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モノローグ ⑦

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──潮風の届く丘にて

 思い出にひたり、ふと気付くと、僕の視界に和志がいない。
 僕は慌てて周りを見渡す。

(あ、和志。あんな所で…)

 和志は遠く離れた大樹の下で、白い夏服の少女と向き合っている。
 少女は嬉しそうに、和志の仔犬を抱き上げていた。

(なるほど……仔犬が少女を呼び寄せたのか)

 和志はいつもこうなんだ。
 直ぐに誰とでも仲良くなれる。
 そんな和志が羨ましい──。
 僕は安堵の吐息を漏らし、再び思い出を振り返る。

 あの16歳の夏の夜から、僕たちの関係は大きく変わった。
 僕たち二人、いつもいつでも、数限りなく愛し合ったね。
 掛け替えのない───あの頃の思い出。
 愛を得た喜びに打ち震え、僕は君だけを見詰め続けた。
 僕は君だけを想い続けた。

 きらめく夏の星空を眺めて。
 降り注ぐ秋の月影を映して。
 舞い踊る冬の粉雪を受けて。
 咲き誇る春の花々に寄せて。

 満ち足りていたね──あの頃の二人。
 僕たちは揺れ動く光の中を駆けめぐり、鮮やかな虹色の夢に包まれていた。

──Memories  of  you

 僕たちは未来に向った。


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