどなく激しいものだね。
 僕は徐々に深みを知った。
 君を愛して深みに溺れた。
──愛を知った時から喜びは生まれ、そのとき同時に悲しみも芽生える。

 不思議だね……。
 それまで僕は信じていたのに。
 いつでも君を信じていたのに。
 君と暮して初めて知った、思いもしない新しい感情──。

 嫉妬?
 僕だけを見て欲しいから。
 疑惑?
 愛の冷める日が不安だから。

 愛を得たからこそ人生は美しく輝き、愛を得たからこそ──失う物の大きさに恐れおののく。

 僕は激しく君を求めた。
 あんなに自分が激しいなんて、それまで僕は知らなかったよ?

──Memories  of  you

 愛に自分を見失ったあの頃──あまりにも君が愛し過ぎて。


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