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モノローグ ⑩

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──潮風の届く丘にて

 今──こうして和志と故郷ふるさとに暮し、この丘で海を眺める幸せ。
 この愛しい日々が、ずっと続くようにと僕は祈る。
 あの頃は僕たち、それぞれの夢を追い掛けて、この故郷ふるさとを離れて暮した。
 都会は何もかもが輝いて見えた。でも、それは幻想だと気付く日が来る。

──あの頃の二人を思い返す。

 資訓しくんを卒業して僕たちは大学に進み、二人一緒に東京に暮した。
 君は某音大のピアノ科で、僕は某大学の文学部。
 二人で一緒に暮らすと言ったら、周りは自然に受け入れてくれた。

 僕達は誰の目にも「親友」だったね。家族も友人も先生も、誰も僕達を疑わなかった。
──本当は恋人同士だったのに。

 一緒に暮らすってすごい事だね。別々の時とは比べようのないくらい、相手を自分と同化してしまう。
 どんなに愛し合っていたとして
も、二人は別個の人間なのに…。

 一緒に暮らすそれまでは、見えている部分を愛していられた。
 一緒に暮したそれからは、見えない部分が心もとない。

 僕は知ったよ?君と暮して。
 愛は尽きる事なく深まるものだね。知らず知らずに溺れていった──君と二人の甘い生活。

 けれど君はその頃すでに、徐々に悩みを深めてたんだね?
──僕たち二人の遠い行く末。

 思えば僕はいつも揺れてた。
 嵐の中の小舟のように、
激しく君に翻弄されたり、
 揺り籠の中の乳飲み子のように
君に優しく包まれていたり──。

 僕が勝手に揺れてたんだね。
 君はいつしか変わって行った。

──Memories  of  you

 僕たち二人を壁が隔てた。


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